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2024.07.04

【広尾学園 医進・サイエンスコース】「本物」に触れる経験を重視 学術の本質をとらえた学びで 医師・研究者に必要な資質を高める

「世界水準の教育」を理念に掲げ、「本科」「インターナショナル」「医進・サイエンス」の3コース制で生徒一人ひとりの可能性を伸ばす広尾学園。医系・理系大学への進学に特化した医進・サイエンスコースは学術の本質をとらえたカリキュラムが特徴だ。本物に触れる経験を重視し、高いレベルの研究活動を通して医師・研究者に必要な科学的視点とマインドを養っている。コースの柱となる研究活動について、同コース統括部長の石田敦先生に伺った。

校舎6階には、化学・生物・物理、それぞれ3つのサイエンスラボが並び、大学研究室レベルの設備が揃う

質・量ともに充実の研究活動 おもしろさを将来につなげる

――医進・サイエンスコースは2011年に高校で、2015年には中学校でも開設されました。設立の経緯を教えてください。

 

石田 生徒の理系分野への進学希望が増えていたことと、大学受験のための勉強にとどまることなく研究のおもしろさを知ってほしいという学校側の思いから、医進・サイエンスコース(以下、医サイ)を開設しました。「本物に触れる」をキーワードに学術の本質と研究の最前線に触れ、そのおもしろさを知ったうえで進路選択につなげてもらうコースです。

 

――進学指導の一環として対応するのではなく、コースを開設したねらいは何ですか。

 

石田 大学や企業と連携した講座やプロジェクトの実施は、小規模で機動性のある集団が適しています。まずは医サイでやってみる、うまくいった取り組みはほかのコースにも展開していく。そういった動きができるようにコース制にしました。

 

――医サイのカリキュラムの特色を教えてください。

 

石田 授業カリキュラム自体は本科コースと大きく変わりませんが、医サイ最大の特徴は中高を通じて行う研究活動にあります。校内には大学レベルの研究設備を備え、本格的な研究活動ができる環境を整えています。中学では授業「理数研究」を通して研究活動の土台を作り、高校では「学術研究」によってより専門的なレベルの研究に挑戦します。


 中1から高1までは週1時間の授業を研究活動に充て、時間内で収まらない場合は昼休みや放課後、長期休暇中にも活動します。高2以降は希望制で、空いた時間を使って研究に取り組みます。また、大学や企業との連携による課外活動も他コースよりも多く用意しています。

医進・サイエンスコース 統括長 石田 敦 先生

未知のテーマにチャレンジ 学会発表を行う生徒も

――研究活動の具体的な内容を教えてください。

 

石田 最初はテーマを決めるところから始めます。中学では「医療」「分子生物」「環境科学」「現象数理」「数論」の五つのチームがあり、高校ではさらに「植物」「理論物理」「情報・メディア」が加わって8チームになります。まずは自分が所属するチームを決め、さらにチームのなかで2〜3人のグループに分かれてテーマを設定し、継続的に研究に取り組んでいきます。


 研究活動のコンセプトは「世界の誰も知らないことにチャレンジしよう」です。実際にまだ誰も解明していないテーマに挑戦して研究成果を出す生徒もおり、大人に交じって学会発表することもあります。さらに深く学びたいと、研究成果を推薦入試や総合型選抜に活用して大学進学後も研究を続ける生徒もいます。

 

――中高生がそこまでハイレベルな研究活動ができるのはなぜですか。

 

石田 私たち教員が「限界を設けない」からだと思います。生徒自身がやりたいことや、調べたいことがあれば、とことんサポートしています。


 もう一つ、研究者の方や、企業や大学で長く研究に関わって退職された方、医サイの卒業生らが非常勤講師として指導にあたっているという環境も大きいでしょう。各学年の研究を行う授業を土曜部に集約しているため、平日は企業に勤めている方や学生も指導に当たりやすい環境になっています。研究の最前線を知る人たちから直接指導を受けられるため、研究活動がより充実し、成果にもつながっています。

 

――指導にあたって特に意識されていることは何ですか。

 

石田 少人数のチームで研究するので、教員も非常勤講師も生徒一人ひとりにきめ細かく対応しています。卒業生はかつて自分たちが経験してきたことですから研究活動の醍醐味を伝えるのが上手ですし、研究者の方や退官された方は後進の育成を願って純粋な気持ちで取り組んでくださいます。フレッシュな卒業生と、経験を重ねてきたプロフェッショナルの両方からサポートを受けられるのは、非常に恵まれていると感じます。一つのことを突き詰めて深めた経験は、その後の人生にも役立つはずです。

All English実験講座では、医サイ高校生が中学生参加者を指導する

大学受験にも役立つ研究 医学部志望者への支援も万全

――医学部受験に対してはどんな取り組みを行っていますか。

 

石田 研究活動8チームのうち、「医療」は昨年立ち上げた新しいチームです。医学部志望の生徒にとって、まずは大学受験を突破することが目標になりますが、入試では筆記試験だけでなく小論文や面接も課されます。そこをうまく支援しつつ、入試突破全体へのモチベーションを高められるよう、医療チームを立ち上げました。治療法の研究など、医療そのものに関する研究を行うのは難しいのですが、医療倫理の問題や地域医療の問題、高齢化社会で必要な医療など、医療に関する社会的な問題について関心を深めたり、その解決策を考察したりしています。


 このチームの指導には医サイから医学部に進んだ先輩たちが多く関わっており、研究のサポートはもちろん、大学受験対策のアドバイスや医学部でどんなことを学んでいるかという話も聞かせてもらっています。年齢の近い先輩との交流は生徒のモチベーションづくりにも役立っています。
 

――すでに実績を出している医サイならではの強みですね。

 

石田 指導にあたる教員に医学部受験のノウハウが蓄積されているのも強みです。医学部受験では推薦入試や総合型選抜も視野に入れることがありますが、こうした入試では学力が重視されるものの、高校時代の活動や英語力が重視されるなど、個別の対策が必要です。そのあたりのノウハウを蓄積し活用することで、医学部合格の実績を伸ばしてきました。例えば、東京医科歯科大学医学部医学科の推薦入試は全国でも最難関ですが、過去に4年間に3人の合格者を出しています。合格した卒業生から推薦入試を希望する後輩にアドバイスしてもらうこともできるようになりました。

 

新たな中高大連携教育が始動 揺るぎない職業観を育てる

――今後、力を入れていく取り組みについてお聞かせください。

 

石田 今年度、医学部との連携を主目的に順天堂大学と高大連携協定を結びました。約10年前から「病理診断セミナー」などの企画を高大接続講座として実施していたのですが、正式に協定を結ぶことでより連携を強めていきます。


 病理診断について学ぶ体験セミナーもかなり本格的ですが、附属病院で症例カンファレンスや手術・術中病理診断に立ち会う本格的な病院実習も行いました。大学3年生の基礎ゼミナール発表会に参加し、大学生と一緒に学んだり発表したりする機会もあります。今後さらに連携を強化し、本物に触れる機会を広げていきたいと考えています。

病理診断セミナーでは、チームで本格的な病理診断に取り組む

病理診断講座での手術室の立ち会いも、「医進・サイエンスコース」から生まれた

――医師をめざしている小・中学生と保護者にメッセージをお願いします。

 

石田 医師になりたいという気持ちを持つ小学生はたくさんいると思いますが、医学部受験は単なる大学受験ではなく、職業選択でもあります。ほかの学部と違って、進学した時点で職業がほぼ決まってしまうのが医学部です。だからこそ、医師とはどういう職業なのか、自分に適性があるのかどうかを理解したうえでめざしてください。そのためには、本物に触れる経験や限界を設けない挑戦ができる環境が必要です。広尾学園の中高6年間、あるいは高校3年間の研究活動や課外活動を、ぜひ役立ててほしいと思います。

※本記事は『日経ビジネス 特別版 SUMMER.2024〈メディカルストーリー 教育特集号〉(日経BP社)』に掲載されたものです。

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