医学部に強い中高
2024.07.04
【秀明中学校・高等学校】 全寮制がもたらす全人教育と医学部合格への突破力
首都圏では数少ない全寮制中高一貫校として、注目される秀明学園。北は北海道、南は沖縄まで生徒の出身地は多彩だ。学習に集中できる環境で、これまで医学部への高い進路実績を守ってきた。なぜ、医学部に強いのか? その根拠となる教育について、2024年度4月に就任したばかりの神原洋校長に話をうかがった。
校長 神原 洋 先生
全寮制の少人数教育で 医学部合格率は全国トップクラス
「医学部・歯学部等の合格率は、開校以来全国トップクラス」と謳う秀明中学校・高等学校。2024年度入試では、群馬大学など国立の医学部にも合格者を出した。生徒数が少ないため合格者数は決して多くないが、昨年度は、現役・浪人合わせて25校の医学部合格となった。
また、直近の過去4年間の実績を見ても、千葉大や慶応義塾大学など名だたる医学部に合格者を輩出する他、医療系以外でも東京大学や北海道大学、早稲田大学、上智大学、国際基督教大学などに合格している。その成果の最大の理由が、創立から45年間続けてきた寮生活にあるという。
寮内には日用品や文具を扱う購買部や自動販売機、ランドリーなどがあり、常駐する寮スタッフはきめ細かなサポートをしている
学力アップの秘訣は 教室で学ぶ「夜間学習」にあり
「学習面でのメリットは、『夜間学習』があることです。しかも、夕食を食べてから、いつもの教室でいつもの教員の指導を受けることができます。放課後に塾があると、進度や指導方針が違うなどとまどうことがあると思いますが、本校では昼夜の指導を連動させています。全寮制で夕食後も登校する学校はあまりないのではないでしょうか」と神原校長は話す。
中には実家で過ごす土日に塾に通う生徒もいるが、基本的には学校の勉強だけで済むため、寮生活の費用はかかるものの全体的にはコストパフォーマンスもよく、学習効果は高い。
「家で5時間勉強しなさいと言ってもできないですよね。それが、学校の教室ではできます。教室には魔法のような力があり、みんなと椅子に座るだけで学ぶ環境が整います。それが、入学時のレベルを超えた卒業時の進学実績に結びついているのです」
その証拠に、受験直前になると普段は金曜に帰宅する生徒も、週末は寮に泊まり始めるそうだ。寮生活はスマートフォンを預けるため、余計な誘惑もなく追い込みに集中できる。
スマートフォンを預けることで、現代社会で必須のICT教育の充実度が気になるが、ふだんはタブレットが使え、校内のメディアセンターで平日はインターネットも自由に使えるので、何の不自由もない。
平日に行われる夜間学習では、予習・復習のほか、少人数制で徹底した問題演習を行う基礎講座や発展講座を受講
多様性を認める寮生活で 豊かな人間性を育む
さらに、寮生活の最大のメリットは、多様性を認めるインクルーシブ教育で育まれる豊かな人間性にあると神原校長は話す。
「全国から違う環境で育った子どもたちが集まり、中学生は全員寮生活をします。高校生は希望によって通学制も可能ですが、高校からの入学者も迎え、他校で学んできた生徒とも交わります。学校だけなら苦手な人は避ければ済みますが、寮生活ではそうはいきません。実生活の中で多様性を実感する機会は学校よりも多くなります。そのため、自分の意見も伝えながら、他者の話にも耳を傾け受け入れる、そんな姿勢を身につけられるのです」
とはいえ、寮生活になじまない生徒やトラブルもあるのではないだろうか?
「まず、どんなに偏差値が高くても、寮生活をしてみたいという意欲のある生徒しか合格を許可しません。そのため、入試では面接を重視しています。また、保護者の方がよく心配されるのは、先輩による必要以上の指導ですが、入浴や食事は、学年ごとにして配慮しています。これは創立者自身が寮生活を経験し、先輩に命令されるような環境を本校の生徒には与えたくないという強い意志をもっていたからです」
寮には寮監・寮母が専従し、舎監長は系列校の学校長経験者で、何かあれば寮のことでも必ず学校として対応するという。担任の面談や生活アンケートを定期的に実施するほか、スクールカウンセラーも週に1回来訪するため、生徒の話を聞く環境は整っている。寮内の売店での買い物は寮専用のカードで、財布はスマートフォンとともに学校が預かるため、お金に関連するトラブルは起きない。
「友人関係のトラブルはもちろんあります。ただ、本人は相談しにくいかもしれませんが、本校の場合、まわりの子どもたちが『◯◯君のことが心配なのですが』と気遣ってくれます。大人だけでなく、子どもたちもまわりに気を配ってくれるため、目の行き届かないところがないと言えるでしょう」
3食とも厨房で作りたての食事が提供される
落ちこぼれを出さず やる気を起こさせる徹底サポート
寮生活の魅力が十分に伝わってきたところで、医学部進学に特化した話題に戻そう。
特筆すべきは「心の学習」という取り組みだ。新聞記事などを題材に、文章で考えをまとめ、ホームルームで発表する。模範解答などない中で、他者の話を聞き、自分の考えを深掘りする。教員やクラスメートとともに考え、大きな社会問題に対して「なぜ起きたのか」と想像する訓練をすることで、医師にとって必要な患者に寄り添う姿勢も身につくという。また、決まった枠内に指定時間内で文章を書くため、小論文対策にもなる。
また、医療関係に就く卒業生が多いからこそ可能な行事に「医療講演会」がある。医師など医療業界で活躍する卒業生を招き、話を聞く機会が設けられる。さらに、地の利を活かし、埼玉医科大学病院での見学実習も恒例だ。実際の医療現場での見聞は、医療業界を希望する生徒たちの大きなモチベーションになっている。
定期的に医療講話を開催し、医療問題に関する見聞を広めるとともに、進路希望をより明確にさせる
入学時に自分の目標を書き記した、全生徒の「誓いのことば」が収められた秀明の塔
ふだんの学習では、定期試験以外に5教科の単元ごとに学力到達度をはかる「秀明検定テスト」がある。合格ラインを超えるまで追試が課されるが、やった分だけ苦手分野を克服できる。
「中にはなかなか合格できない生徒もいますが、子どもでもプライドがあるので必ず最後は合格します。厳しいけれど、この検定テストのおかげで絶対に落ちこぼれさせないよう丁寧に指導することができます」
また、褒めて育てることも徹底している。それが「秀明博士」と「躍進賞」だ。「秀明博士」は、教科のトップになった生徒を表彰する。同じ教科では1度しか表彰されないため、ゲーム感覚で全クリアを目指す生徒もいるという。また、「躍進賞」はその子自身が成績を大きく伸ばした時に表彰するので、どの生徒にもチャンスがある。
このように非常に丁寧な学習指導を、実は小学生も受けることができる。それが「秀明家庭学習通信」だ。
「本校は寮生活で夜間学習が充実していますが、それでも自分で勉強する力は大切です。本校に興味をもっていただいたご家庭には、ぜひ「秀明家庭学習通信」で通信添削を受けていただきたい。添削するのは、本校の教員です。入学者の中には、添削を受けた教員が担任となり、小6から成長を見てきた人もいます」
最後に医学部受験を目指す家庭にメッセージを語ってもらおう。
「本校は創立時から医学部進学者が多く、これまで蓄積された受験報告書が充実しています。医学部専門予備校に負けない情報力を自負しています。浪人している卒業生を対象とした進路面談も行っており、アドバイスをするよう努めています。それは、6年間その生徒を見て、個性や学力を把握しているからこそできること。また、医学部に強い学校ではありますが、それ以前に、どんな人とも人間関係をつくれて、協働できる人材を育成したいと思っています。その結果、チーム医療を求められる医師を始めとする医療人としての資質を身につけてほしいと考えております」
※本記事は『日経ビジネス 特別版 SUMMER.2024〈メディカルストーリー 教育特集号〉(日経BP社)』に掲載されたものです。