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2020.10.27

医療安全対策を通した品質改善を進め超急性期の地域医療を担う新病院で、高度医療を提供【聖マリアンナ医科大学】

1974年の開院以来、地域の中核病院として機能してきた聖マリアンナ医科大学病院。新型コロナウイルス感染患者に対していち早く医療を提供したことでも注目を集めた同院では、現在菅生キャンパスリニューアル計画が進み、新たな医療拠点としてさらなる発展を遂げようとしている。2020年4月に就任した大坪毅人病院長に、これからの聖マリアンナ医科大学病院について語っていただいた。

聖マリアンナ医科大学病院 院長

聖マリアンナ医科大学病院 大坪 毅人 病院長

 

【プロフィール】

昭和61年 聖マリアンナ医科大学医学部卒

昭和61年 東京女子医科大学 消化器病センター外科 医療練士研修生

平成04年 東京女子医科大学 消化器病センター外科 助手

平成15年 東京女子医科大学 消化器病センター外科 講師

平成16年 聖マリアンナ医科大学 外科学(消化器外科分野) 教授

平成17年 聖マリアンナ医科大学 外科学(消化器・一般外科分野) 教授

令和02年 聖マリアンナ医科大学病院 病院長

 

【専門・担当分野】消化器・一般外科全般

日本外科学会指導医・専門医、日本消化器外科学会指導医・専門医・消化器がん外科治療認定医、日本肝胆膵外科学会高度技能指導医、産業医、Instructor of Advanced Trauma Operative Management、日本病院総合診療医学会認定病院総合診療医

地域医療の中核を担い、高度な医療を提供

聖マリアンナ医科大学病院は、1974年2月に菅生の地で開院。キリスト教精神に基づいた人間愛に根ざした病院として地域医療に貢献してきた。

 

同院の特徴として、大きく3つの点が挙げられる。

1つ目の特徴は、特定機能病院としての役割。特定機能病院とは、高度の医療の提供、高度の医療技術の開発及び高度の医療に関する研修を実施する能力等を備えた病院として国に認められた病院で、全国で86病院(令和2年5月現在)が認定されている。聖マリアンナ医科大学病院も平成5年12月1日に承認を受け、新たなスタートを切った。

 

2つ目の特徴は、地域の中核病院としての機能を十分に発揮できるよう32の診療科を備えていること。さらに診療科をまたぐセンターや診療協力部門を設置し、各診療科との連携をとっている。さらに救命救急センター、夜間急患センターで一次から三次までの救急患者を受け入れ、川崎北部を中心に周辺地域の救急対応にあたっている。

 

3つ目の特徴は、災害拠点病院として有事の際に備えていること。職員のうちおよそ70名がDMAT,DPAT(災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム)の資格を有し、出動要請に応じられるよう常に準備を行っている。災害発生時には、病院全体が通常時モードから災害時モードにスイッチを入れ替えられるよう、さまざまな防災訓練も実施している。

「当院はもともと地域との結びつきが強く、近隣住民の方々からも厚い信望をいただいています。32の診療科はそれぞれ高いレベルの医療を提供するとともに、横のつながりとも言える診療施設部門である各センターが複数の診療科と多職種を繋ぐことで、1つの診療科では対応しきれない症状に対応しています。人口が増加している川崎市北部地域の中核病院として、さらに大きな視点から地域医療に貢献していくことを目指しています」

病院一丸となって新型コロナに対応

前述のように、災害拠点病院としての役割を担っている聖マリアンナ医科大学病院。同院のある川崎市も災害対策に力を入れており、病院独自の災害訓練に加えて市内全病院に設けられている災害用無線の訓練なども行ってきた。そんな中、2019年度は「川崎市登戸通り魔事件」(5月28日)、台風19号による多摩川の氾濫(10月12日)という2件の大規模災害が発生。聖マリアンナ医科大学病院では対策本部を立てて対応、医療貢献を行ってきた。

 

今回の新型コロナウイルス感染に関しても、「大地震や自然災害といった災害ではありませんが、新型インフルエンザ等の感染症によりパンデミックが予想される場合に相当すると判断し、ダイヤモンド・プリンセス号が来航し行政のDMAT派遣の要請に応えると同時に災害対策本部を設置しました。」

 

日本でいち早く感染患者の受け入れを始めた同院では、2月11日に最初の患者を受け入れて以降、人工呼吸器や人工心肺装置を装着する重症患者の治療に取り組んできた。

 

詳細が不明な感染症に対処するため、同院では災害対策本部で日々手探りで治療に臨んだ。まず一般病棟の一部をコロナ患者専用とし、患者と医療者の動線を明確に分けるゾーニングを速やかに実施。また重症患者のみならず小児病棟や産科病棟にも子どもや妊婦の患者を受け入れられるような体制を整えた。

 

「2~3月はほぼ毎日、病院会議で対策を模索してきました。治療に当たっては医師・看護師をはじめとする多職種メディカルスタッフで専属チームを結成して臨みました。会議には病院長以下首脳陣が参加し状況の変化に対応できるようほとんどのことは即断即決いたしました。それでも日々新たな状況が出てきて1度決めたことが現状にそぐわず改定するということも何度もあり、そのたびに全員でまた1から考えて直す。そんな毎日でした」

 

会議には感染制御や感染症に詳しい医師をはじめ各診療科のメンバーが集まり、会議で話し合ったことはその日にメーリングリストで職員全員に知らせ情報を共有。また先が見えない中、精神科の医師がメディカルスタッフのカウンセリングを行うなど、病院を挙げて対応に取り組み、大きな成果を挙げてきた。

 

「病院全体で新型コロナウィルス感染症に対応できたのは、病院の理念である〝生命の尊厳を重んじ、病める人を癒す、愛ある医療を提供する〟を大学法人トップをはじめスタッフ全員が強く意識していたからだと思います。コロナとはまだまだ長い闘いが続きますが、今後も情報を共有し、最善の医療を提供していこうと考えています」

病院の品質改善を進め、よりよい病院を目指す

2020年4月から病院長を務めることになった大坪教授は、これまで副病院長・初期臨床研修センター長を務めた後、3年前から医療安全に取り組んできた。

 

「医療安全というと、医療過誤など問題が起こったときの対応というイメージでとらえていましたが、医療安全に携わるうちに〝問題が起こらないようにするにはどうすればいいのか〟その積み重ねが病院の品質改善につながるのだとわかってきました。よりよい病院になるために、医療安全の推進こそが病院長としてやるべきことだと思います」

 

特定機能病院は高度な医療安全管理体制を有することもその重要な要件とされており、聖マリアンナ医科大学病院でも医療安全管理部門、高難度新規医療技術担当部門、未承認新規医薬品・医療機器担当部門、放射線安全管理担当部門の4つの部門に分けて安全な医療の推進に努めているが、それでも事故は起きてしまう。

 

医療事故につながった案件を時系列で並べてみると、事故の過程で誰かが気づいていることがわかったそうだ。「どこかおかしい」と思いながらも、職種や経験などから言い出せなかったり、違和感を覚えながらも見過ごしたりすることが多く、院内の風通しの良さ、コミュニケーションの重要性を痛感しているという。また、問題が起きた場合に提出するレポートにはアクシデントレポートとインシデントレポートがあり、重大な事例の報告書であるアクシデントレポートについつい注目しがちだが、患者への影響を出さずにすんだなど軽微なミスを扱ったインシデントレポートにこそ、病院の品質改善の鍵があると考えるようになったという。

 

「コロナの影響がやや収まった今、本格的に品質改善に取り組もうと思っています。一つは挨拶キャンペーンなど、コミュニケーションの活性化を図ること。もう一つが、レポートをもとに遵守できなかったポイントを明確化し、病院内にあるさまざまなマニュアルや手順書を見直すこと。レポートが改善につながることがわかれば、職員の意識も変わってくるはずです。今後は風通しの良い環境と仕組みをつくるのが今の目標です」

超急性期に対応できる機能・設備を集約した新病院

聖マリアンナ医科大学病院 新病棟

開院以来、地域の中核病院および教育研修病院として運営されてきた聖マリアンナ医科大学病院だが、時代の変化に対応した「求められる医療」を実現するためには、新病院を建設する必要があるとの考えに至った。来る2021年に大学創立50周年を迎えることもあり、50周年事業として進められているのが菅生キャンパスリニューアル計画だ。2011年に菅生キャンパスリニューアル委員会を設置。明石会館とテニスコートのあった場所に新病院の建設が始まっている。

 

新病院は「選ばれる病院~人・社会・未来から~」をテーマとし、「多様な高次機能を備え、人に優しく、働きやすく、社会の変化に柔軟に対応できる未来志向型病院」を目指している。新病院の強化機能として

・地域中核病院としての急性期医療の強化

・医育機関としての教育機能の強化

・災害医療拠点病院としての役割の強化

・特定機能病院としての役割の強化

を掲げ、それぞれを実現するための取り組みを進めている。

 

特に意図されたのが超急性期医療の強化だ。新病院の1階に救命救急センターと夜間救急センター、2階にICUをはじめとする集中治療室、3階に手術室と、急性期医療に必要な多くの施設・設備をこの3フロアに集約した。

新病棟構内図

「地域包括医療の中で超急性期の特に人材とスピードが要求される部分を本院が担当。現在よりも多くの集中治療室や手術室を用意するとともに、状況によって柔軟に活用できるよう意識しました。集中治療室部門には各科のエキスパートで、活力みなぎる若手の医師が集まり、最良の医療を提供できる場をつくる予定です」

 

また、新型コロナウイルス感染症に対応した経験も活かされている。

「現在の病院では、COVID-19に対してゾーニングや陰圧等即席で対応してきたものの、新病院の設計では感染症対応の備えが十分とは言えませんでした。そこで設計の最終段階で急遽修正を加え、より感染症にも対応できる形を目指しました」

 

2018年度より始まった菅生キャンパスリニューアル計画は現在、新病院の新築工事に進んでおり、グランドオープンは2026年度の予定だ。

 

「高度な医療とアクセスの良さを兼ね備え、〝コンビニ感覚で行けるアクセスの良い一流百貨店(笑)〟が本院の目指す病院像です。患者さんから聖マリアンナ医科大学病院を利用してよかったと言われる病院となるよう、より一層の品質改善に努めていきます」

多くのロールモデルから実臨床を学べる場

 聖マリアンナ医科大学を母体とする同院は、医療機関であると同時に、医学部の卒前・卒後教育、および医学の発展に寄与する研究機関としての役割も担っている。同大出身の大坪病院長は、病院の特徴として各診療科間の敷居の低さを挙げる。

サークル活動

「他大学を経て聖マリアンナに戻ってきたとき、学生時代の多くの仲間が病院におり、診療科関係なくすぐに学生時代のように声を掛け合いました。私は学生時代アメフト部に所属していましたが、OB会を通して離れていた間も親交があったことも大きかったのでしょうね。

各診療科は専門性を追求しますが、現在は1つの診療科で完結することは少なく、協力して医療に臨む必要があります。各診療科の垣根が低いことで、そうした連携がしやすいのは大きなメリットだと思います。こうした本院の特徴は、コロナの際にすぐに一丸となって取り組めたことでもわかると思います」

また「こんな医者になりたい」と思えるロールモデルが病院内にたくさんいるのも大きいという。

「実臨床をやっていきたいと思う学生にとって、どの診療科を選んでも本院には応えられるだけのものがあると確信しています。加えて大きいのは、ここで働く医師たちの存在ですね。医師としての強い使命感や責任を持ち、日々患者さんに接している先輩たちの姿から得るものは大きいと思います」

医師をめざす人に向けてメッセージ

最後に、これから医師をめざす人に向けてメッセージをいただいた。

「研修医によく言うのですが、医者としてプロフェッショナルになっていくために必要なスキルに、テクニカルスキルとノンテクニカルスキルがあります。『高い技術を身につけたい』『手術がもっとうまくなりたい』等高みをめざすのがテクニカルスキル。一方ノンテクニカルスキルは、コミュニケーションやリーダーシップ、状況判断など、いわば人間としての底辺に位置づけられるスキルです。医師として成長していくには、この2つのスキルをどちらも伸ばしていく必要があると思います。

むしろ成長に必要なのは、ノンテクニカルスキルなのかもしれませんね。『自分はこれができる』というよりも、周りの人と足並みをそろえ、共に手を携えて困難に立ち向かう。私も学生時代を振り返ってみると、『クラスのみんなで試験に挑もう、全員で国家試験に合格しよう』という仲間たちに囲まれ、充実した時間を過ごせました。そうした仲間たちが今、自分の力を発揮し優れた医師として活躍している。医師になるのに一番は必要ないとつくづく思います。

これから医学を志す方には、知識や技術と同時に人間としてバランス良く成長することを心がけてください。それがきっと、いい医師への第一歩になるはずです」

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