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医学部に強い中高

2019.06.20

【広尾学園 医進・サイエンスコース】
「医療人」としての自覚。
医療の本質を問いながら、みんなで一緒に考える。

6 → 28 → 37 → 39 → 73。何の数字か、おわかりだろうか。実はこれらは、過去5年間に広尾学園から医学部医学科に合格した生徒数を表している。まさに大躍進といえるが、医進・サイエンスコース(以下「医サイ」)の責任者である木村健太先生は、「医サイは医学部に合格するためのコースではない」と言い切る。いったいどういうことなのか。医進・サイエンスコースのユニークな取り組みについて、さらに木村先生に語っていただいた。

医大生たちと一緒に地域医療の現場を体験する地域医療研修

医大生たちと一緒に地域医療の現場を体験する地域医療研修

医師をめざした瞬間からキミはすでに医療従事者である

医進・サイエンスコース木村 健太 先生
医進・サイエンスコース
統括長 木村 健太 先生

――「医進・サイエンスコース」の教育理念について教えてください。

木村 初めにお断りしておきたいのですが、医サイは、医学部に合格するためだけのコースではありません。「自分はどんな医師・研究者になり、どんな医療を提供したいのか。そもそも医療とは何か」。そんな医療の本質を、生徒が6年間かけて考える。そのためのコースとして8年前に立ち上げました。

もちろん、医師になるには、医学部に入学し、医師国家試験に合格しなければなりません。しかしそれは、わたしたちが想定しているゴールではない。医師になり、患者さんに最良の医療を提供し続けるには、「人の役に立ちたい」というモチベーションを持ち続け、かつ、最新の医学を学び続けなければなりません。

そうした人生を送るために、中高生時代の今、何をしなければならないのか。その命題を、生徒自身が真摯に考える必要があります。わたしたち教員の役割は、生徒一人ひとりがそれぞれ命題にしっかり向き合えるよう、環境を整えることだと自覚しています。

――生徒たちの教育環境を整える上で、どんなことを心がけているのでしょうか。

木村 生徒一人ひとりが、当事者意識を持てるようになること。わたしはよく、「医師をめざした瞬間から、あなたも医療従事者の一人だと思っている」と話をしています。

医学部受験を決意することは、実質的な「職業選択」にほかなりません。医学部に進学した以上、医師や研究者以外の道は、ほとんど考えられませんから。

つまり、大学入学後に「医師という職業」について思いを巡らすのでは遅すぎる。中高生時代にこそ医師としてのキャリア観を育むべきであり、現在の学びはすべて将来の医師という職業に直結している、と考えるべきです。

医師に必要なのは、医学知識や技量だけではありません。患者さんという「人」と向き合い寄り添うための、さまざまな人間的素養が求められる。それに生徒自身が気づけるような環境を用意しています。

2つの教育キーワード「本質を捉える」「本物に触れる」

――具体的には、どんな教育プログラムを実践しているのでしょうか。

木村 2つのキーワードで説明しましょう。まず、「本質を捉える」から。

医サイでは、生徒各自が「世界のまだ誰も知らないこと」を研究テーマとして立案し、中高6年間をかけて「研究活動」を行っています。

世界中から最新の学術論文を取り寄せて読み込む必要もあるので中高生にはハードルの高い学習ですが、専任スタッフが指導に当たり、「寿命とは何か」「メタボと細胞死の関係」など、各自が興味あるテーマを楽しく研究できるような環境を整えています。

その研究内容については全員、けやき祭(文化祭)で発表します。専門的な内容を、小学生の来場者にもわかるように平易かつ正確に伝えるには、研究内容の本質を正しく捉えていなければなりせん。

――もう一つのキーワードは何ですか。

木村 「本物に触れる」です。多くの大学や医療従事者のご協力の下、「医療の最前線に触れること」を指しています。

たとえば、「ドクタージェネラル」として有名な大阪医科大学の鈴木富雄先生には、総合診療について毎年ご講演いただくだけでなく、大阪医科大の医学生たちと共に、実際の地域医療に参加する研修も実施してもらっています。

世界の先進国で高齢化が加速するなか、過疎化・高齢化が進む地域はまさに医療の最前線。そこで現実の医療に触れることは、終末期医療や死生観も含め、生徒たちがこれからの医療を考える上での貴重な体験になります。

大阪医科大学附属病院の鈴木富雄先生による医療講演

大阪医科大学附属病院の鈴木富雄先生による医療講演

また、順天堂大学医学部附属練馬病院と連携して、病理診断セミナーも定期的に開催しています。

「乳がん病理診断セミナー」では、病理医と乳腺外科医の先生を招き、本物の患者さんの検体を生徒が病理診断した結果をもとに「年金生活の患者さんの経済的負担は?」や「年齢を考慮すれば、手術よりペインクリニックが有効」など、具体的なカンファレンスを実施。そこで優秀と認められたグループは、附属病院へ赴き、実際の乳がん手術にまで立ち会いました。

病理診断セミナーではチームで本格的な病理診断に取り組む

病理診断セミナーではチームで本格的な病理診断に取り組む

病理診断セミナーで術前カンファレンスの後、実際の手術に立ち会う生徒たち

病理診断セミナーで術前カンファレンスの後、実際の手術に立ち会う生徒たち

「医療人」としての自覚が合格の先で学び続ける原動力に

医進・サイエンスコース木村 健太 先生

――本質を捉える・本物に触れるという学習は、具体的にどのような成果を挙げているのでしょうか。

木村 生徒は「研究活動」を通じて、第三者にその内容を説明する場合、生半可な理解ではなく、本質を捉えた理解が必要だと実感します。

そしてこの経験は、将来医師として患者さんに何か説明する場合にも有効だと気づくのです。そこで生徒たちには、ふだんの学習においても、「人に説明できるレベルまで本質を捉えよう」という姿勢が養われ、自然と学習効果が高まります。

一方、医師は最新の知見や治療法を生涯学び続けなければならない職業でもあります。だからこそ、医サイの「研究活動」で学び方を学び、学ぶ喜びや学び続ける大切さを知ることは、自分自身にとって貴重な財産になるはずです。

実際の医師や医療現場の「本物に触れる」ことの重要性はいうまでもありません。医師という仕事のやりがいや喜びを知り、現実の医療の難しさや問題点を理解したうえで、「それでも医師になりたい」と思えたとき、その生徒には本物のキャリア観が芽生え、生涯にわたってのモチベーションが育めるようになります。

――自分はすでに医療従事者だと自覚することが、生徒には多くの面でプラスにはたらくのですね。

木村 そのとおりです。日々の学習においても、「いい点を取るため」「医学部合格のため」という個人的理由で勉強するのと、「誰かのため」「将来の患者さんのため」という利他的な動機で勉強するのとでは、やる気も結果もおのずと違ってきます。

現実の医学部入試ではハイスコアな争いになりますが、「医師になる」という当事者意識をもって臨めば、「医師であればミスは許されない」「ミスしないためにどう工夫するか」と前向きに捉えられるはず。

本日は主に心構えについて述べましたが、高3生にはもちろん、しっかりとした受験対策と指導を行います。中高生の「学び」と医師になる「モチベーション」をどう結びつけるか。その点については、中等教育の担当者として真摯に追求しています。「医療人」をめざし、これからの医療を共に考える生徒をお待ちしています。

※本記事は『日経メディカル/日経ビジネス/日経トップリーダー 特別版 SUMMER.2019年6月〈メディカルストーリー 教育特集号〉(日経BP社)』に掲載されたものです。

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