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2022.07.21

【西武学園文理小学校】 医療人に必要な 科学への興味を育む 本物から学ぶ体験教育の数々

医療人必要な

科学への興味育む

本物から学ぶ体験教育の数々

各学年2クラスの少人数でスタートする小学校から、高校までの12年一貫教育を受けた7期生が2021年度3月に高校を卒業した。そのうち12名を医歯薬系に進学させたのが、西武学園文理小学校独自の高度専門プログラム「STEM教育」とも言える。その本質となる「本物から学ぶ体験教育」について、飛田浩昭校長に話を聞いた。

校長 飛田 浩昭 先生

学園所有の農地で

農業体験から観察まで

 

 6年間を通じた「英語のシャワー」、および小学校から高校まで12年間一貫教育で知られる同校だが、その本質的な教育の要は「本物にふれること」だろう。なかでも注目したいのが、独自の高度専門プログラム「STEM教育」だ。STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとったもので、論理的思考力を育てる理数系教育である。

 学園の中学・高校の理科教諭を招いて実験を行ったり、観察したりする機会を多く設けている。二酸化炭素の実験で実際に火を扱えるのは、専科教員の視点で安全性を確保できるからだろう。観察で活躍するのは、地元・狭山の豊かな自然だ。学校の近くに「文理ファーム」という農地をもち、農家の方を講師に迎えて指導を受け、水田では田植えから稲刈りまで行い、畑ではさつまいもや落花生、じゃがいも、大根など育てている。

 「稲は近所の八雲神社に奉納し、神主の方から玉串の捧げ方まで教わり、五穀豊穣を感謝します。子どもたちは落花生の名の通り、花が落ちて実をつける様子を見たり、学校の近くを流れる入間川でヤゴ取りをして羽化するまで育てたりします。収穫した作物は家に持ち帰り、食べることまでが教育です。これは食育にもつながり、給食の残食も減りました」と話すのは、飛田浩昭校長だ。観察時には、全児童が所持するタブレットで写真を撮り、観察日記もつける。

農家の方の協力のもと、文理ファームでさつまいもなどの作物を育て収穫することで、食への感謝の気持ちを育む

医大での医療体験実習で

仕事として医療を理解

 

 高校の先端サイエンスクラス(理数科)の生徒によるロボット・プログラミング講座もある。児童にとって、将来像となる先輩たちによる指導はより高い教育効果をもたらす。

 また、医療に携わる家庭が少なくないため、早くから医学部進学を視野に入れている児童もいる。そうした児童にとって、埼玉医科大学総合医療センターの協力で行われる医療体験実習(希望者のみ)は貴重な経験だ。担当してくれる医師によって体験内容は異なるが、これまで手術室やドクターヘリの見学、鶏肉を使った解剖、心肺蘇生法の体験などが行われてきた。卒業生の医師が、見学に来た児童に声をかけてくれることもあり、子どもたちにとって勉強へのモチベーションにつながる。

「算数や理科が、将来にどうつながっているのか理解してくれればと考えています」

 さらに保護者からの要望で、宇宙飛行士の講演会も企画した。「JAXAの大西卓哉飛行士がオンラインで講演してくれることになり、宇宙へも興味を広げてもらえたらと期待しています」と飛田校長。保護者の声に即応するのは、それを必要とする一人ひとりの声に常に耳を傾けているからだ。

授業以外にも休み時間、給食など、日常的に外国人英語教師と触れ合う機会を多数設けている

イマージョン教育による

日常的な「英語のシャワー」

 

 イマージョン教育による「英語のシャワー」も、同校を語るうえで欠かせない。イマージョン教育とは、英仏二言語が公用語であるカナダ発祥の教育で、通常の教育で二言語を使用することでバイリンガルを育てる教育法だ。横浜国立大学に進学した卒業生は、同校のインタビューで「イマージョン教育の英語をどう捉えていたか」と聞かれ、「言語ではなく、言葉として捉えていた」と語ったそうだ。つまり、ネイティブが母国語を習得する過程を同じように、日常的な言葉として身につけたというのである。

「日本語で話したら、必ず英語でアナウンスします。ALT(外国人英語講師)が7人いますが、彼らにはふだんから短いチャットを子どもたちにしてもらうようにしています。登校時から英語で声掛けをし、入学してまだ3カ月弱の子どもたちもそれに英語で応えています」

 1年生から宿泊研修があるのも特徴的で、学年が上がるごとに日数が増え、遠方となる。1年生は学校に近い研修センターでのイングリッシュ・キャンプ、2年生は山梨県・西湖、3年生は栃木県・日光、4年生は北海道・釧路〜知床、さらに5年生はイギリス短期留学、6年生はアメリカ研修まであるが、これらの研修費用は学費に含まれているため、保護者はその都度の出費がなく安心だ。

 1年生からの宿泊研修の積み重ねは、海外研修のための準備にもなっている。「宿泊先の鍵はいつも違うため、海外でどんな鍵のホテルに泊まってもとまどうことがありませんし、鍵を部屋に忘れても、自分でフロントと交渉することができます」と飛田校長は誇らしげだ。イギリスで訪れるイートン・カレッジでは、「あの先生はきれいな英語を話す」と流暢な英語を聞き分け、アメリカで訪問するハーバード大学でも英語で行われるキャンパスツアーでの話の内容を後で教えてくれるという。

「英検®も4・5年生で3級に合格し、なかには卒業までに2級を取る生徒もいます。クリアするのがおもしろくなっていくみたいです」

自ら考え、まとめ、最後はプレゼンテーションまで行う「卒業研究」。この経験を通じて、次世代を生き抜く力を身につける

パワポを駆使して

卒業研究を発表する

 

 特筆すべきは小学生ながら「卒業研究」があることだ。これは中学・高校での探究学習にもつながる。5年生からそれぞれ関心のあるテーマを自由に選び、掘り下げ、6年生は自分でパワーポイントで資料を作り、卒業式の1週間前に保護者も招いて2日間かけて1人5分間の発表を行う。上位5名は全校生徒の前でも発表する。「共有することで学び合い、調べることの楽しさを知ります。プレゼンテーション能力が高まるだけでなく、まわりの人からのリスペクトも得て、自己肯定感にもつながります」とのこと。プレゼンテーションは、1年生からさまざまな機会に行うことで積み重ねがある。たとえば、ランチの時間に行う誕生日会には保護者も招き、英語と日本語で発表する時間がもたれる。最近のテーマには、「持続可能な社会」「地球温暖化の解決方法」「ユーゴスラビアの歴史」など社会派のテーマも多いが、「源氏物語」「光秀はなぜ信長を殺したか」など文学や日本史を取り上げる児童もいたそうだ。

偉大な人物を紹介し、その人物から学ぶ校長講話。講話の後には振り返りの作文も書く

海外医学部にも

2年連続で進学実績

 

 当然ながら、こころの教育にも尽力している。全学年に行う「校長講話」では、あまり知られていない偉人の話をしているとのこと。たとえば孤高のハンセン病医師として知られる小笠原登氏について語った時のアンケートでは学年によって成長する様子が見られた。小笠原氏は、ハンセン病患者の隔離政策が行われていた時代に、隔離の必要はないと信念を貫いた人物だが、1年生が「父母と別れて隔離施設に行くのは怖い」と自分ごとだったのに対し、6年生は「差別」「人権」という視点で意見を書けるようになっているそうだ。今、医学部生に求められる倫理観の育成にもなっている。

「もともと西武学園は高校が理系に強いので、小学校でも理科に重きを置きながら、英語教育も行う2本柱で教育を行ってきました。その成果として、12年間一貫教育で学んだ2021年度卒業生のなかから8名が医学部に合格。4年前からは東大にも現役で進学しています。海外もハンガリー国立大学医学部に2年続けて進学しています。先輩の背中を見て続くのでしょう。高校1年から長期留学するケースもありますが、英語を話せるというアドバンテージも本校の強みです」

 多彩な「本物とのふれあい」のなかで、現代人として医師として必要な科学への興味、人格形成、国際感覚の醸成に大きな期待が寄せられる。

※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。

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