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2022.07.21

【広尾学園 医進・サイエンスコース】
キーワードは「本物に触れる」
医療の最前線での研修も実施し医師に必要なマインドを育てる

キーワードは「本物に触れる」

医療の最前線での研修実施し

医師必要なマインド育てる

多様性を受け入れる校風の下、本科、インターナショナル、医進・サイエンスという3つのコースを設置し、キャリア意識を高める教育を実践している広尾学園。医学部に多くの合格者を輩出している医進・サイエンスコースだが、その目的は大学進学ではなく、「医師になる」というモチベーションを日々の学習につなげていくことにある。コースの設置以来、一貫して追究してきた「本物に触れ、本質を捉える」教育について、医進・サイエンスコース統括長の木村健太先生に伺った。

医進・サイエンスコース

統括長 木村 健太 先生

「医師とは何か」「医療とは何か」

本質を捉えるところからスタート

 

—「医進・サイエンスコース」が目指していることを教えてください。

木村 医進・サイエンスコース(以下「医サイ」)は、医学部に合格することが目的ではなく、「医師とは何か」「医療とは何か」を考えるためのコースだと捉えています。医療の現場を知らずに医学部に進学して、その後に「向いていない」ことに気づくのでは困るからです。医学部進学者が多い学校だからこそ、早い段階で医療従事者について学ぶ必要があり、生徒たちの「医師になりたい」「人の役に立ちたい」という思いやモチベーションが高まっていくようなプログラムを用意しています。

 医師は患者さんの前で「わからない」とは言えません。あらゆる知識を持ち、患者さんにわかりやすく伝えることが求められます。それを考えると、例えば中学や高校のテストの論述問題に答える時でも、「わかりやすく説明できるようになりたい」と思うのではないでしょうか。また、医師になった時、ケアレスミスは許されません。そうすると、入試でも「ケアレスミスをなくさなくては」という姿勢で臨むでしょう。生徒たちには、「医師になる」という強い思いとともに、将来医師になった姿を想像して、「そのために今、何をやるのか」を考えてほしいのです。

 

医療の現場を実際に体験し

社会への貢献を考える

 

—医療従事者による講演・講座を設けていますが、なかでも特徴的な取り組みについてお聞かせください。

木村 私たちがキーワードとして考える「本物に触れる」プログラムの一例として、実際に地域医療に参加する研修があります。総合診療の第一人者として有名な大阪医科薬科大学の鈴木富雄先生のご協力の下、医学生、地元の高校生、本校の生徒がチームを組み、患者さんのお宅にホームステイをさせていただきます。医療行為はできませんが、患者さんの生の声を聞き、少しでも不安を解消するように考えて行動します。

 その研修に参加した生徒は、参加していない生徒に地域医療の現実を伝え、今後どうしていけばよいのかをみんなで考えるようにしています。「本物に触れる」ことで、「医療とは何か」という「本質を捉える」ことに近づけるのだと思います。

 また、順天堂大学医学部附属練馬病院と連携して行う病理医セミナーも、本物に触れる貴重な機会です。そのなかで医療には重い責任が伴うことを実感し、「自分も医療に貢献したい」と決意する生徒も少なくありません。「社会に貢献したい」「誰かの役に立ちたい」と考えると、結果的に学習へのモチベーションも高まります。

高度な研究活動を可能にする

最先端の機器・設備も完備

 

—6年間を見据えて、中学ではどのような取り組みを行っていますか。

木村 中学の段階では「理数研究」として授業のなかで研究活動に取り組みますが、中1では数学や理科が得意でなくても構わないので、楽しんでもらうように心掛けています。楽しめる授業にするためには、まずは教員が楽しむことが大切。教員が生徒と一緒に授業をつくっていき、生徒が自ら意見を発表したくなるように工夫しています。

 医療について知りたいと思うことは、実は普段の授業とつながっています。例えば、再生医療に興味を持ち、iPS細胞をつくりたいと考えた時、移植先でがん化してしまうことが問題だとわかります。がんになると細胞分裂が止まらなくなってしまいますが、細胞分裂とは何かと考えると、中学の理科で扱っている内容と関係してきます。このように、教員は医療の問題がどの単元にどうつながっているのかを生徒たちに伝えます。そうすると、授業に対しても意欲的に取り組めるようになるのです。

 理系分野を目指す生徒は、疑問を解決するために本格的な設備を求めてきます。本校のサイエンスラボには、iPS細胞の培養やゲノム編集もできる最先端の設備がそろっており、実験授業だけでなく、放課後や土曜日を利用した高度な研究に取り組むことも可能です。

 また、自分が知りたいことを知ったり、できないことをできるようにしたりするには、授業で学ぶ科目の力が必要です。論文は英語で書いてあるので、英語力も伸ばさなくてはならないし、患者さんに自分の考えを伝えるには国語力も大切です。得意・苦手という先入観を持たずに、それぞれの科目に興味を持ってもらえるように努めています。

—医サイの取り組みは、本科やインターナショナルコースの生徒にどのような影響を与えていますか。

木村 本校が掲げる教育目標は「自律と共生」です。多様な価値観を持つ生徒が集い、補い合い、高め合いながら学ぶ校風が根づいています。医サイのプログラムのうち、数年にわたって定着しているものは、本科・インターの生徒にも声を掛けて、希望者に参加してもらっています。本物に触れると、さまざまなものが見えてくるので、本科・インターで「医師になりたい」という生徒も増えてきています。逆に、医サイから東京大学文科一類に進学した生徒もいます。

 

29名の医サイ専属教員が

チームとして連携しながら対応

 

—コース制にすることで、どのようなメリットがあるとお考えですか。

木村 医サイの専属教員は29名おり、医サイのみの職員室もあります。各クラスに担任はいますが、どの教員にも相談できる体制になっています。教員にもさまざまな専門分野があるので、自分の専門分野を生かし、苦手な部分はカバーし合って、チームとして連携しながら生徒に対応します。生徒によって伸ばすところ、苦手なところは異なるので、それに応じてきめ細かくフォローできます。

 また、医サイは教室も中1から高3まで同じフロアにあり、先輩や後輩が学んでいることを共有しやすく、興味を持ったら中学生でも高校の範囲の内容に挑戦できるようにしています。先輩の姿を間近で見て、ロールモデルにもできるので、モチベーションアップにもつながります。

—医師を目指している受験生や保護者の方へメッセージをお願いします。

木村 今のうちから、さまざまな問題を一生懸命に考える姿勢を身につけてください。世の中には、何が正しいのかわからないことがたくさんあり、医療の世界でも、どうしたらよいのかを決めなくてはならないことが、今後ますます増えていくからです。疑問を持ち、調べたり、考えたりすることで深く理解することができます。本当に理解しているかどうかの目安は、自分が理解したことを他者にも理解できるよう伝えられるかです。だから本校の入試では記述問題も出題しています。考えを簡潔に書くことは、大学入試はもちろん、社会に出てからも求められる力です。今の勉強が将来にもつながっている、そのことを忘れずに、努力してください。本校に入学したら、自分もみんなも幸せになれる医療の未来を一緒に考えていきましょう。

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