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受験対策/予備校ガイド

医学部 塾・予備校活用ガイド

2023.01.30

【医学部予備校 富士学院】自身に合った、必要な塾や予備校選びが 合格への近道

数年前に比べると、受験者数が減少し、競争率に落ち着きを見せている医学部入試。しかし、「だからこそ、これまで以上に予備校選びが大きなカギとなる」と大手医学部予備校・富士学院の坂本友寛学院長は警鐘を鳴らす。その理由や、予備校選びの注意点、理想的な学習環境や指導体制などについてアドバイスをいただいた。

現役生だけでなく保護者の方も参加した校内医学部入試セミナーの様子 現役生だけでなく保護者の方も参加した校内医学部入試セミナーの様子

医学部受験者が年々減少し 閉鎖する予備校も

──はじめに、医学部入試の現状について教えてください。

 

 医学部受験者はここ数年ずっと減少傾向にあります。具体的な数字を見てみると、2022年度の国公立大学の医学部志願者数に限っては、前期・後期を合わせて2万2340名と、前年度より457名増えましたが、受験者数は1万3220名で、前年度より442名減少しています。


 ㆒方、私立大学の医学部では、志願者数・受験者数ともに減少しています。志願者数は9万206名と前年度より954名少なく、受験者数は前年度より1338名少ない8万2816名でした。2022年度は、獨協医科大学と金沢医科大学がそれぞれ受験日を1日増やしたほか、コロナ禍によりひかえていた東京や都市部への受験が復活し、その分受験者が増えたのにもかかわらず、受験者数が減っているのが現状です。しかし、それだけ合格のチャンスが増えてきているともいえます。

 

 特に減少が目立つのは、既卒者の受験者です。少子化の影響もありますが、その他の大きな理由は、長引く新型コロナウイルスやウクライナ情勢など、先行きが不透明な社会にあると考えています。そうした社会に不安を感じれば、安定した場所に身を置きたいと思い、浪人を回避したくなるものです。そのため、医学部に合格できなかった受験生が浪人をせず、他学部に進学したり別の道に歩むことで、医学部受験生が特に減少しています。そして、この傾向は今後も加速していくことが予想されます。

 

 

──医学部受験者の減少は、予備校にどのような影響を与えるのでしょうか。

 

 浪人生が減少すれば、予備校も打撃を受けます。そして、無理にでも生徒を集めようとする経営者が増えてきます。だからこそ、これまで以上に予備校選びには慎重にならなくてはいけません。受講料の大幅値下げなどで生徒を確保しようとする予備校が、すでに増加してきています。値下げをすれば、必ずひずみが出ます。講師の質が下がったり、途中で経営破綻してしまったりする恐れもあります。そのため、受験生・保護者ともに正しい予備校情報を入手することが重要です。

医学部予備校 富士学院 学院長 坂本 友寛 氏 医学部予備校 富士学院
学院長 坂本 友寛 氏

合格実績や学習環境について 詳細をしっかり確認する

──予備校選びのポイントを教えてください。

 

 まずは直接足を運んで学習環境を確認し、気になることについて、納得がいくまで説明を求めることが大事です。着目すべきは「医学部に合格できる学習環境が整っているかどうか」特に、「各予備校が公表している医学部の合格実績のデータの詳細」です。合格実績の公表の仕方は予備校によって、大きく異なります。たとえば、医学部合格者のデータに、医学科だけでなく、薬学科や歯学科など他学科を含めている場合もあります。また、一次合格者の実績を最終合格として公表したり、過去数年にわたっての延べ人数だけを表記したりしているケースも少なくありません。直接足を運んだ際には、「その年度に、何名が在籍していて、医学科に最終合格したのは何名なのか」など、具体的に質問するといいでしょう。

 

 

──「医学部に合格できる学習環境が整っているかどうか」は、どこで判断すればよいでしょうか。

 

 自分の現状と目標をしっかりふまえたうえで、予備校の指導体制を確認することです。授業料は予備校選択の目安の一つになりますが、安いからといって、安易に決めてしまうのは危険です。たとえば、一方通行型の集団授業を中心に行っているような大手予備校の場合、授業料は抑えられます。しかし、医学部ですから、受験では相応の学力が求められます。すでに実力が伴っているような生徒であれば、大人数で切磋琢磨することにより、成績が伸びるかもしれません。ただし、学力がまだ十分に備わっていない生徒は埋もれてしまう恐れがあります。さらに、大人数制では個別の質問に対応してもらえない状況に陥りがちです。当然ながら、サポート体制が充実した少人数制の予備校のほうが、生徒のフォローも万全にできるでしょう。

生徒や保護者の声から 予備校の本質や特性を判断

──富士学院では、どのような指導体制で行われているのですか。

 

 一人の生徒につき、各教科の講師陣と担任講師、担当職員、校舎長の7~8名がチームになってサポートしています。各教科の講師は、自分の教科だけを見る訳ではありません。受験は、特定の教科だけでなく、総合点で合格最低点をクリアする必要があります。そのため、講師たちは定期的にチーム会議を開き、生徒情報を共有して今後の指導方針を決定していくのです。たとえば、英語が足を引っ張っている生徒の場合、その成績を伸ばすために、チームで話し合って、他教科の勉強や課題の量を減らしたり、内容を調整したりします。そして、議論を重ねて、生徒に合った大学を選び、必要な対策を取っていきます。

 

 また、医学部入試はすべての大学で面接が課されます。大学によっては小論文の試験対策も必要になります。学力面のほか、きちんと面接や小論文対策を踏まえた指導が行われているかどうかも、予備校選びの判断材料になるでしょう。さらに、「本当に信頼できる予備校かどうか」もポイントです。

 

 

──それはどのようなことから、知ることができますか。

 

 判断が非常に難しいですが、最もわかりやすいのは、在籍している生徒や保護者の生の声と考えています。富士学院では、在籍した生徒やその保護者の声を「合格体験記」や、「保護者の声」という形で毎年、冊子やホームページに掲載しています。昨年は、生徒と保護者合わせて200名以上の声が寄せられました。保護者だけでも77名もの声が寄せられ、そこにはたくさんの感謝の気持ちがつづられています。ぜひご覧になってください。特に、保護者からの感謝の声は普通は中々もらえないと思います。ただ単に合格しただけでは、わざわざ文章に残すとは考えづらいからです。また、合格体験記を掲載している予備校はいくつかありますが、その内容をよく読むことも大切です。内容次第で信頼できる予備校かどうかをぜひ判断してください。

 

 

──OB医大生の声もホームページに載せていますね。

 

 はい。富士学院には医師・医大生のOB会が18年前からあり、現在300名以上の医師を含む約1200名が登録しています。予備校でこのようなOB会があり、きちんと機能しているのは珍しいかもしれません。OB会ができたのも、富士学院が単に合格させるだけの予備校ではなく、その先の大学6年間や、医師になってからを見据えた指導を実践しているからだと自負しています。現に、入学した生徒の出身予備校を調べている大学もあり、富士学院出身の生徒全般について高評価をいただいています。こうした大学側からの富士学院に対する評価も、大学からの大きな信頼につながっているのだと思います。また、富士学院では医師になるための意識づけとして「ゼミ生自立講座」を開催し、OBの医大生や医師との懇談会なども実施しています。昨年10月には、富士OB会の顧問に、順天堂大学特任教授の天野篤先生に就任していただきました。今後は「ゼミ生自立講座」にも参加いただく予定です。

高校や大学との連携が 予備校としての信頼性を高める

──富士学院は、全国の高校や大学とも信頼関係を築いていますね。

 

 はい。現在、高校の進路指導担当の先生方を招いて、「医学部入試研究会」という医学部入試に特化した勉強会を直営校全校舎で開催しています。このほか、医学部合格をめざす高校生を対象にした「校内医学部入試セミナー」も全国の進学校で実施しています。2022年度も、都立日比谷高校や横浜翠嵐高校をはじめ、数多くの高校で開催しました。セミナーでは医学部入試の総括と現状、面接や小論文の重要性、合格のポイントなどのほか、医師の仕事のすばらしさや、やりがいなども伝えています。

 

 また、大学からの依頼を受け、オープンキャンパスや大学の公式サイトなどで、入試問題の過去問解説などを含む「入試対策講座」を行っています。これまで、久留米大学医学部・藤田医科大学・東海大学医学部・愛知医科大学・昭和大学医学部で実施しました。また、2021年度からは、昭和大学と連携し、医学部・薬学部・歯学部・保健医療学部の4学部の推薦合格者を対象に入学前準備教育も行っています。高校や大学とのこうした信頼関係は、予備校の信頼性を高める重要な要素にもなっていると思います。

 

 

──最後に、医学部受験を考え、予備校通いを検討している受験生にメッセージをお願いします。

 

 どこの予備校を選ぶかでその後の人生が左右されます。想像していた環境と異なる予備校に通ってしまい、不信感を抱きながら医学部に進学した人と、予備校に感謝の気持ちを持って医学部に進んだケースでは、恐らくその後の人生が大きく変わってくると思います。後者は、医師になったときに、その感謝の気持ちが患者さんに向けられ、患者さんと良いコミュニケーションがとれる、そういう医師になってくれるはずです。どうか公開された情報だけを鵜呑みにせず、実際に足を運んで、“本当に自身ががんばれると思う塾や予備校”を見つけてください。

 

 また、医学部受験生は確実に減っています。倍率が減少している今が、医学部合格の最大のチャンスです。

 

 現在、厚生労働省と文部科学省の分科会「医療従事者の需給に関する検討会」で、医学部定員について、人口減少を見据えた議論が交わされています。今後は入学定員を絞られる可能性が大ですが、ここ1〜2年までは定員の大幅削減もないと予想され、現在は、最も医学部に合格しやすいと思います。このチャンスをものにして、最後まで諦めずにがんばってください。

※本記事は『日経ビジネス/日経トップリーダー 特別版 WINTER.2023〈メディカルストーリー 入試特別号〉(日経BP社)』に掲載されたものです。

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