医学部 塾・予備校活用ガイド
2025.01.16
【医学部受験最前線】自分に合った医学部予備校の選びのポイント
難関の医学部入試を突破するために重要になるのが予備校の選択です。予備校には様々なタイプがあり、医学部入試に強いだけでなく、自分に合った指導を行ってくれる予備校を選ぶことが重要になるのです。以下にとくにチェックすべきポイントを解説します。
入学定員増が続いている 今こそ医学部受験のチャンス
少子化の影響で、多くの学部が大幅な志願者減少を見せる中で、高い人気を維持しているのが医学部です。すべての医学部の難易度が「高止まり」の状況にあります。
しかし,それでもなお、今が「医学部受験の最大のチャンス」であることも確かなのです。
なぜなら、医学部の入学定員増が続いているからです。2024年度の医学部総定員数は前年度より19名増の9403名。定員増がスタートした2008年度の7793名と比較すると1610名も増加しています。
この入学定員増の要因の1つが、医師不足が深刻な地域が存在することです。そこで、地域医療を担う志のある学生を特別に選抜し、奨学金を与える「地域枠」の定員が増えています。地域によっては、設置診療科の偏りが大きいケースもあるため、「診療科選定地域枠」を設ける医学部も見られます。そのほか、同様に不足している「研究医」を養成するために定員増を図る医学部もあります。
当然のことながら、少子化がさらに進行すれば、医学部だけ門戸を拡大しておくわけにはいかなくなります。医学部の入学定員は、いずれは減少に転じることになるでしょう。だからこそ入学定員増が続いている今が、医学部受験の絶好のチャンスと言えるわけです。
とはいえ医学部が超難関であることに変わりはありません。合格するためには、相当な学力アップが求められます。独学で学力を高めるのは困難で、予備校選びが重要なポイントになります。とくにどのような点に注意すべきなのか。現役生・既卒生に共通する視点と、現役生、既卒生個別にチェックすべき視点に分けて解説します。
1️⃣ 現役生・既卒生共通の視点
大人数集団授業、少人数制、 個別指導──様々な指導形式
まず予備校のタイプ別の特色から見てみましょう。
一般的な予備校は、大人数の集団授業が中心で、その分、学費は抑えられます。自主的な学習態度が身についている人は、大人数集団授業でも、十分に学力を伸ばすことができるでしょう。授業で自分の弱点を見つけて、学習計画を立て、自力で克服していけるからです。けれども、現役生の多くや、既卒生でも自主的な学習態度に自信がない場合は、受け身で授業を受けているだけになり、知識の定着が図れないケースも見られます。
それに対して、医学部予備校では、集団授業でも1クラス10人以下の少人数制が主流で、講師が生徒一人ひとりの学力の現状と推移、性格、弱点分野などを把握しており、きめ細かなフォローが期待できます。講師と生徒の距離が近く、質問しやすい雰囲気も生まれています。その分、学費はやや高めになっています。
学費は最も高くなりますが、マンツーマンの指導体制をとっている予備校もあります。その生徒の苦手な分野を集中的に取り上げ、確実に合格答案が書けるようになるまで、徹底的に指導してもらえ、着実な学力アップが図れます。
そのほか最近では、オンライン形式の予備校も増加傾向にあります。全国どこでも利用できること、通塾の時間が節約できること、自分のペースで勉強を進められることなどがメリットです。一方で、自宅で一人で受講しているとモチベーションの維持が難しいことや、質問がしにくいといった問題点も指摘されています。
このように、予備校によって指導形式は大きく異なります。しかも、どの指導形式が優れていると、一概に言えるものでもないのです。例えば、学費の問題を抜きにすれば、個別指導が誰にとっても最適と考えがちでしょうが、そう単純なものでもありません。医学部合格には、膨大な勉強量が要求されます。ライバルの存在が、長く厳しい日々を乗り切る支えになることもあるのです。そのため、少人数制集団授業と個別指導を組み合わせた学びを可能にする予備校も増えています。
こうしたそれぞれの指導方式の特色を理解した上で、自分の学力や性格に合った予備校を選ぶことが肝心です。できれば、その予備校に通っていた先輩の話を聞いたり、体験授業や説明会などに積極的に参加したりして、中身をしっかり見極めるようにしましょう。
夜間指導で「確実に解ける」 レベルに仕上げる
医学部志望者が肝に銘じておくべきなのは、問題が「ほぼ解ける」レベルでは不十分で、「確実に解ける」レベルに仕上げる必要があるということ。医学部に合格するには、それだけの高得点が要求されるのです。そうしたレベルアップのために、どんな指導が行われているか、確認しておきましょう。
ほとんどの医学部予備校では、半強制で夜間指導を実施しています。膨大な問題演習の時間を確保し、授業で学んだ知識の定着を図り、「確実に解ける」力を高めることが目的です。具体的には、与えられた課題に取り組み、分からないところがあったら、待機している講師に質問し、その日のうちに解決します。約1週間後に、授業で学んだ内容のテストが行われ、全問を自力で解けるようになるまで、「解き直し」が課されます。そこまで徹底することが、医学部合格には不可欠なのです。
担任制度、チーム体制など サポート体制も大切な要素
講師陣のサポート体制も、重要な要素になります。
医学部予備校の多くでは、担任講師制度を設けています。担任講師は、生徒や保護者と定期的に面談し、勉強の進捗状況を確認し、その後の学習方針をアドバイスします。そのほか、生徒の日頃の様子を観察し、悩みや焦り、ストレスなどの兆候があるようなら、声かけして、随時、相談に応じています。
もちろん、担任講師が生徒のすべてを把握するのは困難です。そのため、多くの医学部予備校では、その生徒が受講している全科目の講師陣、職員を合わせた「チームによるサポート体制」を構築しています。チームは月に数回集まって、学習、生活両面から、生徒の現状に関する情報を共有し、今後どう指導していくか、話し合いを重ねています。
実は、こうしたチームによるサポートが充実している予備校こそが、医学部受験に強みを発揮しているのです。なぜなら、医学部入試では、すべての科目で高得点が求められるからです。そのため、例えば特定の科目の成績が伸び悩んでいる生徒がいたら、自分が担当する科目の課題を減らしてでも、一定期間、弱点科目の克服に集中させるといった配慮が必要になります。そうした臨機応変な対応を可能にするためには、その生徒に関わる全講師がチームを組んで、情報を共有していることが大切になるわけです。
2️⃣ 現役生がチェックすべき視点
ライバルやチューターが 受験勉強の支えに
現役生の中には、在籍している高校に医学部志望者があまり多くないということもあるでしょう。その場合は、一般的な予備校よりも、医学部予備校のように、皆が医学部をめざしている環境を選んだ方がいいと思われます。
実際、医学部合格者の体験談でよく聞かれるのが「仲間たちがそれぞれに悩みを抱えながらも、必死に努力している姿に接して、自分も最後まで粘り強く頑張ろうと思えた」といった声です。同じ難関の医学部に挑戦する仲間は、ライバルであるとともに同志であり、受験勉強の大きな支えになる存在なのです。
また、現役医学生のチューターを配置している医学部予備校もあります。その主な役割は、自分の体験を踏まえて、勉強方法や、日々の過ごし方などをアドバイスすることです。チューターのほとんどが、その予備校の出身者ですから、助言には説得力があり、大いに参考になります。ときには、医学部のカリキュラムやキャンパスライフなどが紹介されることもあり、それに刺激を受けて、「医学部に行きたい」というモチベーションを高めたと語る人も少なくありません。
夜間の学習が ペースメーカーになる
現役生は、先述した夜間指導の体制も、しっかりチェックしておきましょう。
医学部予備校の多くでは、授業後、現役生も残って勉強しています。高校の学びと両立させながら、医学部受験のための勉強時間を確保するのは、なかなか難しいことですが、この夜間の学習が、いわゆるペースペーカーの役割を果たしてもいるのです。
自習のための環境も、合わせて確認する必要があります。「自習室の開放時間(土日も含めて)」「集中して勉強に取り組めるように、専用のブースが用意されているか」などがチェックポイントになります。
学校推薦型に対応した 指導の充実度を確認する
現役生の中には、選択肢の1つとして、学校推薦型の受験を視野に入れている人もいるでしょう。その場合は、予備校の説明会などで、学校推薦型にはどのように対応しているのか、指導の充実度を質問することが大切です。
もちろん、多くの予備校では、各医学部の学校推薦型選抜がどのような形態で行われているのか、綿密な情報収集に努めています。その上で、生徒のニーズに応じて、面接対策や小論文の添削指導などに力を入れています。
3️⃣ 既卒生がチェックすべき視点
入試問題との相性なども 的確にアドバイスされるか
医学部入試の特色は、大学ごとに出題傾向が大幅に異なるということです。そのため、基礎学力がある程度固まっている既卒生は、できるだけ早めに志望校を決めて、出題傾向に即した勉強を進めることが大切になります(当然のことながら、基礎学力に自信がない場合は、その強化が先決です)。
志望校を決める際に、どのようなアドバイスが行われているか、予備校選びの重要なポイントになります。最も望まれるのは、「生徒一人ひとりの得意・不得意分野」と、「各医学部の入試問題の形式、内容」を踏まえて、その生徒が高得点を取りやすい大学、つまり入試問題との相性が良さそうな大学を、志望校の候補として示してくれることです。当然、最重視すべきは、その大学の教育内容なわけですが、自分が想定していた志望校候補の中に、入試問題の相性の良い大学が含まれていれば、志望校選択の際の参考になるはずです。
とくに既卒生の場合は、相応の学力は備えていても、入試問題との相性が原因で、不合格になったケースもありえます。相性は自分では分からないことも少なくなく、プロの講師に客観的にアドバイスしてもらうことが大切です。
志望校が決まった後は、出題傾向が近い医学部を紹介してもらいましょう。併願すれば、効率よく勉強を進めることができ、合格可能性が高まります。
入試問題との相性を的確に助言してくれる予備校かどうか、それを判断するために、入試問題の分析体制も調べておきましょう。
多くの予備校では、ベテランのプロ講師を中心として、「入試問題分析チーム」を編成しています。大学ごとに担当する講師を決めて、入試問題の分量、難易度、頻出分野、解答方法などを詳細に分析しています。それによって、生徒一人ひとりの志望校の類似問題が豊富に提供できますし、出題のクセに応じた失点しない答案作りのアドバイスも可能になっています。
地方出身の既卒生は 専用寮などの住環境も重要
地方出身者で、都市部の予備校に通いたいと考えている既卒生にとっては、住環境も重要な課題になります。
そんな生徒のために、専用寮を用意している予備校もあります。最近では、自宅から通学可能であっても、「通学時間がもったいない」「夜遅くまで予備校で自習するので、帰り道の治安を考えると、寮の方が安心」といった理由で、入寮するケースも増えています。
専用寮に入れば、規則正しい生活が送れ、受験勉強に専念できるメリットがあります。管理栄養士が献立を作り、食堂で決められた時間に温かい食事を提供するなど、寮生の食の充実に力を入れる予備校も見られます。
食事の問題は、通学生にとっても重要です。現役生は夕方や夜間に授業を受けますし、既卒の通学生も夜間指導が半強制になっていますから、それらの生徒の夕食がおろそかになってはいけないからです。そのため、寮生用の食堂を、通学生も利用可能にしている予備校もあります。