医学部に強い中高
2025.06.16
【暁星中学・高等学校】
医学部志望者が集まることで
切磋琢磨できる環境が生まれる
キリスト教に基づく価値観を身につけることを核とする全人教育をめざしている暁星中学・高等学校。卒業生は幅広い分野で活躍しているが、例年医学部志望者が多く、医学部進学率も高い。今回は、医学部に今春現役合格した三橋夏生さんと、彼の学年を6年間持ち上がった大橋淳一郎先生に暁星の教育について伺った。
【写真左】 大橋 淳一郎先生
【写真右】 三橋 夏生さん
ミサや宗教の時間を通して 倫理観の土台を身につけた
──三橋さんは、小学校から暁星ですが、小学生の目には暁星中学校はどんな風に映っていたのですか。
三橋 小学校の校則がけっこう厳しめだったため、中高の先輩方を見ていると、もう少し自由さがあるように感じて、のびのびした中学校ではないかと思っていました。
大橋 それほどやさしくはないとは思いますけど、厳しすぎもしない中庸な感じではないですかね(笑)。
三橋 ただ、小学校が厳しかったので、それに比べたら自由かなと思ったのかもしれません。
──中学校で、何か特色がある授業を覚えていますか。
三橋 1つは宗教の授業が毎週1時間あることだと思います。キリスト教の基本である隣人愛の大切さについて考える授業で、社会の様々な出来事の新聞記事など取り上げて、隣人愛と関連づけた話を伺ったり、みんなで考えたりする授業でした。
大橋 カトリックの洗礼を受けた宗教科の専任教員が担当しています。聖書のなかからキリストの言葉や行動を引いてきては、それが自分たちの生活にどう関わるかとか、どう生かしていけばいいのかなどを教えるような授業です。
──宗教の授業で、今でも印象に残っていることはありますか。
三橋 宗教だけでなく、もう少し幅広く、たとえば人格形成とか人間性みたいなものの大切さに触れるようなこともありました。1つ覚えているのは、高3の1学期に、受験をする自分に向けて手紙を書くという授業がありました。その手紙は先生が回収するのですが、2学期に再び返却されて読み返し、自分を改めて見つめ直すような時間がありました。
大橋 キリスト教が大切にしている他者理解の前提としての自己理解を深めるような取り組みです。
入学式等の式典でミサを捧げます。この他に年に1回の学年ミサや希望者対象の朝ミサ(毎週火曜)も行っています。
──礼拝のようなものもあるのでしょうか。
三橋 毎日は行いませんが、年2~3回くらいはミサを行っていろいろな方のお話を聞く機会がありますし、中1はもう少し多めにミサの機会を設けています。
大橋 全員で行うミサや学年でやるミサのほかにも、希望者が火曜日に集まるミサもありました。医師が患者さんに寄り添うときには倫理観に裏打ちされた行動が求められるわけで、ミサと宗教の時間を6年間積み重ねたことで、医師に求められる重要な資質の基礎を作ることができたのではないかと思っています。
世界観を広げられた フランス語の授業
中学校ではフランス語が必修です。英語とフランス語の一方を第一外国語(週6時間)、他方を第二外国語(週2時間)として選択します。
──勉強面では特色あるプログラムはあるのでしょうか。
三橋 フランス語の授業が中学3年間は必修になっていることでしょうか。週6時間は英語、それに加えて週2時間フランス語を学ぶことになっています。高校になるとフランス語は選択制になるため、僕は選択しませんでした。
──フランス語を学んだことは、その後の三橋さんに活きていますか。
三橋 英語とは別にもう一つ外国語を学ぶので、大変といえば大変です。しかし中学生の段階で英語以外の外国語を学ぶ機会は限られますから、英語圏とは異なる文化に触れ、世界観を広げるという意味できっと僕の血肉になっていると思います。
──6年間の学校生活のなかで楽しかった思い出はありますか。
三橋 正直、部活がいちばん楽しかったですね。陸上部に所属して短距離を専門にしており、青春はほぼ部活だったといっていいかもしれません。部活がある週4日間は終業から下校時刻の午後6時までずっと練習していました。
──部活に打ち込んだことで得られたことはありますか。
三橋 短距離は、たとえば100mの記録を6年間で1秒縮められるかどうかという競技です。その意味で日々の練習の努力の成果を感じづらい競技だとは思いますが、みんなと協力して努力するという経験は、自分にはとても大きなものでした。
コツコツ努力する 地道な努力が花開いた
──医師をめざすようになったのはいつ頃からですか。
三橋 両親共に医師だったということや、持病があり幼少期から高校まで通院していたことなどから、医師と触れ合う機会が多く、自然に医師になりたいと思うようになりました。暁星には医学部志望者が多いため、医者をめざしやすい環境にいたことも大きかったのではないかと思います。
大橋 例年、理系の半分くらいは医学部志望で、人数でいえば4~50人ほどは医学部をめざしています。
三橋 模試の成績をみんなで見せ合ったりして、自分に何か足りないのかを自覚しながら、勉強できるというメリットを感じていました。
大橋 医師をめざす生徒が多いのは事実ですが、学校としてその方向に向かわせているわけではありません。むしろ、まわりに流されず、あえていろいろな世界を見せてあげる方向でキャリア教育を組み立てています。
三橋 それは僕も感じていました。医師をめざす人はある程度の規模でいますが、だからといって医学部志望者用の授業もありませんし…。
大橋 たとえば私立理系の生徒が履修する国語の授業のなかで小論文を指導することもありますが、医学部志望者向けではなく、幅広いテーマを提示するようにしています。
──先生からみて、三橋さんはどんな生徒だったのでしょうか。
大橋 非常に真面目で、地道に努力できる生徒だったという印象を持っています。
三橋 定期テストではクラス内の順位が出ますし、長期休暇後に行われる実力テストでは学年の順位が発表されるため、いい順位を取りたいと思って勉強してきたことが積み重なっただけという感じです。確かに、受験期に一気にガーッと勉強したということもありませんでした。
文武両道を推奨し 必要なら全力で応援
──筑波大学医学群に推薦合格されていますが、なぜ推薦入試を選択したのですか。
三橋 高3のはじめに評定を計算したところ思っていたよりも良かったため、そこで初めて推薦を意識しました。10月に3名の推薦枠に入ることができ、その後、学校からの対策プリントなどで勉強しました。3人でLINEグループを作って協力しながら合格をめざしました。
──面接対策は学校として行っているのでしょうか。
大橋 面接希望者を募り、必要な教員を確保してそれぞれに割り振って練習をしてもらうという形が基本です。その場合も医学部志望者だけを特別扱いするようなことはしていません。小論文などは国語の教員が個別に面倒をみる場合もあります。
──医学部合格を果たした三橋さんからみて、暁星で良かったと思うことは何でしょうか。
三橋 暁星は勉強も部活も両方頑張るということを推奨している学校だと思います。その意味ではできる限り頑張る、努力するという力を鍛えられたのではないかと思っています。
大橋 部活にのめり込む生徒は多く、それも頑張って勉強も頑張るというのは、高校生の当然の姿として求めているところはあります。
──最後に読者にメッセージをいただけますか。
大橋 先ほども少し触れましたが、学校として医学部進学に特化しようとしてはいません。あくまでも中高生として学ぶべき科目をすべて学び、しっかりした土台を持った人間を育てたいと思っています。医進コースを持つ学校とは違いますが、いろいろな選択肢なかで本人にとって最適な進路が医学部ならば、それを全力で応援するというスタンスで今後も指導していきたいと思っています。
2025年医学部合格実績(卒業生170名)
※本記事は『日経ビジネス 特別版 SUMMER.2025〈メディカルストーリー 教育特別号〉(日経BP社)』に掲載されたものです。
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