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医学部に強い中高

2019.06.20

【川崎医科大学附属高等学校】
卒業生の9割以上が医学部に合格!医科大学附属高校の圧倒的な強み

校長 新井 和夫 先生
校長 新井 和夫 先生

全寮制で、1学年の定員35名の少人数体制のもと、卒業生の9割以上が医学部合格を果たしている川崎医科大学附属高等学校。単に高い学力を培うだけでなく、附属校の強みを生かして、大学と連携して、医師をめざすモチベーションを高める教育が充実している。具体的な教育の特色を、新井和夫校長に伺った。

全寮制の環境で豊かな人間性が育まれる

『川崎医科大学附属高等学校』は、1970年(昭和45年)、川崎医科大学開学と同時に誕生した。全国で唯一の医科大学附属高校である。開校の目的を、新井和夫校長は次のように語る。

「創設者・川﨑祐宣がめざしたのは、高校から大学までの9年間一貫教育を通して、良医を育てることでした。受験勉強に縛られず、豊かな人間性や体力も涵養する、バランスのとれた教育を実現しています」。

人間性を育む上で、多大な役割を果たしているのが全寮制だ。

生徒は全国各地から集まっており(現在、70人のうち68人が県外出身者)、それまで異なる環境で過ごしてきただけに、ときにはぶつかることもある。それを克服するために、コミュニケーションを図り、他者との距離感のとり方を身につけ、良好な人間関係を築いていく経験は、医師になってからも必ず役立つはずだ。

医学部合格という共通の志を持つ者同士、常に切磋琢磨できる環境で学べることにも大きな意義がある。

学習環境はもちろん、生徒の日常を支える生活環境も充実している

校舎外観

校舎外観

食堂

食堂

女子寮外観(男女共に個室)

女子寮外観(男女共に個室)

大学との連携で展開される「ドクターロード」

川崎医科大学と連携した教育プログラムも豊富だ。とくに、1・2年次の総合的な探究の時間で展開される「ドクターロード」では、多彩な取り組みが見られる。

「この授業の最大の目的は、医師をめざすモチベーションを高めることです。また、医学部や医療現場の実態に触れることで、自分の将来像をイメージさせるキャリア教育の意味合いもあります」(新井校長)。

いくつか具体例を紹介しよう。「MM見学」は、川崎医科大学の現代医学教育博物館(MM)の見学を通して、医学への関心を高める。「医師へのインタビュー」は、川崎医科大学附属病院の医師に1対1でインタビューする。「メディカルスクール・アワー」は、大学教員が、大学で学ぶ内容をアレンジして講義する。最先端の医療現場を知る「附属病院見学」、研究活動の一端に触れる「医科大学体験実習」、関連法人の社会福祉施設を訪問する「旭川荘研修」もある。卒業生の体験談を聞く「卒業生講話会」も好評だ。「テーマスタディ」は、3~4人のグループで、テーマを設定して、調べ、実験・観察し、課題を解決する力を育んでいる。

「これらの活動では、必ずレポートを作成させますが、一生懸命取り組んでいることが分かる記述になっています。アンケートによると、生徒の満足度もきわめて高く、『医師にはどのような力が必要になるのか分かった。今から意識して身につけるようにしたい』といった声も聞かれます。未来に夢を抱き、成長しようとする生徒たちの姿を頼もしく感じています」(新井校長)。

MMレポート

MMレポート

医科大学体験実習

医科大学体験実習

MM見学

MM見学

旭川荘研修

旭川荘研修

医師へのインタビュー

医師へのインタビュー

テーマスタディ発表会

テーマスタディ発表会

放課後の補習や夜間の特別指導も充実

もちろん、知識の習得もおろそかにはしていない。

「一般的な普通科進学校は、2年次から文系、理系のコースを選択します。それに対して、本校は全員が医学部志望者なので、入学直後から理系に特化したカリキュラムを編成しています。国語、地歴・公民の単位数は少なめで、その分、数学、理科、英語の単位数を多く設定しています。特に理科は物理、化学、生物の3科目を必修にしています。いずれも医学部に入学してから必要な科目だからです」(新井校長)。

また、平日は週3日、放課後の1時間、土曜日は午後2時間、補習も実施される。さらに、夜7時15分から10時半まで、多くの生徒が「学習室」の個別ブースで勉強する。ここには毎日、交替で教員を配置しているほか、夜間指導専門の外部講師もおり、遅れ気味の生徒には、補習などを行っている。また、生徒は分からないところが出てきたらすぐに質問ができる。

こうした特色ある教育によって、生徒たちは最後まで医師志望を貫いていく。川崎医科大学の特別推薦入試も大きな魅力だ。結果として、開校以来の卒業生1689人のうち、実に90・4%に当たる1527人が川崎医科大学に合格している。驚異的な実績といえよう。

しかも、出身地域が多様なことから、医師になった後は全国各地で活躍している。その人脈ネットワークは、将来、大きな財産になるに違いない。

卒業生からのメッセージ

川崎医科大学附属病院 救急科 医師  山田 祥子さん
川崎医科大学附属病院 救急科 医師 山田 祥子さん

少人数制のアットホームな雰囲気のもとで医師として大切な人間関係の築き方が身についた

医師である父の強い勧めで、川崎医科大学附属高校に入学した頃は、「医師になりたい」という強い思いはありませんでした。それでも3年間頑張って、医学部に合格できたのは、アットホームで居心地の良い環境だったからだと思っています。

先生方は生徒のちょっとした変化を見逃さず、声をかけてくれます。成績が伸び悩んでいたときは、放課後、マンツーマンで教えてくださることもありました。どの生徒も絶対に見捨てられることはなく、できるようになるまで面倒を見てくれます。私のために、熱く指導してくださる姿に感激し、何とか応えたいと、頑張って勉強しようという気持ちが生まれました。

仲間にも恵まれました。「皆で協力して、一緒に医学部に行こう」といった雰囲気があり、自習スペースで、得意な科目・分野を教え合ったことも、なつかしい思い出です。もちろん、すべての生徒と相性が良いわけではありません。けれども、全寮制で、長い時間を一緒に過ごすのですから、うまく付き合うことが大切になります。

お互いの性格、個性を尊重して、距離感を図ることが得意になった気がします。いま振り返ると、それは医師になる上でも貴重な経験だったと感じます。医師には、苦手な患者を作らず、常に良好な人間関係を築く力が要求されます。私は、どんなタイプの患者さんでも受容できる方なのですが、その感覚は高校時代に培われたものだと思っています。

医師をめざすモチベーションを高める授業が豊富なことも、大きな特色です。「テーマスタディ」では、私たちのグループは、テレビドラマで興味を持った法医学をテーマに選び、さまざまな資料を調べて発表しました。卒業生の講話では、医師としての心構えを学びました。そうした学びを通して、少しずつ医師の仕事の魅力がイメージできるようになりました。

現在は、川崎医科大学附属病院で救急科の医師を務めています。主な業務は、救急外来、救急一般病棟の管理、集中治療室、およびフライトドクターです。フライトドクターとは、119番入電の際に、医師との接触を急いだ方がいいと、消防が判断した場合に、ドクターヘリに同乗して、現場に出動する医師のことです。

私は月約10日担当しており、多いときは1日に5~6件出動することもあります。フライトドクターは、幅広い目配りやきめ細かな配慮が求められる、やりがいのある業務であり、誇りを抱いています。圧倒的に男性医師が多いのですが、今後は、女性医師が増えるように、後進の育成にも力を入れていきたいと考えています。

※本記事は『日経メディカル/日経ビジネス/日経トップリーダー 特別版 SUMMER.2019年6月〈メディカルストーリー 教育特集号〉(日経BP社)』に掲載されたものです。

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