医学部に強い中高
2022.07.21
【北嶺中・高等学校】国公立医学部医学科に過去最多の61名(現役46名)が合格
医学部に特化したプログラムで
知性と人間性に優れた
次世代で活躍できる医師を育成
札幌市郊外にある北嶺中・高等学校は、イギリスの全寮制パブリックスクールをモデルにした北海道屈指の進学校だ。少数精鋭のリーダー教育をめざし、1986年に中学校が、1989年に高校が開校。同校の実践する全人教育や、医学部進学に特化した探究プログラム、併設の「青雲寮」の様子などについて、寮監長を兼務する校長の谷地田穣先生に伺った。
質の高い少数精鋭教育で 多くの卒業生を医学部に輩出
「めざすなら高い嶺」をスローガンに掲げる北嶺中・高等学校は、文武両道の全人教育を実践し、次世代のグローバルリーダーを養成する中高一貫の男子校だ。「知(知識)・情(感情)・意(意志)・体(身体)」の調和を重視した取り組みで知られ、知性だけでなく人間性の涵養に力を入れている。たとえば、ラグビーと柔道は開校当初から体育の必修授業。この二つの「校技」を通して、チームプレーや個人技では何が大切かということを学んでいく。また、中1~高2を対象にした「全校登山」では、学年が上がるにつれて難度の高い山に挑み、持久力や忍耐力を養う。
そうした独自の教育の質の高さは、毎年の大学進学実績にも表れている。同校では、第1期生の卒業以来、毎年東大合格者を輩出し続けるとともに、卒業生の3分の1が医学部に進学。卒業生119名が挑んだ2022年春の大学入試では、102名が国公立大学に現役合格を果たし、そのうち東大には理科三類1名を含む6名が合格した。また、国公立医学部医学科の合格者数は61名、そのうち現役合格者数は46名と過去最多を記録。この実績はほかの進学校と比べても突出しており、卒業生に占める国公立大学医学部医学科の現役合格者の割合は全国1位という。
このように、難関大学や医学部医学科に高い大学合格実績を誇る同校だが、その要因は何なのか。校長の谷地田穣先生は、「1学年120名程度の小規模校ならではのきめ細かい指導体制」と「生徒たちの学習意欲を刺激するさまざまな探究プログラム」にあると分析する。
校長 谷地田 穣 先生
小規模校ならではの連帯感が 難関大進学の“伝統”を継承
一つ目の「きめ細かい指導体制」には、豊富な授業時間と多彩な受験対策カリキュラムが挙げられる。中学校の英語・数学・国語は、公立校の約1・6倍の授業時間を確保。理解度をていねいに確認しながら、時間をかけて学習を進めることで、生徒たちの取りこぼしを防いでいる。また、習熟度別授業、放課後講習、長期休暇を利用した講習など、個々の能力に合わせた細分化されたカリキュラムで、難関大学や医学部に対応する高い学力を磨くほか、高3では、「東大理系数学」「医進英語」などの超難関大学講座を放課後に開講。面接試験対策や小論文の添削指導も行う。
小規模校だからこそ育まれる生徒同士の連帯感も、同校の実績に大きく寄与している。たとえば、クラスメイトが定期テストで良い点を取ったり、各種コンテストで表彰されたりすると、それに「追いつけ、追い越せ」と競争心が生まれる。また、部活の親しい先輩が医学部に進学したという吉報を聞けば、「次は自分も」と奮起するというわけだ。同校では、そうした効果を見越して、何事も「全員」で取り組むことを重視している。先に紹介した柔道やラグビー、登山もそうだが、英検®やTOEIC®などの英語能力テストにも学年全員で取り組む。部活動も全員参加だ。谷地田先生は「小規模校ならではの連帯感を、日々の学習や進路決定の動機付けに生かしてほしいと考えています。本校の大学合格実績は、けっして教員が生徒たちに無理に強いたものではありません。みずから進んで難関大学や医学部をめざす空気が〝伝統〟として後輩に受け継がれているのです」と語る。
モデルロケット製作・打ち上げ体験の様子(Sプロジェクト)
メトロポリタン美術館研修(北嶺カルチェラタン)
探究プログラムが意欲を刺激 芸術に特化した試みも開始
谷地田先生が二つ目に挙げた「探究プログラム」も、同校が特に力を入れている取り組みの一つだ。「本物に触れる」ことを主眼に置き、工夫を凝らしたプログラムが数多く用意されている。最先端の医療を知る「北嶺メディカルスクール」、法学への理解を深める「北嶺ロースクール」、グローバルリーダーの育成をめざす「Gプロジェクト」、科学分野の見聞を広める「Sプロジェクト」、マーケティングやファイナンスなどに触れる「北嶺ビジネススクール」、コンピュータ・サイエンス教育を行う「北嶺プログラミングアカデミー」、北海道の自然や歴史を学ぶ「HOKKAIDOプロジェクト」など、多岐にわたるジャンルのプログラムを通して、生徒たちの知的好奇心を刺激する。
なかでも代表的なのが、「北嶺メディカルスクール」だ。同校では入学時点で約3分の2の生徒が医学部を志望している。そうした生徒たちのニーズに応えるべく、医学部に進学した卒業生たちのネットワークを生かし、普段なかなか見ることのできない手術現場の見学や、訪問診療研修、離島(Dr.コトーキャンプ)やへき地(赤ひげツアー)での医療研修などを企画。また、学年全員でハーバード大学メディカルセンターを視察し、授業を受けるほか、医師の卒業生による講演会なども頻繁に開催し、医師という仕事をさまざまな角度から学ぶ機会を設けている。
谷地田先生は、「教科や領域にとらわれないこれらの取り組みが、生徒たちの学習意欲を刺激し、高い大学合格実績につながっていることを実感しています。今後もさまざまな分野から『本物に触れる』機会を作っていく予定です」と語る。
その一つが、今年度から新しく始まる「北嶺カルチェラタン」だ。「カルチェラタン」とは、フランスのパリに実在する学生街。「実際のパリの街並みのように、さまざまな芸術や文化を身近に感じる時間を提供したい」という思いを込めて命名したという。このプログラムでは、関西フィルハーモーニー管弦楽団に属する本校OB向井航氏のチェロ演奏を聴いたり、メトロポリタン美術館やニューヨーク近代美術館などの著名な美術館で、絵画や彫刻を鑑賞したりする機会を用意。さらには、能や狂言などの古典芸能に触れ合うなど、硬軟織り交ぜたプログラムを予定している。
設備充実の新寮棟が完成 次年度から特待生入試をスタート
同校では、遠方からの生徒を対象に、学習支援体制を整えた生徒寮「青雲寮」を併設している。全校生徒の約45%が寮生で、出身地は北海道内が3分の1、本州出身者が3分の2となっている。中1~高2は2人部屋、高3は個室で生活する。
青雲寮には12名の寮教諭が在籍し、学校で5~7時限目の授業を担当した後、寮生の学習サポートも行う。また、北大医学部生や大学院生、札幌医大生、現役医師など30名の卒業生チューターがシフトを組み、毎日3~4名体制で巡回指導を行うほか、個別指導を担当する専属のスタッフなど21名の職員が常駐。さらに、全学年対象の夜間講習や、外国人講師による英語のワークショップも実施するなど、手厚いフォローが魅力だ。
昨年は、ボルダリングウォールやサウナ、大展望風呂などを備えた新寮棟と、ルーフトップテラスを備えた食堂棟が完成した。新寮棟には、内装や照明が一つ一つ異なる60の寮室があり、2か月ごとの部屋替えで飽きのないよう配慮している。これで青雲寮には240の寮室が設けられ、420名がともに生活できるようになった。
気なる入試については、2023年度から特待選抜入試を開始する。入試の成績上位者を対象に、入学金と授業料を免除すると同時に、返還不要の「奨励金」を月に1万円給付するというものだ。谷地田先生は、「特待選抜入試も一般入試も同一日実施、同一内容なので、受験生には気負わずチャレンジしてほしい」と、優秀な生徒の入学に期待を寄せる。
同校の入試会場は札幌(本校)・旭川・函館・釧路・帯広・仙台・東京・名古屋・大阪の9カ所。また、入試区分は専願・併願A・併願B(一般)・帰国の4種類が設けられ、合格ラインがそれぞれ異なる。事前に学校見学に訪れ、そこで発行された「学校見学証明書」を持っていれば、東京・大阪・名古屋会場でも専願・併願Aでの出願が可能となり、併願B(一般)で受験するよりも有利になる。同校を志望するなら、実際に学校まで足を運び、在校生の様子や学習環境を前もって確かめておくとよいだろう。
1・2階の吹き抜けにそびえるボルダリングウォール
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