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2023.07.14

【広尾学園 医進・サイエンスコース】 本格的な「研究活動」を通して未知なるものに果敢に挑み 医師・研究者としてのマインドを育成

「本科」「インターナショナル」「医進・サイエンス」の3コースを持つ広尾学園。医系・理系分野に特化した医進・サイエンスコースの特長は、医師や研究者としてのマインドを育てる❝本物のキャリア教育❞を実践していることだ。そのねらいは大学進学だけではなく、「医師になる」という志を日々の学習につなげていくことにある。コースの柱となる「研究活動」の取り組みとその意義について、医進・ サイエンスコース統括部長の石田敦先生に伺った。

医進・サイエンスコース 統括部長 石田 敦 先生

「自分の興味・関心を突き詰めて、チャレンジする喜びを体感する

――「医進・サイエンスコース」が開設された経緯について教えてください。

 

石田 共学校となって、生徒の志望進路が変化する過程で、理系分野へのニーズが高まり、理系教育に特化したノウハウを模索するようになりました。医学部医学科や理系学部をめざす生徒に対して、より専門的な学びを提供するには、単に知識を詰め込むのではなく、研究を軸としたプログラムの必要性を感じ、医進・サイエンスコース(以下、医サイ)を開設したのです。

 

――カリキュラムの特色やプログラムはどのようなものですか。

 

石田 医サイの最大の特色は、6年間を通して行う「研究活動」です。中1・2は週1回、中3は週2回、授業の中で「理数研究」として「研究活動」に取り組みます。この「研究活動」のめざすところは、「まだ世界で誰も知らないことにチャレンジする」です。中学では「分子生物」「環境科学」「現象数理」「数論」「医療」の5分野からテーマを設定し、生徒が興味を持った分野・ジャンルに分かれて、自ら研究内容を決定します。最初にテーマを検討する段階でのポイントは、「その分野では研究がどこまで進んでいるのか」を調べることです。

 

 さらに高校では、「植物」「理論物理」「情報メディア」の3分野が加わり、計8分野から選択して「研究活動」を行います。高校では自主的な取り組みが増えるため、生徒は昼休みや放課後を利用して、各自の研究を本格的に進めていきます。

校舎6階には、化学・生物・物理、それぞれ3つのサイエンスラボが並び、大学研究室レベルの設備が揃う

――独自性の高いプログラムですが、その狙いは何ですか。

 

石田 試行錯誤をくり返しながらも、生徒自身が心から「楽しい、おもしろい」と思えるテーマを突き詰めていくことです。設立当初は手探りでしたが、未知なるものにチャレンジする喜びを味わうと同時に、医療や理数的な分野を学ぶ醍醐味を生徒に伝えるには最適な内容だと信じてスタートさせました。このプログラムに取り組んだ生徒たちが想像を超える成果を出すようになり、今では「私たちの方向性は正しかった」と確信しています。

理数教科のおもしろさを体感できる授業を展開

――中学受験の段階で医サイをめざす小学生はどのようなタイプなのでしょうか。

 

石田 純粋に理科好き、算数好きなお子さんが多いですね。医サイの入試問題は算数と理科の配点が高く、出題形式も特徴的です。通常、理科の入試問題は用語を覚えてアウトプットする形式になりがちですが、医サイでは初めて出合うようなトピックスを読んで解く問題が出されます。また、算数の入試問題では途中経過の記述も必要なので、「考えて解くのが楽しい」と実感できるお子さんには向いていると思います。

 

――一般的に、中学・高校で理科に苦手意識を持つ生徒も多いようですが、楽しみながら学ぶ仕掛けや工夫されていることはありますか。

 

石田 暗記を中心に知識を詰め込むスタイルになると、苦手だと感じてしまうのでしょう。また、計算の要素が加わってくると、「難しい」「複雑だ」と敬遠されてしまうのかもしれません。知識の詰め込みへの対応としては、定期試験を「持ち込み可」とし、「1枚のプリントに自分の好きな内容を何でもまとめてきてよい」ということにしました。各自がまとめた内容に基づき、思考力を問う問題を出し、生徒自身が「考えることは楽しいんだ」と感じられるように工夫しています。また、私自身は、数式を用いてより定量的に分析していくことのおもしろさを伝える授業も取り入れています。

大きく成長した卒業生が医療の現場との❝橋渡し役❞に

――大学進学後を見据えて、中学ではどんな取り組みを行っていますか。

 

石田 医学系学部の志望者が増加しているという背景から、そのニーズにしっかり応えていこうと、2021年度から「研究活動」のテーマに「医療」を加えました。医学部に入学した医サイの卒業生が、現在では医師や研修医として現場で働いています。そんな彼らに、医学部入試に向けた学習のポイントや、医大生の学びの実態、医療現場の生の声などを後輩たちに直接届けてもらえる環境が整ったことが大きいですね。今後は卒業生が来校して、自分が医師になるまでのストーリーや、現在の医療現場が抱える問題点、医師をめざす後輩たちは「どんなことを考えながら中高生時代を過ごすべきか」などを語る機会を拡大していく予定です。さらに外部との連携を図り、医療の現場で働く方々に協力いただきながら、現場を知るための高大連携イベントも開催していきます。

病理診断講座での手術室の立ち会いも、「医進・サイエンスコース」から生まれた

病理診断セミナーでは、チームで本格的な病理診断に取り組む

――大学入試に対しては、今後どのように対応していくのですか。

 

石田 「研究活動」と大学受験対策との両立は大切なテーマですが、意欲的な生徒は高2・3でも「研究活動」を継続し、研究成果を学会で発表するまでになっています。それが大学受験でも学校推薦型選抜や総合型選抜で評価され、東大の推薦入試においても医サイから合格者を輩出しています。一つのテーマを研究し、じっくりと学びを深めていくことが、大学入試でも生かされていると実感しています。先取り学習で知識を詰め込む教育にも、確かに一定の効果はありますが、私たち教員は、生徒のすべての時間に関わって教え込むことはできません。限りある時間の中で、考え方や学び方をきちんと身につけることが、長い目で見ると生徒たちの力になると考えていますし、近年の大学入試の傾向を鑑みても、そうした力が必要になってきていると感じます。「研究活動」を通して、自然科学や医療の分野に対峙する姿勢や学び方を身につけたうえで大学入試を突破していく生徒たちや、成長して医サイに戻ってきてくれる卒業生たちを見ると、そういった考え方が間違っていないのだと感じます。

卒業生との交流や高大連携で現場の声を伝える

――医サイの生徒の存在は、他コースにどんな影響を与えていますか。

 

石田 医サイの生徒は外部の研究機関やコンテストなどに積極的に参加し、高い評価を受ける機会も多くあります。全校生徒の前で表彰される姿を見て、他コースの生徒も「同じ学校にこんな研究をしている子がいるんだ」と刺激を受けているはずです。また、大学や企業と連携した講座などは、まず医サイで実績を残してから他コースの生徒まで間口を広げるようにしています。オールイングリッシュで行う理科実験講座は、医サイとインターナショナルコースとの連携で実施しています。

All English実験講座では、医サイ高校生が中学生参加者を指導する

――石田先生は今後、医サイにどのような発展を期待していますか。

 

石田 卒業生による中高生への還元をより充実させたいですね。現在、大学の博士課程に在籍している卒業生が、医サイの「研究活動」で指導してくれています。今後は、このような好循環がより加速し、研究テーマの分野も増えていくと思います。教員だけでは対応しきれないより専門的な内容も、生徒と卒業生が自律的に関わることで、さらに発展する流れができていくと考えています。

 

――医師をめざしている小・中学生と保護者にメッセージをお願いします。

 

石田 中学・高校の時期を、単に医学部合格に向けた筆記試験対策で終わりにするのではなく、医師という職業について理解を深め、現代医療が抱える問題点にも目を向ける期間にして、納得したうえで医学の道を進んでほしいと願っています。理科や算数が好きなお子さんにとって、高い志を持つ仲間に囲まれて過ごす医サイでの学園生活は、とても充実したものになるでしょう。教職員一同、皆さんの夢の実現に一歩近づくためのサポートをしていきます。

※本記事は『日経ビジネス 特別版 SUMMER.2023〈メディカルストーリー 教育特集号〉(日経BP社)』に掲載されたものです。

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