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2021.12.07

偏差値、学費、医師国家試験合格率などの最新データから読み取る「医学部のある大学」(前編)

医学部の人気や受験傾向は社会情勢や国の方針などによって変化することがある。ここでは、合格目標ライン偏差値や得点率、合格者倍率や学費など、各大学医学部のデータを紹介。河合塾麹町校の校舎長である神本優さんに、入試傾向の理解や志望校選びに役立つ医学部情報を伺った。

神本優 河合塾麹町校舎長

志願者数は減ったものの、難易度の変化は見られなかった2021年度入試

昨今、減少傾向にある医学部の志願者。2021年度入試では国公立の前期日程で32人増え、後期日程では294人減となりました。また、18大学のうち10大学では志願者が増加しましたが、私立大全体では9385人減となっています(河合塾調べ)。この結果は、新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑みて、出願校数を抑える動きがあったからだと考えられます。

 

とはいえ、コロナ不況により文系学部の不人気が続くとみられる現状から、今後はこれ以上医学部の志願者数が減少することはないと予想されます。少子化であることから、現在も医学部の人気は他学部に比べて高く、不景気になると資格志向が高まるため保護者からの支持も高い。医学部の人気はウィズコロナの時代でも変わらず、しばらく横ばい状態が続くとみていいでしょう。

 

医師は一般企業に比べ、産休や育休などの制度が利用しやすくなっていることから、女子の志望も増加傾向にあります。大学にもよりますが、志望者の男女比は半々くらいになっています。男女比率は受験科目によって変わる傾向があり、例を挙げると、新潟大学では、共通テストの受験科目の国語の得点比率が半分と低く、国語を苦手としがちな男子が多く受験したため、男子が8割以上になったケースもありました。

 

なお、大学の難易度については、全体的に大きな変化はありませんでした。多くの志願者を集めた大学が、翌年には志願者が減少し、翌々年にはまた増えるという「隔年現象」が起きることはありますが、現状、合格する難しさに影響を与えることはほとんどありません。そうはいっても、依然として医学部は難易度が非常に高い学部であり、どの大学も60以上と、非常に高い偏差値になっています。

 

センター試験が2020年度で廃止され、2021年度入試から大学入学共通テストが導入されましたが、得点率に関しては、これまでのセンター試験とほぼ変化はありませんでした。共通テスト移行後は難易度が上がり、平均点も5割に落ちるという見込みもありましたが、総合型の平均点も少し上昇するなど、当初の予想とは違うものになりました。その理由としては、初年度特有の難易度の低さが挙げられます。共通一次試験でもセンター試験でも、初年度はそのような傾向が見られました。しかし、2年目は難易度が上昇することが予想されますので要注意です。

 

こうした状況もあり、医学部入試の難易度で著しい変化のあった大学はなく、2次試験の問題傾向もこれまでどおりといった所感です。あえて言えば、コロナ禍を意識して、私立大学のほうが問題の難易度を下げる傾向がありました。

 

削減が騒がれた定員については、2023年以降に実施予定です。2022年度から1000人が臨時定員で減少する予定でしたが、文部科学省が申請により定員増を認める方針を示したため、すべての大学の定員が2021年度と同様の水準に戻るといわれています。現在は医師過剰と言われても仕方がない医師数なのですが、コロナ禍ということを考えれば、医師を減らす行為につながる医学部定員の削減はなかなか実行しにくいでしょう。したがってコロナ禍終息後は、今後の人口動態を予想した場合、医学部の定員削減は進んでいくことが考えられます。一方、地方の医師不足は続くと予想されますので、これにあてはまらない可能性があります。

 

2022年度の入試はこうした社会情勢もあり、大きな変更のある大学は見られませんでした。共通テストの内容も、センター試験からこれといった変更はありません。入試改革とはいえ、高等学校の学習指導要領の縛りが強く、抜本的には変わらないケースがほとんどです。しかし、志望する大学の科目の変更や配点、募集人数、応募方法などについては、しっかりとチェックをしておく必要があるので注意してください。

現役生には高卒生とのバッティングを避けられる推薦入試がおすすめ

他学部よりも高い学力が求められる医学部受験。受かりやすい大学の情報を検索する前に、最優先するのは勉強に打ち込むことです。たとえ東京大学と同等の偏差値であっても、東京大学のように、見たことも聞いたこともないような問題で思考力を求められることはほとんどの医学部受験ではありません。どの医学部でも精度の高い基礎力を試される問題傾向となっています。

 

また医学部志願者には、学力以外に、合格のために自分にとって必要なことを見極め、それを常に考えて行動する姿勢が求められます。人柄のよさやコミュニケーション力を求められるのが医師という職業であることから、志願者の人間性を評価する大学もあるほどです。

 

これからは後期日程がさらに減少し、学校推薦型選抜や総合型選抜などの入試形態がクローズアップされていくでしょう。なお、推薦入試では単なる学力だけではなく、協調性も評価され、学校の調査書や評定値が重要視されます。体育や美術、音楽などの受験にはない科目にも懸命に取り組むことができる学生を好む傾向があります。その理由としては、進学後に外科・内科のほかに麻酔科や産科など、さまざまな診療科を経験することから、どんな診療科でもまじめに取り組める学生のほうが医師向きだという考えがあるからです。

 

一般入試では、現役生に比べて多くの勉強時間を費やすことができる高卒生が合格しているケースが多いです。しかし推薦入試の場合は、出願要件が現役生のみといったことも多く、高卒生とのバッティングを避けられますので、受験機会を増やすという意味でも推薦入試を狙うのはおすすめの戦略です。

 

面接試験では、志望動機はもちろん、医療でトレンドとなっている出来事やキーワードについて問われることもあります。昨今の医療に関するニュースなどは確実に押さえておくとよいでしょう。また、受験生のふるまいを観察している場合もありますので、しっかりと人の話を聞く姿勢も必要です。

 

医学部の志願者数は社会の情勢や経済状況などによって大きく影響を受けます。ワクチン接種が進んだといってもまだまだ油断できない新型コロナウイルス感染症や、なかなかよくならない経済状況など、今後の社会のあり方次第では、医学部入試に大きな影響が起こることもありえるでしょう。

旧帝大・旧設大は根強い人気だが、ネームバリューを重視しない傾向も

都市部の大学は「最先端の医療を学べるのでは」という期待感があるため、基本的に高い人気があります。

 

旧七帝大と呼ばれる北海道・東北・東京・名古屋・京都・大阪・九州の7つの国立大学の偏差値は依然として高く推移。長い歴史のある大学であり、加えて国からの豊富な予算やこれまでに積み上げた多くの実績は、医師志望の学生や、充実した研究をしたい学生にとってよい環境が整備されていると言えます。しかし、研修医制度が見直されたことで、昨今の国公立大学志願者は以前よりも大学のネームバリューや歴史、設立経緯などをさほど重要視しない傾向も見られます。

 

私立大学では、旧設大学の人気はゆるがず、難易度が高くなっています。こちらも歴史と伝統を備え、さらにOB・OGの医師が多く、広いネットワークがあることなども強みとして挙げられます。難易度の高い問題を出題する大学ばかりではないのが私立大学入試の特徴。基礎学力とスピード力を問う大学もたくさんあるため、過去問研究の必要性があります。

 

旧帝大や慶應義塾大学などの難関大学ほど、現役での合格率がよい傾向も見受けられます。低学年から大学受験まで学習の積み重ねをしっかりとしてきた学生は、やはり医学部入試においても安定した実力を発揮できることがわかります。

地域に貢献する気持ちが問われる「地域枠」という選択肢

「地域枠」とは、医師として活躍する素質をもち、地域医療に貢献したいと考える学生を選抜することを目的としている制度です。大学卒業後に地元で一定期間医師として就労することや地元出身などといった条件はあります。しかし、受験できる学生が絞られるため、医師として地元で働きたい学生にとても有利な制度と言えるでしょう。なお、地方では地域枠推薦入試の定員を増やす傾向があり、学生の都市部一極集中化に歯止めをかける一手としても期待されています。

 

地域枠の面接では、地域特有の医療事情についての知識や、地域医療に対して将来どのように貢献していきたいかなども問われます。面接を通して、大学側は受験性が地域に残って医療に貢献する覚悟の有無を確認するのです。

 

地方在住の受験生にとっては、合格しやすい医学部は地元の大学にあると言えます。特に地域医療を活性化させる目的で設立されている地方の新設医学部が狙い目ですので、そういった大学の面接では地元出身であることをアピールしたほうがよいでしょう。

 

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