医学部 塾・予備校活用ガイド
2021.12.15
偏差値、学費、医師国家試験合格率などの最新データから読み取る「医学部のある大学」(後編)
医学部の人気や受験傾向は社会情勢や国の方針などによって変化することがある。ここでは、合格目標ライン偏差値や得点率、合格者倍率や学費など、各大学医学部のデータを紹介。河合塾麹町校の校舎長である神本優さんに、入試傾向の理解や志望校選びに役立つ医学部情報を伺った。
神本優 河合塾麹町校舎長
コロナ禍で変動する学費。教育内容や奨学金等も検討材料として活用しよう
志願者の多い大学医学部の傾向として、学費の低さが挙げられます。2008年に学費の6年間総額を約900万円下げた順天堂大学は、立地などの好条件も揃ったことから人気が高まっています。医学部が2017年に新設された国際医療福祉大学も人気です。6年間で約1920万円と私立大学医学部の中で最も学費が低く、さらに著名な教授も所属しており、一線級の医療が学べるといったことも一因でしょう。
その反面、学費を上げる大学もあり、昭和大学の医学部では、2020年度入学者に関して6年間で500万円の値上げを実施。東京女子医科大学では2021年度入学者から6年間で1200万円以上の値上げをし、出願者数が著しく減少する結果になりました。値上げはコロナ禍で病院経営が厳しいことが理由の一つとして考えられます。ただし、値上げをしている大学でも、学習内容の充実を図っているところもありますので、内容をよく確認した上で志望校の選択をするとよいでしょう。
以前に比べて、各大学や自治体からの奨学金制度の充実も見られます。しかし、卒業後の返済が必要になる場合も多いので、事前の要項確認は必須です。
合格後のトラブル回避のためにも、卒業までの学費をしっかりとチェック
国立大学どの大学も一律同額の学費です。公立大学は大学により若干異なりますが、大きな差はありません。その一方、施設設備費や実習費、教育充実費などの費用が異なる私立大学は、各大学の6年間の総額が支払い可能かを検討しておくことが必要です。
国公立大学と私立大学では支払う金額に大きな差があります。私立大学では6年間の学費は約2000万~5000万円と幅が広く、場合によっては私立大学に現役で進学するよりも、1年間浪人を経験して国公立大学に進学したほうが結果的に費用を抑えられることもあります。なお、任意にはなりますが、私立大学の中には寄付金を求められるところもあるので注意が必要です。
学費が継続して支払えずに退学してしまうことは、せっかくの努力が水の泡となり非常に残念なことです。支払いが難しいことを受験生が知らずに受験校を決め、結局、受験校の変更を余儀なくされて受験生が動揺してしまうという例や、コロナ禍での収入減で、国公立大学しか進学できない家庭があるということも聞いています。学費に関しては、6年間で3000万円以下の大学を目安として選ぶなど、家庭内でできるだけ早く検討し、学費の上限を決めておくことが望ましいです。
国家試験の結果に影響するのは大学の合格率よりも本人の努力
各大学によって大きく異なるのが医師国家試験の合格率。第115回試験(2021年実施)においては、トップが自治医科大学の合格率100%であり、医師国家試験合格に対しての意識の高さが見て取れました。しかし、旧七帝大をはじめとする難関大学の合格率が必ずしも高いという結果とはなっていません。
医師国家試験の合格率は教育の充実や学生の優秀さを反映しているわけではありません。大学には医師だけではなく、研究職などを選ぶ学生や、留年によって医師国家試験を受験することができない学生もいます。医師国家試験の合格率は、すべての大学が同条件で算出したデータではなく、この数値だけで大学選びをすることは推奨できません。
高い偏差値の医学部は入学する際の水準が担保されており、どの大学でもしっかりとした教育がなされています。そのため、入学後の努力が医師国家試験に合格の可否につながるのです。大学受験を超えるほどの厳しい道のりとなりますが、入学してからも学び続けることが求められます。