医学部 塾・予備校活用ガイド
2024.01.23
【医学部予備校 富士学院】高校や大学からも信頼される 医師になる準備を行う教育
高い合格実績で知られる大手医学部予備校の富士学院。受験学力のみならず、医師になる覚悟を促し、医師に必要な資質を磨く教育は、高校や大学からも厚い信頼を得ています。教育にかける思いを村田慎一学院長に聞きました。
医学部受験 富士学院 学院長 村田 慎一 氏
各界の方々が 教育理念に賛同
大学からのご依頼を受け、医学部や医科大学のオープンキャンパスで入試対策講座を行っています。
──富士学院には、予備校としてはめずらしく卒業生のOB会があるそうですね。
名称はシンプルに「富士OB会」といいます。予備校時代のことはあまり話したがらない人が多いなかで、富士学院の出身者は、大学入学後も医師になってからも、予備校を接点とした人間的つながりを保っています。ここで学んだことが、それぞれの人生の中で大きな意味を持っていると感じてくれているのだと思います。
──上皇陛下の心臓冠動脈バイパス手術の執刀医として知られる、順天堂大学医学部心臓血管外科特任教授の天野篤先生は、富士OB会の顧問だそうですね。
先生ご自身は富士学院出身ではありませんが、教育理念に賛同してくださり、応援いただいています。今年は、富士学院の全国10校舎全てで、「自立講座」の一環として講演をお願いしました。普段の勉強が医師になったときに必要とされるスキルと連動していることや、受験校の選び方、国内外の医療現場の現状などを伝えていただきました。受講生にとっては、医師になるというモチベーションを高める上で、非常に大きな刺激になったと思います。
人間的な成長を促し 医学部合格につなげる
上皇陛下執刀医を務めた順天堂大学医学部 天野篤特任教授による、医師になるという自覚を高めるための意識付け「自立講座」を各校舎で行いました。
──天野先生が賛同された富士学院の教育理念とは、どのようなものでしょうか。
富士学院は、医学部予備校である前に、本質的な意味での教育機関でありたいと思っています。教育は「教え」「育む」と書きますが、医学部受験に必要な知識を「教え」るのと同時に、医師として活躍するための人格的な基礎を「育む」ことを強く意識しています。
──どのようなプログラムで理念を具現化しているのですか。
個別のプログラムがあるわけではなく、日々の指導や一つひとつの業務すべてで、受講生を「育む」ことにつなげています。その一例が入学早々から行う面接指導です。
医学部入試は、単なる大学入学試験ではなく、医師になることを前提とした就職試験でもあります。だからこそ全ての医学部が面接試験を導入し、医師になる資質を確認しているわけです。
にもかかわらず、面接は二次試験で実施されるため、一次試験対策をまず優先し、面接指導は後回しになりがちです。 しかし富士学院では入塾と同時に面接指導がスタートし、年間を通じて何度も繰り返します。また、新聞記事をテーマに要約したり、自身の意見をまとめたりする新聞視写を毎日実施します。こうした日常化された努力を通して、医師になる自覚と覚悟を促していきます。
様々な取組みを実践していく中で、各受講生がそれぞれに人として大きく成長を遂げていくことになります。どんなに優秀な講師と教材が揃っていても、最終的には本人が本気にならなければ医学部に合格するのは難しいのが現実です。本人を本気にさせる、つまり医師を目指す強い覚悟をいかに育めるかが、合格への大きなポイントになってきます。
受験校に合わせて チーム体制で指導
生徒一人ひとりに担任講師と担当教務が付き、指導する各科目の講師と共に「チーム」をつくり、課題点や指導方針を共有し、指導を行います。
──医学部入試では高い学力が求められます。どのような指導体制になっているのでしょうか。
富士学院の特色は、チーム指導体制にあります。受講生1人に対して担任講師、各教科(英語、数学、理科2科目、国公立は国語、地歴・公民も含む)の担当講師、教務担当職員、校舎長の7名以上がチームを組み、生徒も交えて定期的にチーム会議を開催しています。チーム会議では生徒の現状を把握すると共に、今、力を入れるべき学習は何かを全員で情報共有し、チーム全体で向かうべき方向を決めていきます。
一口に医学部入試といっても、大学によって出題傾向や配点比率、難易度は異なり、合否を判定するポイントも違います。合格する可能性を少しでも高めるためには、各科目の勉強の量や内容を調整する必要がありますが、それを受験生が一人で行うには限度があります。そうした部分も含めて、チーム全体でサポートしているわけです。
──具体的にはどのようなチームサポートがあるのですか。
予備校の講師は、自分が担当する科目の力を高めることが仕事ですので、当然相応な量の学習を求めがちです。しかし生徒の学力状況によっては、例えば「この時期は苦手科目の英語に力を入れた方がいい」ということも出てきます。そうなると、他の科目の課題などの学習量を減らす必要がありますが、チーム指導体制であれば、講師間でその調整を行うことが可能です。実際、富士学院ではそうした科目間の調整が頻繁に行われています。
受験する大学を選択する際も、チーム指導体制は大きな効果を発揮します。生徒の学力は科目ごとにそれぞれで、英語はA大学の方が向いているが、数学はB大学の方が合っているという場合はよくあります。ですから、いろいろな大学の入試問題を把握した上で、科目ごとに生徒との相性を細かくチェックし、チーム内での議論によって最も合格の可能性が高い受験校を選び出し、必要な学習対策を講じています。
医学部合格に向けて 高校現場とも連携
医学部現役合格を目指すサポートの一環として、全国の高等学校と連携し「医学部入試研究会」や「校内医学部入試セミナー」も行っています。
──高校での入試セミナーにも力を入れていらっしゃいます。
富士学院の理念である「育む」教育の一環として、全国の高校と連携し、ご依頼のあった高校で「校内医学部入試セミナー」を実施しています。医学部入試の現状を解説した後、面接や小論文の重要性、合格に直結するポイント、合格事例などを紹介しています。また医師という仕事の素晴らしさややりがいなどを、実例等を交えて伝え、医学部受験に向けた意識喚起も行っています。
これらはすべて富士学院で行っている日頃の指導の延長です。校内セミナーは、生徒だけを対象にしたものから、保護者を含めて行うものなど、高校と相談しながら進めていますが、いずれも大きな反響を呼んでいます。
また、大学からの依頼を受け、オープンキャンパスや大学の公式サイトなどで、入試問題の過去問解説などを含む「入試対策講座」を行っています。これまで、久留米大学医学部・藤田医科大学・東海大学医学部・愛知医科大学・昭和大学医学部で実施しました。また、2021年度からは、昭和大学と連携し、医学部・薬学部・歯学部・保健医療学部の4学部の推薦合格者を対象に入学前準備教育も行っています。高校や大学とのこうした信頼関係は、予備校の信頼性を高める重要な要素にもなっていると思います。
──具体的にはどのような反響が寄せられているのでしょうか。
実際のアンケートを読んでいただくのが一番でしょう。学院のパンフレットにも掲載してありますが、一例として高校の先生のアンケートを紹介します。
「モチベーションは行動の源泉です。今回の講演を通して子どもたちの心が変化しました。『よしやるぞ』という思いに満ちていました。高校2年生の医学部志望の生徒たちに、医師を目指す『覚悟』が生まれました。なぜ学ばなければならないのか。なんのために学ばなければならないのか。日々の学習に彩りを与えていただきました。先生方の心にも火がつきました。医師として国家を支える生徒たちを導く使命感。講演を聞いた全員が自分のやらねばならないことを考えさせられました」
──富士学院を、単なる受験予備校としてではなく、医師育成につながる教育機関だと認識しているわけですね。
高校側の期待としては、医学部受験に関する豊富で詳細な情報の提供と、生徒へのモチベーション強化が大きくあるのだろうと思います。医学部に進学する生徒は限られますから、全国の医学部、医科大学の状況を進路指導の先生が網羅するのは大変です。富士学院は全国10校舎がすべて直営ですから、全国の情報が質量ともに均一にとれるという大きなメリットがあります。いずれにしても、これまで富士学院が積み重ねてきた教育が、高校の先生方に評価されているのだと感じています。
こうしたセミナーの他にも、高校の進路指導部担当教員向けの「医学部入試研究会」を校舎単位で開催しており、2023年度は全国142校の進学校にご参加いただきました。また、県外から生徒と保護者、先生がバスで校舎見学に来た高校もありますし、医学部志望者向けの保護者会を富士学院の校舎で行う高校もあるなど、高校と予備校の枠を超えた連携が始まっています。
毎年200名を超える「合格体験記」「保護者の声」をいただいています。詳しくは、学院公式サイト又はパンフレット別冊子をご覧ください。
大学内での入試対策講座や 入学前準備教育も担当
──高校に加えて、大学との連携も進めていらっしゃいます。
各大学のオープンキャンパスで、その大学の入試問題の解答・解説を富士学院の講師が行う「入試対策講座」を毎年行っています。23年度は東海大学医学部、藤田医科大学、久留米大学医学部を会場来場型で、愛知医科大学をWEB録画配信型で実施しました。
また昭和大学では、医学部だけでなく薬学部、歯学部、保健医療学部のすべての推薦入学者に対して行う、入学前準備教育を富士学院が担当しています。
──医学部予備校の概念が変わりそうですね。
富士学院の目標は、究極的には医学部進学を経て良医になる人をできるだけたくさん育てることにあります。であるならば、各校舎で受け入れている受講生を「育む」ことはもちろん、全国の医学部進学を目指す中高生や医学生にも、できるだけ良医への道を歩んでもらいたいと考えるのは当然です。
連携を深めることによって、富士学院の教育理念と具体的な成果が正確に伝わりますから、より意欲的な受講生の確保につながりますし、情報をより多く発信するところに情報が集まるため、連携の深化は学院としての発展にも寄与しています。今後も、高校や大学などと連携しながら、医師を志す人をあらゆる側面からサポートする教育機関であり続けたいと思っています。
※本記事は『日経ビジネス 特別版 WINTER.2024〈メディカルストーリー 入試特集号〉(日経BP社)』に掲載されたものです。