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Doctors' File 〜医師語一会〜

2017.12.14

【坂部 貢 先生】総合大学の強みを生かして科学とヒューマニズムの融和を図り「良医」の育成を目指す

東海大学医学部医学科では、わが国有数の大規模総合大学ならではのメリットを生かした教育・研究が展開されている。他に先駆けてクリニカルクラークシップを導入するなど、教育改革にも積極的に取り組む大学として定評がある。坂部 貢 医学部長に、教育の特色と今後の方向性などを聞いた。


全学部必修の「現代文明論」で幅広い学問への視野を広げる

─東海大学の建学の精神、教育理念からお聞かせください。

坂部 創立者の松前重義博士は若い頃、ヨーロッパの大学を視察する中で、ユニバーシティすなわち真の総合大学になるためには、神学、法学、医学、理学が学べる環境を整えることが大切になるという信念を抱きました。とりわけ神学、法学、医学が重要だと考えたのですが、その3つに共通するのは、人を対象とする学問であり、人の幸せを追求する学問だということです。そこで、東海大学は真の総合大学を目指して、それらの学問を学べる学部を設置していったわけです。神学部だけは設置されていませんが、内村鑑三のキリスト教精神が教育の根幹に据えられています。

 そして、松前博士は全学を貫く教育理念として「調和のとれた文明社会を建設する」という高い理想を掲げ、「若き日に汝の思想を培え 若き日に汝の体駆を養え 若き日に汝の智能を磨け 若き日に汝の希望を星につなげ」の4つの言葉を建学の精神に定めたのです。

─その教育理念を基盤として、医学部ではどのような人材の育成を目指していますか。

坂部 医学部に限らず、東海大学では「科学とヒューマニズムの融和」を重視しています。これも創立者の体験に基づく理念です。松前博士は東北帝国大学を卒業後、当時の逓信省に技官として勤務しました。その中で痛感したのが、文系と理系の文化や思想の違いです。当然、お互いが違和感を持って仕事をしていたのでは大きな成長は望めません。理系の人材も文系の学問を知り、逆に文系の人材も理系の学問に通じて、物質文明(科学)と精神文明(ヒューマニズム)を融和させることができる人材を育成することが重要になるという考えに至ったのです。

 東海大学医学部医学科は、まさにこの「科学とヒューマニズムの融和」を大切にした人材育成に力を注いでいます。高度な知識・技術を身につけるのはもちろんのことですが、豊かな人間性、社会性も兼ね備え、グローバルな視野に秀でた「良医」の育成をモットーにしています。

─「科学とヒューマニズムの融和」を図る授業が開講されているのですか。

坂部 東海大学では全学部必修の「現代文明論」を、最重要科目と位置づけています。医学部の学生も、他学部の学生と一緒に、多様な分野の教員の講義を受けます。それによって視野が広がることが、人間性や社会性を豊かにする上で役立っています。

 また、医学部独自の「現代文明論Ⅱ」では、解剖学、生理学、病理学などの普遍的な基礎医学の成り立ちと歴史を学びます。そうした普遍的な分野をしっかり理解することが、将来、医師としての厚みを増すとともに、伝統を踏まえて新たな発想を生み出すことにもつながります。

1年次の「早期体験実習」でチーム医療の重要性を体得する

─「良医」を育てるための特別な授業もあるのですか。

坂部 学生は、最終的に医師国家試験に合格しなければ意味がありません。そのための授業をしっかり確保しなければなりませんから、「良医」育成に特化した授業を開講する余裕はありませんし、またその必要もないと思っています。大切なのは「良医」を目指す風土が築かれているかどうかです。学生たちは教員の背中を見て育っていくからです。もちろん、各授業の中で、教員は折に触れて「良医」の心を伝えようと努めています。そうした授業にするために、教職員のワークショップも定期的に開催しています。

─授業の中で、専門知識・技術を習得させるだけでなく、ヒューマニズムに関する話も行われているということですね。

坂部 ええ。それから本学部では他に先駆けて「早期体験実習」を導入しています。1年次から大学病院のさまざまな診療科の病棟を回るとともに、看護師、薬剤師、放射線技師など、コメディカルの方々が働いている現場にも接します。早めにチーム医療の重要性を体得することが「良医」の心を育むことにもつながっていると思います。

学生参加型の臨床実習「クリニカルクラークシップ」

─東海大学医学部は、日本の医学部で初めて「クリニカルクラークシップ」を導入した大学として知られています。どのような教育システムなのですか。

坂部 かつて医学部長を務められた黒川清先生が、日本に初めて「クリニカルクラークシップ(診療参加型臨床実習)」を紹介されたこともあって、1998年度から導入しています。それまでの臨床実習は「ポリクリ」あるいは「ベッドサイド・ラーニング」と呼ばれ、学生は医師が治療する様子を見学するスタイルが一般的でした。これでは実践的な力はなかなか身につきません。それに対して「クリニカルクラークシップ」は、学生がスチューデントドクターとして、医療チームの一員に加わる参加型の臨床実習です。学生は毎朝、担当患者を訪問し、何らかの問題が生じていないかをチェックし、その結果をカンファレンスで指導医に報告し、回診にも同行します。学生用カルテの作成も義務づけられています。

─学生の反応はいかがですか。

坂部 知識と技術がバランスよく身につき、成長の手応えが感じられると好評です。医療チームの一員として活動することで、やりがいが感じられますし、医師を目指すモチベーションがさらに高まったという声も聞かれます。

グローバルスタンダードの学びに進化した新カリキュラム

─2016年度から、新しいカリキュラムが導入されました。その目的は何ですか。

坂部 2010年に、米国のECFMGが、世界医学教育連盟(WFME)の認証を受けた医学部を卒業した者のみに、米国医師国家試験の受験を認めると宣言し、本学においては2021年に国際認証評価を受ける予定です。これにより、日本国内の医学部は国際認証に向けた準備を余儀なくされているわけですが、新カリキュラムの導入もその1つです。旧カリキュラムでは1年半としていた臨床実習の期間を2年間に拡大し、解剖実習などの医学の専門科目についても1年次から前倒ししてスタートする形となりました。しかし、実は東海大学では、開設時から専門教育を1年次に行ってきましたし、過去に臨床実習が2年間あった時期もありましたので、これまでの本学での医学教育を踏まえれば、それほど大きな違和感はないのではないかと思います。

 また、新カリキュラムの導入と並行して、ハワイ大学医学部教員をはじめとした国際経験豊富な現職医師が、実践的な医学英語、米国式臨床実習準備プログラム、米国式臨床研修病院での実習の機会を提供する、ハワイ医学教育プログラム(通称:HMEP)が始まりました。英語のコミュニケーション能力が強化されるとともに、グローバルスタンダードな医学教育が受けられる体制になっています。

 さらに、現在、東海大学全体として、グローバル人材育成のために「自ら考え、集い、挑み、成し遂げる力を持った人材」を育てる教育を強化しています。そのために、どの科目でどのようなコンピテンシー(到達目標・必要とされているスキル)を高めるのかが分かる表を作成するとともに、シラバスにも明示しています<資料参照>。それによって、この科目の学びを通して、自分にどんなコンピテンシーが身につくのか、学生が意識しながら授業を受けることができます。

他学部との連携が活発化広がりのある教育・研究が期待できる

─総合大学の強みを生かした教育・研究を紹介してください。

坂部 真の総合大学のスケールメリットを十分に活用して、他学部との連携が活発です。たとえば工学部には医用生体工学科が設置されており、臨床現場で課題になっていることを工学的な視点で解決する共同研究が進められています。すでに人工臓器の材料開発などで実績をあげています。

 また、東海大学には「スポーツ医科学研究所」が設置されており、医体連携も大きな特色です。大学内では、オリンピッククラスのアスリートも学んでいますので、共同研究を進める上でとても恵まれた環境にあります。もちろん、一般の方々が健康を維持するために、スポーツをどのように活用するのが有効なのかなど、普遍性の高い研究も行われています。

 今後は、医農連携も重要なテーマになります。医食同源という言葉があるように、食と健康には深い結びつきがあるからです。家畜と人の両方に感染する人獣共通感染症への対応も大切な課題といえます。

 さらに、2018年度、健康学部健康マネジメント学科が誕生するとともに、看護学科が医学部に所属する形になります。健康をキーワードとして、これらの学部・学科との連携も進行するはずです。

 このように東海大学医学部では、多様な学部との連携によって、広がりのある教育・研究が期待できるところに大きな魅力があるのです。

─1999年からドクターヘリを運航し、地域の救急医療にも大きな役割を果たしています。

坂部 東海大学がある神奈川県の西部には高度先進医療を行える医療機関が少ないため、広いエリアをカバーする必要があり、ドクターヘリを備えた付属病院に大きな期待が寄せられています。学生たちにとっても、救急医療に関心を持つきっかけになっているようです。

医師になりたいという明確な志望動機が重要になる

─最後に、受験生へのメッセージをお願いします。

坂部 医学部を受験するのなら、まず自分はなぜ医師になりたいのか自問自答してほしいと思います。単に成績優秀だからとか、親が医師だからといった程度の理由では困ります。なぜなら、医学部の学びは泥臭い努力が求められ、明確な志望動機がなければ心が折れてしまうからです。一度つまずくと、日々の学びが多忙な分、ネガティブスパイラルに陥りがちです。ですから、入試の面接では、必ず志望動機を聞くようにしています。抽象的な言葉ではなく、具体的な理由を自分自身の言葉で語れるようにしておいてほしいと思います。

 それから、医学部ならどの大学でもいいといった考え方ではなく、東海大学の教育理念に共感して入学することを望みたいと考えています。それが誇りを持って学習を進め、学生生活を充実させることにつながるからです。

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