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Doctors' File 〜医師語一会〜

2017.06.07

【亀田省吾 先生】 多様な価値観を持つ人間が未来の医療を変えていく

亀田省吾 先生

高度な医療はもちろん、最新鋭の施設と究極のサービスで、全国の患者から圧倒的な支持を集めて いる「亀田メディカルセンター※」。その独立型の外来専用施設である「亀田クリニック」の院長で いらっしゃる亀田省吾先生にインタビューを実施。ご自身の受験生時代のご経験や両親の思い出、 そして医学部受験を控えた受験生たちへの熱いメッセージをいただきました。


感受性の豊かな時期に様々な経験から獲得する資質

―先生が医師をめざそうと思われたきっかけから教えてください。

亀田 亀田家は、江戸時代から続く医師の家系であり、自分の父親や祖父はもちろん、母方の家系もすべて医師でした。物心ついたときから病院の中で暮らしていたので、子どもの頃から当たり前のように医者になるのだろうと思っていました。医療というものを単に学問として捉えていたわけではなく、当時から、たぶん自分たちはこの地域の中で大切な役割を担っていくのだろうというイメージはもっていました。そのような意識は4人の兄弟の間でしっかり共有されていて、中学生の頃から「医療の本質は何か」といった医療の話題から「人間にとって大切なものはなにか」といった哲学的な議論まで交わしているような環境にありました。

 中学生になってから上京して、大学生だった兄を筆頭に兄弟4人だけの生活をはじめました。私は勉強があまり得意な方ではなかったので、とにかく一生懸命にスポーツや遊ぶことに熱中していました。とはいえ、浪人するのもいやだったので、何とか受かろうとそれなりに勉強はしました。麻布高校を卒業して岩手医大に進学してからも、アイスホッケーばかりの生活でした。そもそも、小さなころから遊ぶことやスポーツは何でもやらせてもらっていましたし、両親もどちらかといえば机上の空論よりも経験を重んじるタイプでしたので「ただ勉強だけをしているより、経験した方がはるかに身に付く」とよく言っていました。今でもその教訓がしっかり身に染みています。 

―理論よりも経験の方が大切だということですか。

亀田 私たちが教わってきた医療の知識は、10年、20年経つと半分は役に立たなくなります。それは日進月歩で進化する科学全般でいえることです。医師にとって知識はもちろん、それ以上に大切なのがリーダーとしての力だと思っています。当然のことながらチーム医療の中で医師はリーダーとしての役目を担っていかなければなりません。臨床の場面においては、今、決断しなくてはいけないとか、今、誰かが責任を取って判断しなくてはならないという場面に多く直面します。正しい判断をするためには、常に確固たる判断基準を持っていないとなりません。そういったリーダーの資質は感受性の豊かな時期に、一所懸命に勉強するだけではなく、様々な経験を通して、あらゆる立場の人に触れ合うことで育まれるものです。

 例えば、不登校の友だちと語り合い、体の不自由な子供とも触れ合い、あるいは部活を通じ体育会系の学生と接するなどして、リーダーとして大切な二つの資質、「多様性を理解すること」と「包容力」が身に付くのです。それは医師に限った話ではなく、あらゆるジャンルのスペシャリストになりたいとか、新しいものをクリエイトしていくような人間になりたければ、この大切な時期に必要不可欠な経験をしておくべきだと考えます。

いかに持続可能な社会を作るか議論できる人材を育成すべき

―先生は亀田医療大学や亀田医療技術専門学校の理事長をされていますが、学校運営の中で目指す人材育成方針はどのようなものでしょうか。

亀田省吾先生の診療写真

亀田 私の父が教育好きで、昭和29年という民間病院としては極めて早い時期から看護師育成の専門学校を運営していました。昨今、看護教育も大学に移行してきているため、学校法人化して大学を設立しました。看護師というのは、言うまでもなく医療の要ですし、その最前線に立つ重要な役割を担っています。
 しかし、長寿社会化が急速に進むこの先の日本において、医療や介護、福祉ジャンルにおいて必要となる人材像というのは、大きく変化していくはずです。どのような時代の変化にも対応できる新しい医療者の育成を進めていこうと考えているところです。

 私たちは現在、「亀田はひとつ」を掲げています。法に準拠し、それぞれの必要に応じて医療法人、社会福祉法人、学校法人、あるいは株式会社という形態をとって、様々な医療事業を展開していますが、あくまで目的はひとつ。全部繋がっているのです。
 我々の役割というのは、どうやって持続可能な社会を作り上げ、少子高齢化人口減少時代を迎えるこの日本という国を支えていくのか。この多様な価値観を持つ人間が未来の医療を変えていくような時代の流れの中で、我々ができることは何なのか。それを医療にこだわらずに、提言していくことだと考えています。
 

―どのように提言をしていくか、具体的な計画はあるのでしょうか。

亀田 ひとつひとつを実行してカタチとして示していきたいと考えます。例えば、〝医療丸ごと輸出〞を仕掛けることで、医療周辺産業が抱える年間3兆円の貿易赤字改善の手助けをしたり、人口減少傾向にあるこの鴨川エリアに貢献するために、行政と連携しながらナショナルトレーニングセンターの誘致にも乗り出しています。

 製造業が衰退し、雇用が創出できない昨今、長寿社会の中でニーズが拡大する医療介護分野の産業が、それに変わって経済を回すことになる可能性は高いのです。しかし、国民皆保険がこの先どうなるかもわからない状況ですし、財源には限りがあるので、持続可能な社会における医療や介護の仕組みをどのようにして効率よく作っていくのか考えることも我々医療従事者の仕事となるでしょう。そういう議論に加わることができる人間を、未来の医師として育成する必要があるので、ただ勉強をするだけではなく、親子できちんと議論をして意識づくりをするべきでしょう。

医療は人々の健康的生活を実現するためのサービス業

―この先の日本においては、医師の役割が大きく変わっていくということですね。

医療は人々の健康的生活を実現するためのサービス業

亀田 医者という職業に何を求めるかは、人それぞれだと思います。いち医者として収入を得ることができればそれでいいという人であれば、それでも良いのでしょう。ただ、医療というものは、社会インフラであることは間違いないのですが、食べるものがない時に医療の質について議論をしても始まりません。ということは、すなわち医療というものは、衣食住のように人間の暮らしにとって必要不可欠なものではなく、ひとつのサービス業だと捉えるべきです。

 それは何を目的としたサービス業かといえば、明確に人々の健康というものを介して、人々のクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献するための、社会基盤としてのサービス業なのです。その健康というのは何か。医療というと、単に肉体的な健康に視点が行きがちですが、私たちが捉えるのは「肉体的健康」「精神的健康」「社会的健康」「魂の健康」の4つ、すなわちWHOが掲げる健康の定義そのものです。このすべてが健康な状態を真の健康と呼ぶのであれば、それを実現するために様々な角度からサービスを提供する、それが私たち医療従事者の使命だと考えます。医療をサービス業と捉えることに異論を唱える人もいますが、人に対する仕事のほとんどがサービス業ですし、行政も含め、そうあるべきだと確信しています。

―そのような先生の意識が、多くの患者の支持を集める結果に繋がっているのですね。

亀田 支持されているのはとてもありがたいことですが、それは我々が掲げているミッションを、病院に勤務する職員ひとりひとりが共感を持って理解し、活動をしてくれている結果だと思います。組織というのは山登りのパーティーと一緒で、「みんながんばれ、山に登れ」と大声で叫んでも、どの山に登るかを示さない限り、全員が遭難してしまいます。しかし、「この山に登るぞ」「どうしてこの山に登りたいのか」というミッションを示していけば、能力のある人たちは、登り方は様々であっても、しっかりゴールに到達することができます。そして、様々な能力のある人たちが活躍できるプラットホームを創ることが私たちのリーダーの使命なのです。

―病院施設に様々なアイデアが注ぎ込まれていますが、この着想はどこから生まれるのでしょうか。

亀田 冒頭でも述べたように、様々な経験を重ねてきた、その原動力は好奇心なのだと思います。何に対しても興味を持って、何でもやる。医療とは関係ないことまでやります。双子の兄弟である信介などは建築が好きですし。病院のエリア内には多くのスタッフが昼夜を問わず働いています。彼らがいつも全力で仕事に取り組めるよう24時間営業のコンビニエンスストアやコーヒーショップなどの経営を行っています。また今は都会の文化を鴨川に持ち込むため、大手フラワーショップチェーンとのコラボレーションや、新しい美容院の誘致にも取り組んでいます。

 このように、様々な新しい取り組みにチャレンジするその根底には、「Do&Think(まずとにかく実行してみて、うまくいかなかった点を改善してゆく)」という意識があります。やってみなければわからないことにチャレンジする時、この方法の方がはるかにスピーディでクオリティの良いモノが出来あがり、患者さまに対してより良いサービスが提供できるのです。

多様な価値観を身に付け、スケールの大きな人間になってほしい

―医学部を目指すお子さんをお持ちの保護者にアドバイスをいただけませんでしょうか。

亀田 まず親御さんには、自分の子どもを信じてくださいと伝えたいです。そして、親が広い視野を持たなくては、子どもはさらに近視眼的な勉強しかできなくなります。現在の日本は、大きく変わろうとしている時期にあると思います。
 それは医療を取り巻く環境も同様です。こういうときこそ、固定概念にとらわれずに、子どもと接するべきだと思います。私たちが最も尊んでいる精神は「固定概念にとらわれないチャレンジ精神」です。なかなか勇気がいることだと思いますが、子どもがやりたいと思っていることを可能な限りやらせることで、スケールの大きな人間に育っていくと確信しています。

―医学部受験を目指す子どもたちへメッセージをいただけませんでしょうか。

亀田 逆説的なメッセージですが、まずは医学部受験が人生のすべてではないということをしっかり伝えたいです。やはり医者になりたければ、それなりに勉強をしなくてはなりませんが、自分が今経験できることは今しかできないと自覚してください。時間は神のようなもので、どこから来て、どこまで行くものか誰もわかりませんし、人間は必ず死ぬわけですから、今という青春の時間は二度と帰ってはきません。勉強も大事ですが、自分を磨くこと、人間力を身に付けること、人生を楽しむことも大切です。人というのは、自分を大切にできて、常に自分が幸せに暮らせる人間の隣にいたいと考えるものです。

 そういった観点から、人生楽しむことができない人間が医療に従事するのは難しいと思います。そして、もうひとつ大切なことは、確かに医学部は医者になるために絶対に入らなくてはなりませんが、それは別に偏差値がトップクラスの大学である必要もありません。どの医学部が良いかというランク付けには何も意味がないということをしっかり伝えておきたいです。一生懸命やって、入った大学が、例え第一希望でなかったとしても、医学部なんて所詮一つの過程に過ぎないのですから、入ったところが本当に自分にとって一番いい学校なのだということを信じて頑張って、広く様々なことにチャレンジしていってほしいのです。これは中学も高校もそうなのですが、自分が入れてもらった学校で精一杯努力すれば、必ず色々なものが身に付きます。

 医学部受験はどこの大学でも相当レベルが高くなっていますから、例えば東京大学と、それ以外の大学との間で大きな差があるかといったら、そんなことはありません。東京大学に入学する時には確かに学力は高いと思いますが、医者としてどっちが活躍するかはまったくわかりませんから。とにかく、今できる経験を積んで、多様な価値観を身に付け、スケールの大きな人間になってほしいと思います。

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