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医師の魅力

Doctors' File 〜医師語一会〜

2017.10.02

【鈴木富雄 先生】総合診療医は、疾患はもちろん、家族・地域までにも目を向けながら、目の前の患者さんのためにベストを尽くす。

鈴木 富雄 先生

特定の疾患だけを診るのではなく、患者さんが抱えるあらゆる健康問題に着目し、全人的に支える役割を担う、いま注目の総合診療医。テレビでもおなじみの名医・鈴木富雄先生に、総合診療医をめざしたきっかけや、総合診療医の魅力について伺いました。


医師は一生の仕事として誇りを持って取り組める

ー医師をめざそうと思ったきっかけを教えてください。

鈴木 小・中学生のときは“昆虫博士”と言われるほど、虫が好きでした。夏休みの自由研究はすべて「昆虫」がテーマでした。一生懸命作った昆虫の標本を学校へ持っていくと、膨大なボリュームに先生がビックリしたほどです。当時は昆虫学者になりたいと本気で思いましたが、学年が上がるにつれ、さすがに職業とするには不安が大きいだろうと思い、諦めました。

 高校生になって興味の対象は昆虫から人に変わりました。社会性の高い職業に就きたかったので、法曹関係への進学も考えましたが、“人が人を裁くこと”に対する抵抗感がありました。テレビドラマなどで見る検察側と弁護士側との捉え方が全く違うことに疑問を感じ、自分には「できない職業」だと思いました。

 その点、医療は非常に分かりやすい世界です。これなら一生の仕事として誇りを持って取り組めるであろうと、医師をめざしました。

めざすのは「患者さんの訴えに、きちんと向き合える医師」

ーどのようにキャリアを積み重ねてこられたのですか。

鈴木 医学生時代にいろいろな病院で実習を重ねることで、自分にふさわしい領域を見つけていきました。医療の最先端を走る病院には眼を見張るものがたくさんありましたが、自分の専門外の分野は、各専門の先生に任せるといった感じで、私にとっては細分化されすぎていて、あまり魅力を感じませんでした。

 私の中にある医師のイメージとは「患者さんの訴えに対して、きちんと向き合える医師」でした。医師をめざそうと思ったのも、「人」そのものに興味があったからで、肝臓や腎臓など特定の「臓器」に興味があったからではありません。

 外科であれば、海外医療協力隊のように、どんなことでも一通りこなせる医師、いわゆるアニメのブラック・ジャックのような医師が理想でした。また内科も細分化されすぎていたので、自分のめざす分野ではないと思いました。

 「自分がやりたいのは、スペシャリストではなくジェネラリストだ」との思いから、大学卒業後にジェネラルな研修教育で名を馳せていた舞鶴市民病院に内科医として勤務しました。当時、舞鶴市民病院は、聖路加国際病院、沖縄県立中部病院と並び、ジェネラル教育の御三家と称されていた病院です。

 医学教育の世界では知らない人がいないほど著名な医師たちがアメリカから研修医たちの指導に来日していました。今の自分があるのは、Dr.ウィルスやDr.ティアニーをはじめとする素晴らしい先生たち、そして全国から高い志を持って集まってきた仲間たちの出会いがあればこそと思っています。

総合診療医への需要は高いが、研修施設・指導医が少ない

ーそこで総合診療医としてのキャリアを積まれていったのですね。
ところで総合診療医の活躍の場にはどのようなところがあるのでしょう。

鈴木 活躍の場としては都会の大学病院、地域の中規模・小規模病院、診療所や開業医、そして研修医の教育機関など多くの場があります。

 例えば私が所属する大阪医科大学附属病院の総合診療科は、内科系では、循環器内科・消化器内科と並んで初診の外来患者が非常に多くなっています。また他の病院では診断がつかない難しいケースも紹介され、それに対して「答を出す」ことが大きな役割となっています。

 次に、地域の中規模・小規模病院では大学病院ほど細分化されておらず、一人の医師がいろいろな領域に携わる必要がありますが、総合診療医が在籍していれば、救急から外来まですべてを任せることができます。

 診療所や開業医のところへもいろいろな患者さんたちがやってきます。症状もさまざまなら、年齢や状況などもさまざま。とりあえずどんな状況にも対処できるのが総合診療医の強みです。

 さらに、研修医の教育には総合的に診る力の養成が欠かせませんが、複雑に重なった病態をひとつひとつ考えていく力を身につける上でも、総合診療のジェネラルな考え方は非常に大切です。

 総合診療医は、患者さんをバラバラに診るのではなく、一人の人間として診ます。生物学的に診断することはもちろん、職場や学校などの環境、経済的負担、介護面など、心理社会状況も含めて総合的に判断していきます。

ー総合診療医を養成する研修機関は少ないのですか。

鈴木 総合診療医へ対する社会のニーズは高く、また志望する学生も多いにもかかわらず、教育環境はまだ整っていません。総合診療をしっかりと研修できる施設は少ないですし、指導医がいないというのが現状です。

 どんな分野の専門医であっても臨床経験をある程度積めば、総合診療医になれると思われていますが、これは大きな誤解です。ジェネラルな研修をしっかり積んでいなければ総合診療医にはなれません。

医療の目的は、「その地域に暮らす人たちが生きがいをもって暮らせる人生を支えること」

ー総合診療医に必要な資質とはどんなものですか

鈴木 知識・経験はもちろん必要ですが、一番大切なことは、患者さんに対する姿勢と柔軟性だと思います。総合診療医はスーパーマンではないので、患者さんのすべてを診るわけにはいきませんが、「まずは私に任せてください」という患者さんに対する姿勢から始まります。

 総合診療医が増えることによって、専門科の先生方も非常に良い連携が図れるでしょう。また、スペシャルに進む前にジェネラルもしっかり学びたいという人たちへのキャリア教育も行いやすくなります。総合診療医に必要な資質は、医師であれば誰もが必要な資質だと思います。

 超高齢化が進むなかで、医学のことだけを考えていたのでは、社会に貢献することができません。総合診療医だけでなく、すべての医師に言えることですが、地域の中でその人がすこやかに生きて行くためには、何ができるかを考えることが大切です。

 医療の最終的な目的は、「その地域に暮らす人たちが生きがいをもって暮らせる人生を支えること」です。そのためには身体だけを診るのではなく、患者の生活、生きがい、社会や家、地域までもに目を向けないと良い診療はできません。

 また、医師は一人でがんばるわけではありません。看護師や薬剤師、栄養士など、他職種の方たちとのチームプレイが非常に大切です。協調性やコミュニケーション力など、社会人として当たり前の能力も身につけておく必要があります。

大切なことは、成績ではなく、「医師になりたい」という気持ち

最後に、医師をめざす中高校生へメッセージをお願いします。

鈴木 地域を知り、社会を知り、世の中を知り、人間の心を知るために良く学んでください。そのためには勉強だけでなく、クラブ活動やボランティア活動、学校行事、家の手伝いなどいろいろな経験を積んでほしいと思います。

 医師は非常にやり甲斐のある仕事です。同時に、亡くなっていく患者さんを目の当たりにすることも多く、つらい職業でもあります。それでも私が医師を続けてこられた理由は、患者さんの笑顔を見ることができるからです。患者さんから勇気をもらい、患者さんから人生を教えてもらい、患者さんから生きる喜びをもらえる医師は素晴らしい職業だと思います。

 もし、君たちが偏差値や成績だけで医学部に進学することを考えているなら、医師という職業はお勧めしません。それは患者さんのためになりませんし、何より君たちのためになりません。

たとえ成績が悪くても、「医師になりたい」と思う気持ちがあるなら、何年かかっても良いですから、とにかくこちら側の世界に来てください。君たちを未来のたくさんの患者さんが待っています。

プロフィール

鈴木富雄 さん

鈴木富雄さん(すずき・とみお)

 1991年名古屋大学医学部卒業後、内科医として市立舞鶴市民病院に勤務。2000年より名古屋大学医学部附属病院総合診療部、2001年同附属病院総合診療科助手・病棟医長を経て、2006年より同附属病院診療科講師。2014年大阪医科大学地域総合医療科学寄附講座特任教授および同附属病院総合診療科科長に着任。患者さんの診断・治療だけでなく、予防から福祉・介護まで総合的なヘルスケアを視野に入れた診療を行うと同時に、全国の病院で研修医や医学生を対象に、一つひとつの症例をじっくり深めていく「出張カンファレンス(症例検討会)」を実施。NHK総合テレビ「ドクターG」やテレビ朝日系列の「たけしの健康エンターテイメント“みんなの家庭医学”」等にも出演する。

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