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医学部入試概況

2018.02.14

【医学部受験最前線】医学部合格者の条件は全科目で高得点を取る力と自己管理能力

年々激しさを増している医学部人気。ここ1~2年はやや落ち着いているとはいえ、私立大医学部の志願倍率は平均で18倍と、他学部を大きく引き離しており、易しくなったとは言い難い状況にある。この激戦の医学部入試を突破するには、どうすればいいのか。河合塾麹町校校舎運営チームの梅田靖彦チーフに伺った。

※本記事は『日経メディカル/日経ビジネス/日経トップリーダー 特別版 WINTER.2018年1月〈メディカルストーリー 入試特別号〉(日経BP社)』に掲載されたものです。

1800人の定員増を上回る志願者数の増加

 医学部医学科(以下、医学部と略す)の入学定員は、2007年までは抑制されていたが、医療の高度化や高齢化の進展に伴う医師需要増への対応や、医師の地域偏在性の解消などの目的で、2008年から毎年増員されている。臨時定員増と恒久定員増、新規医学部設置による定員増を含め、2017年度までに1795人も定員が増えた。25%近い増加率だが、それを上回る志願者の増加で、現在の医学部入試は熾烈さを増している。
 医学部受験に特化した校舎で知られる河合塾麹町校の梅田チーフは、その背景を次のように分析する。
 「景気低迷が長く続いたことによる就職不安と資格志向があると思います。資格の最たるものが『医師免許』であり、こうした思いは、とくに安定性を強く求める保護者の側に強く感じます。一方、生徒の側には、人の役に立ちたい、社会に貢献したいという気持ちも強く、それが医師という比較的イメージしやすい職業に向かわせているのでしょう」

 もっとも、ここ1~2年は医学部志願者の伸びは落ち着きを見せはじめている。たとえば、国公立大医学部前期日程の志願者数(河合塾調べ)は、対前年度で2016年度が97%、2017年度は99%、同じく後期日程は91%、99%と微減状況にある。(表1)私立大医学部も、一般入試とセンター利用入試を合わせた全体の志願者数は、2016年度が対前年度101%、2017年度が102%と、増加率の伸びは緩んでいる。

 では、2018年度はどうなるのか。文部科学省によれば、2018年度の医学部の総入学定員は、1名減の9419名になる予定だ。一方、2017年10~11月に実施された河合塾の第3回全統マーク模試の志望動向をみると、文学部系が対前年度104%、経済学部系が107%に対して、理学部系97%、工学部系99%、医学部も97%となっている。(表2)数字の上からは、志願者は微減が予想されるが、梅田チーフは、難易度そのものは変わらないという。
 「一昨年あたりから、景気の回復感を受け、“文高理低”の流れが続いており、理系に属する医学部もその流れのなかにあるようです。しかし、弊塾で調べたところ、減った志願者の大部分は、各大学ともボーダーラインに届くかどうかというレベルの生徒が多く、ボーダーラインを超えている層は減っていないため、高止まり状態が続くと思われます」

受験生も大学も変化 面接・小論文が重要に

 医学部人気を受けて、受験生の気質にも変化が出てきているそうだ。
 「かつては、どうしてもこの大学の医学部で学びたいという、強いこだわりを持つ受験生が多く見られました。しかし、最近では、そうした受験生は減っています。医師になるには、まずは医学部に合格しなければなりませんし、定員も多くありませんから、受験段階でそう考えること自体は、不思議ではありません。」
 ところが、受験生気質の変化は、医学部入試にも微妙な影響を与えているようだ。というのも、最近の医学部入試では、面接や小論文を重視する傾向が明らかに強くなってきているからだ。

 医学部では、近年、大きな教育改革が続いている。医学教育の世界標準に合わせるために臨床教育が強化され、1科目でも単位を落とすと即留年というカリキュラムが主流になっている。定員が100名ほどの医学部では、実験設備や実習のローテーションなどにあまり余裕がなく、留年者の増加は大学にとって大きな負担になる。そのため、医学部の教員たちの間には、6年間きちんと勉強を続けられる受験生を受け入れたいとの思いが強くなってきている。

 そこへ、合格のしやすさだけを基準に出願する受験生が増えれば、本当にこの大学で真剣に勉強する気があるのかを確かめたくなるのは当然だ。それが、面接・小論文の重視につながっているのだ。
 「いくら学科試験の成績がよくても、面接・小論文で不合格になる学生はいます。当然、医師の適正があるのかないのかの見極めを行っていますし、更には受験生の本気度を詳細に確認するための試験なのだと認識を改めるべきです」

入試変更点に注意し隔年減少にも気を配る

 医学部入試における志願者動向は、入試システムの変更によって大きく変化する。梅田チーフに、2018年度入試における主な変更点を紹介してもらった。

 たとえば、東大が一度は廃止した面接を復活させる、浜松医科大が前期日程で「第一段階選抜」を実施する、鳥取大が英語・数学の2科目だった二次試験に新たに理科2科目を追加する、などだ。
 「浜松医科大は、過去3年間は6倍前後の志願倍率だったため、2018年度はこれまで同様の志願者が集まれば第一段階選抜が実施されます。このような受験生にとって負担増になったり、受験機会が制限されたりする変更は、一般的には志願者数の減少を招くことが多いといえます。しかし、現実的には、センター試験後に、弊塾でいえば『センター・リサーチ』の結果を見て出願先を決める受験生が多いことから、結局、蓋を開けてみるまでは志願者がどう動くのか分からないというのが実情です」

 志願者動向については、医学部入試ではとくに「隔年現象」に注意を払っておいた方がいいという。他学部入試でも見られるが、医学部はその特徴は顕著だからだ。とりわけ国公立大医学部の場合は、「センター・リサーチ」の結果次第で、全国の医学部が出願対象になる傾向が強く、限られた定員をめぐって、受験生は“椅子取りゲーム”的な動きをする。

 「受験生によっては、裏を読んで、前年度高倍率の大学に出願するケースもあるでしょうが、全体的な志願動向を分析する限り、毎年のように隔年現象が認められるため、注意を払っておいた方がいいと思われます」

 なお、私立大医学部の場合は、国公立大ほど、越境受験する割合は高くない。なぜなら、大学ごとに出題傾向や設問形式が大きく異なるため、自分が得意とする入試パターン以外の大学には出願しにくいからだ。また、建学理念が異なる私立大は、どのようなタイプの受験生を合格させるかという考え方も異なる。河合塾をはじめとする予備校は、全国をカバーしているが、やはりその拠点に立地する大学の情報量が多く集まってくる。そのため受験生も近隣の医学部を受験する傾向が強まるのだ。

センター得点率85%二次偏差値65が最低ライン

 では、医学部に合格するためには、どれくらいの成績が必要なのだろうか。
 国公立大の場合、医学部合格者のセンター試験での平均得点率は88%だという。点数でいえば、2017年度は791点、2016年度は792点だったため、平均得点率はほぼ一定といっていい(数値は河合塾調べ)。また、二次試験については、2017年度合格者の全統記述模試の平均偏差値は68.2で、この数字もあまり変化していない。それだけ医学部受験生の学力レベルは高いところで維持され続けているわけだ。

 そのため、梅田チーフは、国公立大医学部の受験生には、次のように指導しているという。
 「旧帝大や難関大の医学部をめざすなら、センター試験90%(810点)、二次試験の偏差値70を目標にすべきであり、最低でもセンター試験85%(765点)、二次試験の偏差値65程度なければ、合格の可能性は低くなる」
 また、私立大の場合は、河合塾の全統記述模試における合格者の平均偏差値は66.1だ。したがって、御三家(慶應義塾大、東京慈恵会医科大、日本医科大)をはじめとする難関大ならば、偏差値70をめざすことになる。

不得意科目がなく自律的な生活が大切

 こうした高い関門をクリアしていく医学部合格者には、何か共通点があるのだろうか。梅田チーフは2つあげる。
 1つは、不得意科目・分野がないことだ。前述したように、センター試験での合格者平均点は791点だ。医学部志望者には、理系科目が得意で文系科目が不得意な人が多いが、たとえば、200点満点の国語が130点だったとすると、国語だけで70点ものマイナスになり、791点に達するための科目の組み立てができなくなってしまう可能性が高い。だからこそ、どの科目でも85%、90%を取れる高い得点力が必要になる。

 他学部の入試では、ずば抜けた得点力が1科目あると、全体の成績を押し上げて合格するケースもあるが、医学部の場合は、総じてセンター試験を重視する傾向が強く、不得意科目が1科目でもあると合格は難しいと肝に銘じるべきだろう。

 「医学部がそうした受験生を求めるのは、医師という職業とつながっているからだと思われます。医師には、いろいろいな症例を幅広く学び、患者のどんな小さな訴えや症状も見逃さずにキャッチすることが求められています。だからこそ、基礎をおろそかにせず、全科目で満遍なく高いレベルで力を発揮できる受験生を求めているのでしょう」
 もう1つは、自己管理能力だ。予備校に通っている高卒生であれば、予備校の授業に朝からしっかり出席して、遅刻や欠席をしないとか、提出物を期限内に提出するとか、自律的な生活ができない受験生は、合格は難しいそうだ。
 「現役生の場合は、学校の授業を疎かにしないことも大切です。現役合格者の多くは、学校の授業をきちんと受けており、予備校の勉強で何とか取り繕おうとしている受験生は失敗する確率が高くなります」

面接・小論文対策は第三者に協力を求めたい

 では、医学部受験突破に向けて、どんな対策を取ればいいのだろうか。
 学習面でいえば、まずは全科目とも基礎を確実にした上で、ミスなく高得点を得られるように努力することが必要だという。そして、そのための勉強法として、梅田チーフは「集中力」「時間での教科の切り換え」「解答力」「記憶力」の4つのポイントをあげる。
 「集中力」を鍛えるには、スマホなどの電源を切り90分間机を離れずに勉強する習慣をつけること。そして、90分経ったら「別の教科に切り換え」、同じ科目をだらだらと勉強しないことが大切だと強調する。
 「最も重要な『解答力』は、常に自分の頭で考え解答する癖をつけて、思考力を鍛えることで身につきますし、『記憶力』を高めるには、できるだけ予習・授業・復習の時間に覚えるようにした上で、定期的に繰り返すことが大切です。」

 近年、重視されてきた面接・小論文については、梅田チーフは「試験である以上、準備が必要ですし、対策をとる必要もあります」と言い切る。その上で、小論文対策では、添削指導が必須だという。小論文にも、課題を与えて書かせるものや、絵や医療に関するグラフを見せて論じさせるもの、英文読解に近いものなど、いろいろな種類がある。そのため、志望校を絞った段階で形式を見極め、予備校の講座を利用したり、高校の先生に添削を依頼したりして準備を始めるといいそうだ。

 面接対策も入念な準備が必要だという。
 「面接で問われるのは、一生学び続ける『覚悟』と、『コミュニケーション能力』です。医師は、年齢や性別を問わず患者と接しなければなりませんし、チーム医療によって他の医療従事者と連携していかなくてはならず、コミュニケーション能力は必須です」

 面接では、「医師志望理由」「本学志望理由」「個人プロフィール」「医療/社会トピック」の4点に対する準備が必要だと指摘する。「医師志望理由」は、本気度を確かめるものであり、医師である面接者が納得できる理由が必要だという。また、「本学志望理由」では、なぜ数ある大学のなかでそこを志望するのか「個人プロフィール」では、自己をどう分析しているのか、試されるのだそうだ。なお、「医療/社会トピック」については、低学年次から常にアンテナを張っておく必要があるという。本気で医師になりたいなら、医療に興味があるはずだからだ。その上で、面接も練習が必要で、第三者にお願いして繰り返し練習しておくべきだという。


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「いい医者」をめざし、「医学部合格」のその先へ。

 


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