医学部入試概況
2018.07.14
医学部入試を突破する夏休みの学習ポイント
まとまった学習時間が確保できる夏休みは、受験勉強の「天王山」といわれる。夏休みを有効に活用したことが合格につながったと語る医学部生は少なくない。どのような点に気をつける必要があるのか、学習のポイントをアドバイスする。
※本記事は『日経メディカル/日経ビジネス/日経トップリーダー 特別版 SUMMER.2018年6月〈メディカルストーリー 入試特別号〉(日経BP社)』に掲載されたものです。
長時間の勉強に耐えられる気力、体力を養う
医学部に合格するための勉強に、楽な方法はない。毎日、大量の勉強を地道に続けていくしかない。とくに夏休みは、まとまった勉強時間が確保できる。この時期にどれだけ頑張ったかが、合否を分けると言っても過言ではない。
夏休み中に、ぜひ心がけてほしいのが「勉強漬け」の日を作ることだ。まずは1週間のうちで数日でもかまわない。朝から晩まで、食事と入浴以外は勉強に専念してみる。医系予備校の中には、朝9時頃から夜9時頃まで強制的に勉強させるところも見られる。
こうした「勉強漬け」の日を設定する意義は、これから先、長時間の勉強に耐えられる気力、体力を養うことにある。これだけの負荷をかけても、乗り切ることができれば、自分はハードな勉強をちゃんと消化できると、大きな自信になる。それによって、秋以降の学習にも弾みがつくに違いない。
もちろん、決めた時間、勉強を続けられないケースも出てくるだろう。そんなときは、学習の環境を変えるのもいい方法だ。自宅で一人勉強していると、どうしても辛くなる。集中力を持続させるのが難しくなったら、通っている塾・予備校の自習室を活用しよう。仲間が頑張っている姿が刺激になる。友だちと、この1週間で何時間勉強したかを競い合うのもいい。
国公立、私立ともに 「基礎固め」が重要
医学部入試は、課される科目数が多く、しかも高得点が要求される。それに対応するために、夏休みまでに重要になるのが、すべての受験科目の基礎を固めておくことだ。これは国公立志望者、私立志望者の両方に共通する鉄則である。
こう書くと、「基礎固めに時間をかけるような余裕なんてない。早めに難問に取り組む方が先決」と反発する受験生もいるかもしれない。もちろん、難問が解ける力が必要ないというわけではない。秋から難問に本格的に取り組むためにも、今、基礎をしっかりおさえておくことが大切になるのだ。
入試に則して、基礎の重要性を説明しよう。
まず国公立医学部の一般入試前期日程では、センター試験5教科7科目が共通試験として課され、さらに各大学が独自に行う2次試験を受けなくてはならない。合否はセンター試験と2次試験の合計点で決まる。注目してほしいのは、ほとんどの国公立医学部の合格者のセンター試験平均得点率は85%から95%の間にひしめき合っているということなのである。つまり、センター試験レベルの基礎的、標準的な問題であれば、ほぼ確実に解ける力を身につけておかなければ、国公立医学部入試では勝負にならないのだ。
ただし、勘違いされると困るので付け加えておくと、国公立医学部の2次試験の問題は、相当な難問になっている。その分、問題数は少なめで、じっくり考えて解く問題になっている。国公立医学部志望者には、基礎的、標準的問題を確実に解く力と、難問に対応できる力の両方が求められるわけだ。
一方で、私立医学部の入試問題は、難易度はそれほど高くない。参考書・問題集でよく見られる典型的な問題が中心だ。だからといって簡単にクリアできるわけではない。実は問題数がきわめて多いのだ。私立医学部の制限時間は60分がほとんどで、標準レベルの問題を短時間でミスなく解き切る力が要求される。夏休みに基礎を固めて、基礎的、標準的な典型問題なら、一目見ただけで瞬時に手が動くくらいに習熟しておくことが大切になる。
私立は幅広い分野から出題 苦手分野克服が不可欠
よくいわれることだが、苦手分野の克服も、夏休みの重要なテーマになる。まとまった時間が確保できる夏休みは、その最後のチャンスという自覚を持とう。
とくに私立医学部志望者は、この意識が大切になる。なぜなら、先述したように、私立医学部の入試問題は、問題数がきわめて多いからだ。当然、幅広い分野から出題されることになる。苦手分野を抱えたままでいると、致命的な失点につながる危険性がある。
ほとんどの受験生が、自分の苦手分野は分かっているはずだが、自分でも自覚していない思いがけない落とし穴がある場合も少なくない。そこで、ぜひ取り組んでほしいのが、夏休みに、それまでに受けた模試の答案を見直すことだ。とくに受験者の平均点が高い問題なのに、自分が間違えていたら、要注意だ。「分かっているつもり」と、甘く考えるのが一番危ない。計画的にその分野に取り組む日を決めて、しっかり復習しよう。
過去問を解き始め、問題との相性をチェック
夏休みの後半に入ったら、過去問を解き始めよう。受験する可能性のある大学の過去問を、最低でも3年分、できれば5年分解いてみる。
もちろん、今の段階で、点数に一喜一憂する必要はない。重要なのは、単に答え合わせをして終わりにしてはいけないということ。どのような問題形式・分野が頻出しているのか、ノートに書き出して、整理・分析する作業が不可欠になる。
過去問のメリットは、実践力が高められるだけでなく、それぞれの医学部の出題傾向が分かることが大きいのである。
そして、医学部志望者にとっては、この出題傾向の把握が、受験戦略を立てる上で、とても大切な要素になる。実は、医学部は偏差値や模試の合否判定通りの結果になるとは限らない学部なのである。数校受験して、最も偏差値の高い大学にだけ合格したというケースもけっしてめずらしくない。これは、医学部によって出題傾向が異なるからだ。苦手分野の問題は比較的易しく、得意分野の問題は難問が出る医学部を受ければ、当然、有利になり、合格率が高まる。ボーダーライン付近にたくさんの受験生がひしめく医学部入試においては、そうしたちょっとした得点の上下が、合否を左右するのだ。
そのほか、マークシート式か記述式か、解答形式のチェックや、制限時間と問題数も確認しておこう。
出題傾向を分析した上で、できれば夏休みが終わるまでに、自分と相性のいい入試問題の医学部を見つけることを目標にしよう。複数の候補を探すように努めよう。
ある程度ターゲットが定まれば、秋以降、どんな分野で、どの程度のレベルの問題を重点的に勉強すればいいか。注意しなければならないことは何か。勉強の方針が明確になるだろう。
オープンキャンパスに、積極的に参加しよう
夏休みには多くの大学でオープンキャンパスが開催される。医学部も同様だ。貴重な情報を入手するチャンスになる。
どのような内容で行われているのか。昨年の内容になるが、いくつかの医学部の例を紹介しよう。
順天堂大学医学部では、医学部長挨拶、カリキュラムと入試の説明、医学部生の話を聞こう(在学生によるトークセッション)、個別進学相談などが行われた。
東京慈恵会医科大学では、学長からのメッセージ、教育内容・入試が求めるものの説明、卒業生のキャリアパス、学生が語る入試準備・大学生活・大学での勉強、質疑応答、キャンパス見学(英語による医療面接、聴診体験、パネル展示、部活紹介ビデオ上映、模擬講義など)、相談会(入試、奨学金、学費、地域枠など)が実施された。
日本医科大学では、学長挨拶、カリキュラムと入試の説明、模擬講義、進学相談・質問コーナー(学生への質問コーナーも設置)、自由見学といったプログラムになっていた。
いずれも、かなり盛りだくさんの内容になっていることが分かる。
オープンキャンパスの最大のメリットは、大学の雰囲気を肌で感じられることである。模擬講義などで大学ならではの学びの様子を知れば、あこがれの気持ちが強まり、受験勉強のモチベーションが高まる。その効果は、皆さんが想像する以上に大きなものがある。受験を考えている医学部のオープンキャンパスには、ぜひ積極的に参加しよう。
なお、医学部ガイドに各大学のオープンキャンパス情報が掲載されているので、参考にしてほしい。
※参考図書
合格実績No.1医学部専門予備校学院長が教える医学部合格完全読本
著 者 : 田尻友久
出版社 : かんき出版