医学部に強い中高
2023.07.14
【北嶺中・高等学校】今春東大9名・国公立大113名・国公立医学部医学科37名が合格 少人数制ならではの連帯感と手厚い学習支援で、最難関大や医学部進学に導く
1986年に開校した北嶺中・高等学校は、「知(知識)・情(感情)・意(意志)・体(身体)」の調和が取れた全人教育を実践する北海道屈指の男子進学校だ。併設の「青雲寮」では全国各地から集まった生徒たちが、充実した学習環境の下、切磋琢磨しながら個性を磨いている。医学部・難関大学に高い合格実績を出している同校の教育について、谷地田穣校長に話を伺った。
卒業生の3人に1人が医学部へ 道外からの志願者が年々増加
札幌市郊外にある北嶺中・高等学校は、「めざすなら高い嶺」をスローガンに掲げ、少数精鋭のリーダー教育を実践する中高一貫の男子校だ。体育の授業では柔道とラグビーを必修とするほか、毎年全校登山を行うなど、文武両道の教育を通して、心豊かな未来のリーダーの育成をめざしている。
そんな同校は1期生の卒業以来、東大合格者を輩出し続けるほか、卒業生の3分の1が医学部に進学するなど、北海道屈指の進学校として定評がある。卒業生126名が挑んだ2023年春の大学入試では、東大に9名が合格し、そのうち8名を占めるのは現役生だ。国公立大学には既卒生を含め113名(現役99名)が合格している。さらに、国立大医学部医学科の合格者37名のうち、現役合格者は31名にのぼった。
「医学部・難関大学に強い中高一貫校」としても全国的に認識され、道外からの志願者も年を追うごとに増加している。同校では、年間400組にのぼる受験生家族が学校見学に訪れているが、そのうち約300組は本州からの訪問だという。道外の受験生からも注目が集まる理由について、谷地田先生は「きめ細かい支援を整えた寮生活と、1学年120名程度の小規模校ならではの万全な指導体制にある」と分析する。「個別見学では、学校の授業はもちろん、寮内の施設や寮生の部屋、寮生のリアルな生活など隅々まで見ていただき、寮の食事も実際に体験してもらいます。学習面と生活面を支えるシステムがしっかりと整ったなかで、生徒が伸び伸びと過ごしている姿を見て、気に入ってくださるご家庭が多いようです」と谷地田先生は語る。
学年の枠を超えた連帯感を育む アットホームな雰囲気の青雲寮
イギリスの全寮制パブリックスクールをモデルに開設された同校は、学習支援体制を整えた生徒寮「青雲寮」を併設し、全校生徒の半数となる380人が入寮している。寮での学習時間は夕食後の夜7時から11時まで。寮に在籍する15名の寮教諭が中心となって学習指導を担当する。チューター制度もあり、夜は北大の医学部生、札幌医大生など約30名のOBがシフトを組んで毎日3~4名体制で巡回指導を行うのも特徴だ。また、学校の先生による寮生限定の夜間講習を実施し、日々の学習の復習や発展的な問題演習を行う。
自然豊かな環境に囲まれた校舎と併設の青雲寮。2021年新寮棟(S棟)と高校生棟が完成
生活面での配慮も万全で、食事は朝・昼・夕に夜食を加えた1日4食を提供。寮には寮母のほか、病気やけがに備えて看護師の資格を持つ養護教諭も常駐し、生徒のささいな変化にもすばやく対応する。寮生たちは、決められた学習時間以外は自由に過ごしている。サッカーやテニスといったスポーツのほか、寮スタッフが見守るなか、裏山でバギー車を走らせたり、冬はスノーモビルを楽しんだりと北海道の地の利を生かしたアクティビティーも満喫できる。2021年にはボルダリングウォールやサウナ、大展望風呂などを備えた新棟が完成し、ますます充実した生活環境が整った。「ボウリング大会や野球観戦、ジンギスカン祭りなど、寮生向けのレクリエーション行事も毎月開催し、学年を超えた寮生同士の絆を深めています。一方、中1~高2は2人部屋ですが、高3は個室です。受験勉強に適した落ち着いた環境で過ごせますので、ご安心ください」と谷地田先生は話す。
学校の通常授業も「1学年120名の小規模校ならではの万全な指導体制」で行われている。たとえば、中1段階から週37コマの授業時間を確保。生徒たちの学習の理解度を丁寧に確認しながら、習熟度別授業、放課後講習、長期休暇を利用した講習など、個々の能力に合わせた指導により、最難関大学や医学部に対応できる高い学力を養う。高3では「東大理系数学」や「医進英語」などの超難関大学講座も放課後に開講し、面接試験対策や小論文の添削指導も行う。このような学びを一部の生徒ではなく、全員を対象に実践できるのも、小規模校ならではだ。さらに、全員で取り組むことによって、生徒同士が切磋琢磨し、お互いを高め合えるというメリットも生まれてくるそうだ。
最先端の医療現場を体感する 「北嶺メディカルスクール」
医学部医学科や難関大学に高い合格実績を誇る理由の一つとして、谷地田先生は全生徒参加型の「探究型特別プロジェクト」を挙げる。これは、実社会の仕組みや最新技術など「本物に触れること」に主眼を置いた8つのプロジェクトのこと。具体的には、①最先端の医療を体感する「北嶺メディカルスクール」、②ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などを訪れ、グローバルリーダーに必要な思考力や表現力を養成する「G(グローバル)プロジェクト」、③OBの弁護士を講師に迎え、法学への理解を深める「北嶺ロースクール」、④JAXAやNASAに足を運び、科学の見聞を広める「S(サイエンス)プロジェクト」、⑤経済の仕組みや経営戦略などについて学ぶ「北嶺ビジネススクール」、⑥コンピューター・サイエンス教育を行う「北嶺プログラミングアカデミー」、⑦北海道の自然や歴史、文化に触れる「HOKKAIDOプロジェクト」、⑧ニューヨークでのブロードウェイ鑑賞やメトロポリタン美術館研修、雅楽や能をはじめとした本物の芸術に触れる「北嶺カルチェラタン」など、幅広い分野のプロジェクトが並ぶ。
メディカルスクールでは、医師の指導による模擬手術研修を体験(砂川市立病院にて)
なかでも、目玉は「北嶺メディカルスクール」だ。ここでは医学界で活躍する卒業生や保護者のネットワークを生かし、ふだん見ることのできない手術現場の見学や医師を招いた講演会、医療研修、訪問診療研修のほか、学年全員がハーバード大学メディカルセンターで授業を受講するなど、医療について多角度から学んでいる。特に、北海道礼文島の医療機関を訪れる「Dr.コトーキャンプ」や、へき地の医療に触れる「赤ひげツアー」では、毎年生徒たちが大きな刺激を受けて帰ってくる。「現場の厳しさを肌で感じ、『ぼくには離島は無理です』という生徒は少なくありません。しかし、その一方で、『 将来、へき地医療に従事したい』と目覚める生徒も毎年必ずいます。明確な目的を持った生徒の意志は強く、成績は格段に上がり、医学部合格も達成します。だからこそ、数多くの体験プロジェクトを用意し、生徒に目標を見つけてほしいと願っているのです」と谷地田先生は語る。
ハーバード大学では、未来のグローバルリーダー養成プログラムを実施(高校1年生)
NASAケネディ宇宙センターで研修を実施(サイエンスプロジェクト)
グローバルプロジェクトでは、ニューヨークにて国際研修を実施
返還不要の奨励金を給付 「特待選抜入試」を継続実施
2024年度入試では、前年度からスタートした「特待選抜入試」も継続して行われる予定だ。一般入試と同一日実施、同一内容という点も前年度と変わらない。この特待選抜入試では、入試成績上位合格者を対象に入学金と授業料を免除するとともに、返還不要の奨学金が月額1万円給付される。入試会場も今年度と同じく、札幌(本校)・旭川・函館・釧路・帯広・仙台・東京・名古屋・大阪で行う予定だ。また、個別見学やオープンスクールなど、事前に学校見学に訪れた家庭には「学校見学証明書」が発行される。これを持っていると、東京・大阪・名古屋会場でも専願・併願Aでの出願が可能となり、学校見学をしていない併願Bで受験するよりも有利になる。
※本記事は『日経ビジネス 特別版 SUMMER.2023〈メディカルストーリー 教育特別号〉(日経BP社)』に掲載されたものです。
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