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2023.07.14

【西武学園文理小学校】 医療人に必要な科学への興味を育む本物から学ぶ体験学習の数々

各学年2クラスの少人数でスタートする小学校から、中学校そして高校までの12年一貫教育を受けた第8期生が2023年3月に高校を卒業した。そのうち16名を医歯薬獣医系に進学させたのが、西武学園文理小学校独自の高度専門プログラム「STEM教育」とも言える。その本質となる「本物から学ぶ体験教育」について、古橋敏志校長に話を聞いた。

校長 古橋 敏志 先生

文理フォームで、農業体験から観察まで

 6年間を通じた「英語のシャワー」および小学校から高校まで12年間一貫教育で知られる同校だが、その本質的な教育の要は「本物にふれること」だろう。なかでも注目したいのが、独自の高度専門プログラム「STEM教育」だ。STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとったもので、論理的思考力を育てる理数系教育である。

 

 学園の中学・高校の理科教諭を招いて実験を行ったり、観察したりする機会を多く設けている。二酸化炭素の実験で実際に火を扱えるのは、専科教員の視点で安全性を確保できるからだろう。観察で活躍するのは、地元・狭山の豊かな自然だ。学校の近くに「文理ファーム」という農地をもち、農家の方を講師に迎えて指導を受け、水田では田植えから稲刈りまでを行い、畑ではさつまいもや落花生、じゃがいも、大根なども育てている。

 

 「稲は近所の八雲神社に奉納し、神主の方から玉串の捧げ方まで教わり、五穀豊穣を感謝します。子どもたちは落花生の名の通り、花が落ちて実をつける様子を見たり、学校の近くを流れる入間川でヤゴ取りをして羽化するまで育てたりします。収穫した作物は家に持ち帰り、食べることまでが教育です。これは食育にもつながり、給食の残食も減りました」と話すのは、古橋敏志校長だ。観察時には、全児童が所持するタブレットで写真を撮り、観察日記もつける。

農家の方の協力のもと、文理ファームでさつまいもなどの作物を育て収穫することで、食への感謝の気持ちを育む

医大での医療体験実習で、仕事として医療を理解

 高校の先端サイエンスクラス(理数科)の生徒によるロボット・プログラミング講座もある。児童にとって、将来像となる先輩たちによる指導はより高い教育効果をもたらす。

 

 また、医療に携わる家庭が少なくないため、早くから医学部進学を視野に入れている児童もいる。そうした児童にとって、埼玉医科大学総合医療センターの協力で行われる医療体験実習(希望者のみ)は貴重な経験だ。担当してくれる医師によって体験内容は異なるが、これまで手術室やドクターヘリの見学、鶏肉を使った解剖、心肺蘇生法の体験などが行われてきた。卒業生の医師が、見学に来た児童に声をかけてくれることもあり、子どもたちにとって勉強へのモチベーションにもつながる。

 

「算数や理科が、将来にどうつながっているのか理解してくれればと考えています」

 

 さらに保護者からの要望で、昨年度は宇宙飛行士の講演会も企画した。「JAXAの大西卓哉宇宙飛行士にオンラインでご講演いただき、子どもたちが宇宙にも興味を広げてもらえたらと期待しています」と古橋校長。保護者の声に即応するのは、それを必要とする一人ひとりの声に常に耳を傾けているからだ。

埼玉医科大学総合医療センターの協力のもとに行われる医療体験実習。本物にふれる、将来の進路選択にも大きく影響する貴重な体験

イマージョン教育による日常的な「英語のシャワー」

 イマージョン教育による「英語のシャワー」も、同校を語るうえで欠かせない。イマージョン教育とは、英仏二言語が公用語であるカナダ発祥の教育で、通常の教育で二言語を使用することでバイリンガルを育てる教育法だ。横浜国立大学に進学した卒業生は、同校のインタビューで「イマージョン教育の英語をどう捉えていたか」と聞かれ、「言語ではなく、言葉として捉えていた」と語った。つまり、ネイティブが母国語を習得する過程と同じように、日常的な言葉として身につけたというのである。

 

「日本語で話したら、必ず英語でアナウンスします。本校にはALT(外国人英語講師)が8人いますが、彼らにはふだんから短いチャットを子どもたちにしてもらうようにしています。登校時から英語で声掛けをし、入学してまだ3カ月弱の子どもたちもそれに英語で応えています」

 

 1年生から宿泊研修があるのも特徴的で、学年が上がるごとに日数が増え、宿泊先も遠方となる。1年生は学校内、2年生は山梨県・西湖、3年生は栃木県・日光、4年生は北海道・釧路〜知床、さらに5年生はイギリス短期留学、6年生はアメリカ研修まであるが、これらの研修費用は学費に含まれているため、保護者はその都度の出費がなく安心だ。

 

 1年生からの宿泊研修の積み重ねは、海外研修のための準備期間にもなっている。「宿泊先の鍵はいつも違うため、海外でどんな鍵のホテルに泊まってもとまどうことがありませんし、鍵を部屋に忘れても、自分でフロントと交渉することができます」と古橋校長は誇らしげだ。イギリスで訪れるイートン・カレッジでは、「あの先生はきれいな英語を話す」と流暢な英語を聞き分け、アメリカで訪問するハーバード大学でも英語で行われるキャンパスツアーでの話の内容をほぼ理解できているという。

 

「英検Ⓡも4・5年生で3級に合格し、なかには卒業までに2級を取る児童もいます。クリアするのがおもしろくなっていくみたいです」

授業以外にも休み時間、給食など、日常的に外国人英語教師と触れ合う機会を多数設けている

iPadを駆使して 卒業研究を発表する

 特筆すべきは小学生ながら「卒業研究」があることだ。これは中学・高校での探究学習にもつながる。5年生からそれぞれ関心のあるテーマを自由に選び、掘り下げ、6年生は自分でiPadで資料を作り、卒業式の1週間前に保護者も招いて2日間かけて1人5分間の発表を行う。上位5名は全校児童の前でも発表する。「共有することで学び合い、調べることの楽しさを知ります。何よりもプレゼンテーション能力が高まるだけでなく、まわりの人からのリスペクトも得ることで、自己肯定感にもつながります」とのこと。プレゼンテーションは、1年生からさまざまな機会に行うこと、たとえば、ランチの時間に行う誕生日会には保護者も招き、英語と日本語で発表する時間をもつことで、多くの経験を積み重ねていけるので全児童が苦労することなく行うことができる。最近のテーマには、「プラスチック問題について」「人工知能が人間を超えるとき」「宇宙での研究と生活への影響」など社会派のテーマも多いが、「源氏物語の魅力」「恐竜の化石はどこで多く発掘されるか」など文学や歴史を取り上げる児童もいたそうだ。

自ら考え、まとめ、最後はプレゼンテーションまで行う「卒業研究」。この経験を通じて、次世代を生き抜く力を身につける

物怖じせずに、積極的に英語を使って外国人英語講師や外国のお友だちと関わろうとする子どもたちの姿は、本当に生き生きしている

医歯薬系大学進学者の割合も高い学校

 この3月に、西武学園文理小学校第6期卒業生の「二十歳の集い」が開催され、多くの第6期卒業生が文理小学校に集まった。私立小学校の卒業生は地元の二十歳の集い(成人式)で孤独感を味わうことが多いとのことで、本校では本校卒業生独自の二十歳の集いを6年前から開催している。

 

 そんな卒業生が集まったみんなの前で「近況報告」をする中で、今回は特に医歯薬系大学に進学して勉学に励んでいる卒業生が多いことに驚いた。

 

「恐らく参加者の6~7人に1人は医歯薬系大学に進学していたのではないでしょうか」

 

 もともと西武学園は高校が理系に強いので、小学校でも理科に重きを置きながら、英語教育も行う2本柱で教育を行ってきた。その成果として、12年間一貫教育で学んだ2021年度卒業生の中から8名が医学部に合格、5年前からは東大にも現役で進学するとともに、ハンガリー国立大学医学部等の海外への進学実績がある。

 

「先輩の背中を見て続くのでしょう。高校1年から長期留学するケースもありますが、英語を話せるというアドバンテージも本校の強みです」

 

 多彩な「本物とのふれあい」の中で、現代人として医師として必要な科学への興味を抱き、情操面豊かな人格を形成し、国際感覚を身につける西武学園文理小学校の教育には、大きな期待が寄せられている。

※本記事は『日経ビジネス 特別版 SUMMER.2023〈メディカルストーリー 教育特集号〉(日経BP社)』に掲載されたものです。

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