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2023.01.12

医学部入試の特徴から勉強法、志望校選びまで…医学部突破をめざすための基礎知識(前編)

医学部受験の難易度や、医師になるために必要な素養、大学タイプ別の特徴など、医学部入試にまつわる素朴な疑問は多いだろう。医学部合格をめざすために持っておきたい基礎知識について、代々木ゼミナール教育総合研究所教育情報推進室の部長を務める川崎武司さんに聞いた。

代々木ゼミナール教育総合研究所教育情報推進室 川崎 武司部長

「人が好き」といえる人が医師に向いている

「医師」に向いているのは、どんな人でしょうか。医師の仕事には夜勤があり、時には患者の死と向き合うこともあります。体力だけでなく、精神力が必要です。第一線で活躍する医師にお話を聞くと、患者の命を救ったり、回復する様を間近に見たりといった喜びや、人の役に立つというやりがいがある一方で、辛い場面に遭遇することも多いといいます。一般的な仕事以上に、打たれ強さや精神力の強靱さが求められる仕事であることは認識しておくべきでしょう。また、患者やほかの医師、病院のスタッフなどとの対話も不可欠であるため、コミュニケーション能力も求められます。

 

このように、医師に求められる素養はさまざまあり、自分が「どんな医師になりたいのか」によっても異なります。しかし、あえてひとつ挙げるとすれば、それは、「人が好き」という気持ちを根底にもっていることでしょう。たとえ研究職に従事する場合であっても、研究の対象となるのは「人」です。医師という仕事は、「人」と向き合うことが不可欠ですから、「人に興味があること」は最低限必要な条件といえるはずです。

 

医学部受験に興味をもったら、まずは情報収集を行い、医学部入試の特性について、きちんと理解しておくことが必要です。何から手をつけていいかわからない場合は、塾や予備校などが開催する「医学部受験」をテーマにしたセミナーやイベントに参加してみるのもいいでしょう。

 

大学によっては、通常のオープンキャンパスなどとは別に、医学系に特化したイベントやプログラムを組んでいるところもあります。こうしたイベントは、医学部入試の概要を学ぶだけでなく、医師という仕事そのものについての見識を深めるためにも役立ちます。コロナ禍により、イレギュラーの開催となっている場合もありますが、オンラインで実施されているものも数多くあるため、一度調べてみることをおすすめします。

なぜ医師になりたいのか、医師として何がしたいのかを早めに掘り下げておこう

当たり前のことですが、「医学部受験に向いている人」が、イコール「医師に向いている人」ではないことは、注意すべき点でしょう。医学部入試は、トップレベルの難易度のため、学力が高い生徒が進路先の候補にあげることも考えられます。しかし、医学部を受験するということは、医師になることへ直結します。まずは、医師の仕事のポジティブな側面とネガティブな側面を理解したうえで、自分自身へ「本当に医師になりたいか?」と問いかけてみてください。そのうえで、受験勉強に向き合う必要があるのです。

 

万が一、ここに不一致が起きてしまっては、受験生本人はもちろん、保護者や学校、予備校など、受験に関わるすべての人が辛い思いをすることになります。医師になるまでの道のりも、なってからの道のりも、決して平坦なものではありません。「医師になりたい」という強い意志をもって受験に挑むことが、突破の糸口になります。

 

「なぜ医師になりたいのか」「医師として何がしたいのか」は、医師をめざすうえで、必ず答えを出しておきたいテーマです。特に、「なぜ医師になりたいのか」は、面接でもよく聞かれる質問です。受験前にしっかりと考えをまとめておくことが大切です。

 

高校入学前や高校1年次など、比較的時間に余裕のあるうちに、医師をめざす理由と合わせて、医師になってからの目標を、大きな視野で自分なりに考えておくとよいでしょう。これは、「どの診療科に行きたいか」といった具体的なものではなく、「医師として何を実現したいのか」「どんなことに貢献したいのか」という、概念的な目標で構いません。勉強が忙しくなってくると、こうした自己分析や自分自身の深掘りに時間を取ることは難しくなります。早い段階から長期的な目標を定めておくことが、入試を乗り切る原動力になります。

 

また、「医師として何がしたいのか」は、受験のモチベーションにつながるだけでなく、志望校選びにも直結します。偏差値や難易度のみを基準とするのではなく、「自分がやりたいことをできる大学」という観点から、志望校を検討していきましょう。

 

医学部の倍率は4~10倍程度。難易度もトップレベル

近年、医学部受験は他学部と比較して、過熱傾向が続いています。この2、3年の医学部の志願倍率は、国公立大学で4倍程度、私立大学では10倍台前半で推移しています。特に私立大学については、保護者が受験生だった時代に比べ、入試難易度・倍率ともに、大きくアップしており、難関私立大学の理工系学部と同程度、もしくはそれ以上の学力が求められているという点を押さえておきましょう。

 

医学部人気の理由のひとつは、受験生や保護者の「安定志向」でしょう。安定した生活が予想される医師という職業に直結する医学部志望者の割合が増えています。また、地方在住の生徒が、東京大学や京都大学をはじめとする難関大学ではなく、地元の国公立大学医学部をめざす傾向が強くなっていることも要因として考えられます。

 

医学部受験の特性としてあげられるのが、「理科」を重視する傾向があることです。国公立大学の2次試験や私立大学の一般選抜では、理科の物理、化学、生物、地学のうち、2科目を必須(ただし、地学を選択できる大学は少数)としている大学が大半です。特に私立大学では、理科2科目の各配点を、英語、数学と同等にするなど、理科のウェイトを高く設定しています。理科に関しては、ある程度時間を割いて対策を進めていく必要があるでしょう。また、すべての大学で面接試験が行われ、一部の大学では小論文が課される点も特徴です。学力のみならず、人間性や医師としての適性を評価されることも押さえておきましょう。

 

2021年度入試から、「大学入学共通テスト」(以下、共通テスト)が始まりました。出題傾向を、これまでの「大学入試センター試験」と比べると、問題の文章量が多くなるなど、読解力や情報の分析・取捨選択力、思考力が求められる問題が増えています。とはいえ、学習指導要領そのものについては、大学入試センター試験のときから変化はないのでむやみに変更点を意識するのではなく、まずは、学習の基礎固めを念頭に置いて、勉強していくことが大切です。

 

また、コロナ禍の影響を受け、2021年度入試の面接試験の方式を集団から個人に変更した大学もありました。これらの変更が一時的なものか、注意しておきましょう。

 

学校の授業を基盤に、プラスアルファの勉強で補強しよう

医学部入試を突破するために、どれくらい勉強すればいいのかは、みなさんも気になるところかもしれません。非常にハイレベルな入試といえども、学力のベースをつくるのは学校での授業です。医学部受験のために「特別な勉強」を行うと考えるのではなく、まずは学校の授業をきちんとこなし、基礎を固めることを意識しましょう。応用問題や入試問題に取り組むのは、その後です。

 

学校の授業の予習・復習の時間を確保したうえで、さらに受験に向けたプラスアルファの学習時間を設けるという考え方で、勉強スケジュールを組み立てましょう。例えば学校の定期考査は、自分の学力を把握し、学習進度を管理するためのよいペースメーカーになります。

 

なお、プラスアルファの学習のために塾・予備校などを利用する際は、学習進度に注意してください。学校と塾・予備校の学習内容にズレがあると、混乱を招く恐れもあります。学校の学習進度に合った講座を受講したり、映像講座を利用したりするなど、自分なりに調整することが大切です。常に基準にしてほしいのは、学校の授業や学習進度です。塾・予備校の利用法で困った場合は、学校の授業をベースに、その都度計画を立て直しましょう。

 

学習習慣は、日々の積み重ねで身につきます。できるだけ早い段階から、自分なりの勉強のリズムをつくっていくことが、長い受験を乗り切るための秘訣です。勉強の方法はさまざまあり、必ずしも、「まとまった時間」「机に向かってする」必要はありません。例えば、電車に乗っている時間や、寝る前の時間、学校の休み時間といったスキマ時間も、立派な勉強タイム。ぜひ有効活用してください。1日のスケジュールや置かれた環境を踏まえて、どの時間を勉強に充てられるのか、その時間に何を勉強すると効率がいいのかを考えていきましょう。

 

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