医師の仕事
2017.12.26
徹底調査!現役医師1000人に聞きました! Part4-中高時代に学んでおくべきこと
※本記事は『日経BPムック2017/日経メディカル「医学部進学ガイド」 』(2016年10月発売)に掲載されたものです。
受験では7割が「数学」を重視中高で学ぶべきは「英語」「生物」
医学部で学ぶためには受験という大きな関門がある。どのようにこの関門を突破したのだろうか。まず出身高校から見てみよう。
設置数の多さから見て、「公立高校」(58・8%)が多いのは当然<図23>だが、最近は随分変わってきた。20代に絞って見ると、「公立高校」は4割以下(38・2%)に減り、代わって「私立中高一貫校」で中学校から学んだという人が半数(50・9%)を占める<図24>。ここ数年、医師の人気が高まり、医学部の難化傾向が続いているが、早くから準備をしないと、合格は難しいということだろう。
次に、医学部受験のために特に力を入れて勉強した教科を聞いたところ、「数学」(71・1%)を挙げた人が最も多く、「英語」(57・6%)、「理科」(36・8%)と続く<図25>。この辺りは入試科目や配点から考えて当然だろう。なお、他の年代に比べて20代で比較的多いのが「面接対策」(12・7%)と「小論文」(9・1%)だ<図26>。この二つは、医師の資質・適性を問うものとして入試でも重視される傾向にある。面接については「高校や塾で模擬面接をやってもらった」「過去の質問項目を調べ、想定問答集を作った」、小論文に対しては「過去の出題テーマを調べ、関連する書籍を読んだ」という人も少なからずいる。
このように、医学部に合格するためには、それに備えた勉強が必要だ。一方で、医師として働くうえで、入試科目に関係なく、中学・高校時代にしっかり勉強しておくべき科目もある。<図27>のとおり、現役の医師たちがその科目として挙げるのは「英語」だ。他の科目を大きく引き離し、なかでも「話す」(61・3%)と「読み」(60・8%)は6割を超える。理由としては「学会発表、留学に必要」「外国人の患者さんとのコミュニケーション」「論文を読んだり書いたりするのに必要」といった声が目立つ。「医学においては英語が公用語」とはっきり言う人もいる。
「英語」に次いで多く挙がったのは「生物」の27・2%。受験に際しては「化学」や「物理」を選ぶ人が多く、「生物」は少数派だが、「医学の最も基礎になる考え方だと思うから」「基礎を学んでおくと、大学に入ってからの勉強がしやすい」といった声があった。
厳しい現実はあるが「乗り越えて成長できる」
最後にこれから医師を目指す中高生に向けて、メッセージを寄せてもらった。
必要な資質についてはコミュニケーション能力、謙虚さ、勉強好き、体力など多岐にわたるが、人間性の重要さは多くの医師が指摘するところだ。31歳の精神科の男性医師は「人間性を見失った医療はロボットに取って代わられても何ら不思議はない。医師を目指すなら人間性を磨いてほしい」と言う。
「あなたはなぜ医師になりたいのか。世間のイメージに憧れているだけ、進路指導の先生に勧められてその気になっているだけではないか」と言う31歳の産科・婦人科の女性医師は厳しい現実も列挙し、覚悟を促す。「医師はどんなに一生懸命にやっても、患者さんや家族から非難されることがある。患者さんとの悲しい別れもある。他の医師や医療従事者とぶつかり合うこともある。休日に病院から呼び出され、家族に嫌味を言われることもある。それでも医師になりたいのか。よく考えてほしい」
厳しい現実を乗り越えた先にやりがいがあると言う医師もいる。「高尚な目標を掲げ過ぎると、現実とのギャップに苛まれ、理不尽なことも多く体験するだろう。プレッシャーは多いが、それを乗り越えることで自分自身を人間的に成長させてくれる職業だと思う。僕は生まれ変わっても同じ道を選ぶだろう」(31歳・男性、救急科)。いずれも現場の医師でなければ語れない熱いメッセージだ。
受験生へのメッセージ
●医師は一生勉強です。勉強が好きな人でなければ務まりません。それでいいという人だけ医者になってください(38歳・男性、総合診療科)
●勉強も大事だが、部活動や友人関係など人間性を十分に学んでから医師になってほしい(31歳・男性、泌尿器科)
●人のために人生を捧げる覚悟がないならやめてほしい(36歳・男性、一般内科)
●どんなに優秀な医者でも仲間がいなければ仕事は成し得ません。身の回りの友だちを大切にしてください。家族を大切にしてください(33歳・女性、代謝・内分泌内科)
●医師が高給取りという時代は望めない。神経も使うし、現場では患者との関係など人と人との関係も重要。訴訟も増えている。真摯に取り組める人材でないときつい(35歳・男性、病理科)
●人間相手の商売なので、人間というものが好きな人にこそ就いてほしい。われわれが治すのは病気ではなく、人そのものです(28歳・男性、呼吸器内科)
●収入や社会的地位を求めるなら勧めません。医師という特殊な人種に囲まれて非常識な人間にならないように(39歳・女性、消化器外科)
●人間性を見失った医療はロボットに取って代わられても何ら不思議ではない。医師を目指すのであれば人間性を磨いてほしい(31歳・男性、精神科)
●漠然とではなく、具体的なミッションを持ってください。そして10年後にはこうしたい、20年後にはこうなっていたい、という将来のビジョンを思い描いて下さい(38歳・女性、一般外科)
●医者になるのが目的ならやめておくように(33歳・男性、泌尿器科)
●かっこいい側面だけではなく、患者さんが夢に出るくらい悩むことも多い仕事であることを踏まえて選択してください(33歳・女性、循環器内科)
●たくさん迷って、たくさん悩んで、いい医者になってほしい(33歳・女性、麻酔科)
●なぜ医師になろうと思ったのかよりも、なぜ医師として働くかという理由を見つけてほしい(36歳・男性、一般外科)
●あなたはなぜ医師になりたいのか。世間のイメージに憧れているだけ、進路指導の先生に勧められてその気になっているだけではないか。医師はどんなに一生懸命にやっても、患者さんや家族から非難されることがある。患者さんとの悲しい別れもある。他の医師や医療従事者とぶつかり合うこともある。休日に病院から呼び出され家族に嫌味を言われることもある。それでも医師になりたいのか。よく考えてほしい(31歳・女性、産科婦人科)
●受験脳は臨床では役に立たない。臨床をやるには人間性のトレーニングが必要(45歳・男性、皮膚科)
●コメディカルに偉そうにするようなクズ医者にならないでほしい。立派な医者ほど謙虚である(40歳・男性、緩和ケア科)
●早くから医師を目指すな。広く構えろ(53歳・男性、一般外科)
●体力を付けておく。きちんとあいさつをする(30歳・男性、リウマチ膠原病内科)
●高尚な目標を掲げ過ぎると、現実とのギャップに苛まれ、理不尽なことも多く体験するだろう。プレッシャーは多いが、それを乗り越えることで自分自身を人間的に成長させてくれる職業だと思う。僕は生まれ変わっても同じ道を選ぶだろう(31歳・男性、救急科)
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