医師の仕事
2017.12.26
徹底調査!現役医師1000人に聞きました! Part3-医学部時代の生活
※本記事は『日経BPムック2017/日経メディカル「医学部進学ガイド」 』(2016年10月発売)に掲載されたものです。
大変だったのは「解剖学」実習と試験で超多忙
ここからは、医師になるまでの道のりを見てみよう。医師の第一歩は医学部への進学。他学部より圧倒的に学習量が多く、忙しいことは知られている。では、6年間のなかでもとりわけ大変なのはいつだろうか。6年間を振り返って大変だった年次を挙げてもらったところ、最も多いのは「6年」の46・4%で、ほかを大きく引き離している<図15>。
ただ、この10年間で医学部のカリキュラムも随分改編されたためだろう。20代の医師で見ると、「6年」(27・3%)より「2年」(40・0%)を挙げる人が多い<図16>。
最優秀の人材が集まる医学部だが、学ぶことが難しく、また量も多いためか、留年も少なくない。その割合はちょうど1割。少数とはいえ「2度以上」と言う人も2・5%いる。留年の時期として多いのは「3年進級時」の36・6%。「4年進級時」(23・8%)がこれに続く<図18>。
では、それぞれの学年で何が大変だったのか。具体的に聞いたところ、まず1年次は「医学部での生活に慣れること」「一般教養の授業に幻滅した」という回答が多かった。新しい生活に慣れ、期待していた専門の勉強が始まる2年、3年になると、今度は「途端に難しくなった」「試験も大変だった」という人が多くなる。
一方、5年次は「ポリクリ(病棟実習)でいろいろな診療科をローテーションするのがストレスだった」など、病院実習の苦労を挙げる人が目立つ。また、実習そのものの大変さに加え、「看護師さんや教授に気を遣うのが大変だった」など、対人関係の苦労を挙げる人も少なくない。
全体を通して見ると、卒業試験をはじめ試験の大変さを挙げる人が多く、特に6年次は国家試験のプレッシャーが大きいようだ。「病院実習と卒業試験、国家試験の勉強が重なり、きつかった」といった声が目立つ。なかには、国家試験のプレッシャーから不眠症になり、「睡眠剤を使用して国家試験に臨んだ」という人もいる。
具体的に苦労した授業、実習を挙げてもらうと、圧倒的に多かったのは「解剖学」だ。自由記述に回答した930人中235人がこれを挙げる。その理由は大きく二つ。「覚える量が膨大」と「ホルマリンの臭いに耐えられない」だ。
生理学、生化学などの基礎の科目を挙げる人も少なくない。「興味が湧かないうえに、学習量が多く苦労した」というのが大方の声だ。「今でこそ基礎はすべてが必要と感じるが、学生時代にはその必要性に気が付きにくい」と振り返る人もいる。
このように勉強に追いまくられる印象のある医学部だが、多くの人が「医は体力」「医はチームワーク」と、どんなに忙しくとも、クラブ・サークル活動、特に運動系のクラブ・サークルに入ることを勧める。実際、クラブ・サークル活動の経験を尋ねると、男女ともに8割前後が何らかのクラブ・サークルでの活動経験があり、3人に2人は運動系のクラブ・サークルに入っていた<図19>。
半数が学費を「心配した」ものの奨学金・ローン利用率は低い
私立大の医学部は他学部に比べて学費が群を抜いて高い。進学する際にお金についての心配はなかったのか。また、学生時代にお金で苦労することはなかったのか。
私立大学出身者に絞って集計したところ、お金の心配は「全くなかった」という人は37・3%。26・3%が「大いにあった」、35・7%が「少しあった」と回答した<図20>。
もっとも、「奨学金や銀行ローンを利用したか」という問いに対して「利用した」という人は18・8%と2割にも満たない。多くの人が自己資金で対応していることがわかる<図21>。
また、何らかの形で学費を借りた人に、「借りた奨学金やローンの返済は大変だったか」と尋ねたところ、「大変だった」と回答したのは「とても」(12・5%)と「かなり」(20・8%)を合わせても33・3%<図22>。52・1%は「それほど大変ではなかった」、14・6%は「ほとんど負担に感じなかった」と回答している。医学部進学に当たっては、卒業するまでの費用についてもしっかりと準備をしているということだろう。