医学部に強い中高
2017.01.18
宝仙学園中学・高等学校共学部理数インター
生徒一人ひとりに合わせた学習支援 開校から4年連続で医学部合格を輩出
宝仙学園理数インターは、「数理的思考力に基づくコミュニケーション能力」の育成をテーマに2007年に開校。今年で10周年を迎えたばかりのまだ新しい学校だが、1期生から4年連続で医学部合格者を輩出するなど、その高い進学実績には注目すべきものがある。いったいどのようにして生徒の可能性を伸ばしているのか、校長の富士晴英先生に教育の特徴などを伺うとともに、医学部に進学した同校の卒業生にコメントをいただいた。
※本記事は『日経BPムック2017/日経メディカル「医学部進学ガイド」 』(2016年10月発売)に掲載されたものです。
重厚長大なカリキュラムで 国公立大進学を目指す
中学受験を控えた子どもを持つ保護者の間で、宝仙学園理数インターへの関心が高まっている。2007年の開学以来、国公立大や医学部に多数の合格者を出すなど、その進学実績に定評があるからだ。
「本校は、中学受験では『入りやすい』イメージがある学校ですが、生徒たちの志は入学当初から高く、国公立大学や医学部を目指す生徒が少なくありません。そして、その夢をあきらめることなく、学力を伸ばして志望校にチャレンジし、実績を出しています」と語るのは富士晴英校長。「特に医学部については、最初に合格した1期生が医学部進学者の同窓会を作って、後輩のサポートをしています。本校に『医学部を目指す』という文化が根付きつつあることを感じますね」
医学部の合格先は、国公立大では熊本大、信州大をはじめ、防衛医大など。私立大では杏林大に特待生として学費免除になった卒業生がいるほか、日本大、聖マリアンナ大、帝京大、東京女子医大などにも合格者が出ている。開校後わずか10年の間に、なぜ、これだけの実績を築き上げることができたのか。医学部対策として、何か特別なカリキュラムでも導入しているのだろうか──。わが子を医学部へ入れたいと願う保護者ならずとも、大いに気になるところだ。
「実は、医学部に特化したカリキュラムはありません。国公立大に照準を合わせた〝重厚長大〟なカリキュラムを用意し、国公立大合格を目標に、生徒全員で日々の学習に取り組んできた結果、生まれた実績なのです」と富士校長。中学では、1コマ50分×7時間授業を展開し、主要5教科の授業時間数は週28時間と、首都圏の私立中学のなかでも多くの授業数を確保。中学も高校も1クラス35名の少人数クラスで、一人ひとりを丁寧に見守っている。
その一方、部活や学校行事も盛んだ。医学部合格者の多くが、生徒会や運動系の部活で活躍した経験を持つ。
目標のイメージから逆算して日々のToDoに落とし込む。先輩の記録は医学部をめざす生徒のバイブルだ
宝仙学園中学・高等学校共学部理数インター
校長富士 晴英先生
中学では学習習慣の確立 高校では自立を促す学習支援
医学部という難関を突破するには、生徒自らがやる気を出し、厳しい受験勉強に取り組むことが必要となってくる。「そこで、中学のうちは学校側が手をかけて学習習慣の定着を目指しますが、高校からは自立を促すよう心掛けています。自分でモチベーションを上げて、自分で計画し、実行する生徒が最も伸びると考えています」と富士校長は話す。
たとえば、中学1年では週に1時間ずつ英語・数学の「Follow」の時間を設けて、生徒一人ひとりの理解度に応じた個別指導を実施。週ごとに「分からないところを放置せず、分かる状態にする」という流れを作り、しっかりとした学習の土台を構築する。
「スタディサポート」を使って、家庭学習の内容や時間を担任と二人三脚で管理する
また、「スタディサポート」と称して、家庭学習の記録を担任とやり取りし、学習習慣そのものを定着させるようにしている。
高校生には、進路支援のための手帳、通称「手帳くん」を用意。先輩の合格体験記や教員による〝やることリスト〟が掲載されているほか、自分で大学入試のゴールイメージや、その実現に必要な計画を書き込めるようになっている。
「また、折に触れ、先輩たちに合格体験を話してもらうなどして、モチベーションを高めるきっかけを作っています」
生徒が自主的に学びに打ち込む姿は学校の随所で見られ、生徒同士で教え合い、一人で集中したいときは夜8時まで開放されている自習室で受験勉強に没頭する。「予備校なしで医学部に合格した生徒もいます」と富士校長は話す。
受験に際しても、放課後の一斉指導などはなく、生徒一人ひとりの志望校や学力に合わせて、個別に支援を行う。「志望校合格のための学習計画のアドバイスや、過去問の添削などを行っています」
もちろん、その指導の背後では、緻密なデータ分析もなされている。「模試の後には、『カンファレンス』と呼ばれる個別成績会議が行われ、一人ひとりの成績を分析し、何が必要なのか課題を割り出し、全教科の教員で共有するようにしています」。その結果は生徒に、コーチングという手法でフィードバックされ、生徒自身の手による学習計画に反映される。
「生徒を教員が『指導』するのではなく『支援』するという姿勢で信頼関係を築いています。目指す学校像は『知的で開放的な広場』です」と富士校長は笑顔を見せる。
一人ひとりにカスタマイズされた学習支援、それが医学部合格の土台となっているのだ。
医学部に進学した卒業生に聞く
医学部同窓会を立ち上げ後輩を支援
1期生・杏林大学医学部
相澤 陽太さん
私は大学で成績優秀学生として2度表彰を受け、今年度は日本病理学会で学部学生ポスター最優秀賞を受賞。国試対策委員も務めるなど、充実した学生生活を送っています。こうした力が養われた場が理数インターです。在学中は、毎朝7時半から先生と1対1で英作文の指導を受け、「医学部」という夢を懸命に追いました。努力を積み重ねて夢をかなえたことで、努力が習慣となり、大学でも花開くことができたのです。この経験を後輩に伝え、医学部合格を支援するため、理数インター医学部同窓会を立ち上げました。医学部入学後は、共に戦う仲間として交流できる場となっています。理数インター、そして医学部で皆さんと会えるのを楽しみにしています。来たれ、医学部の世界へ!
医学部への近道は普通の勉強を毎日こなすこと
1期生・防衛医科大学校医学科
井出 明日馬さん
医学部合格は難しいと世間でいわれますが、医学部のための特別な方法や精神論は必要ないと思います。予習復習をして、何度も問題演習をこなし、模試では自分の苦手なところを確認し、その分野を重点的に勉強する……、このようなことを毎日淡々とこなすことが合格への近道だと考えます。もし今、中学生または高1生ならすぐにでもできる範囲で始めるべきです。高2~3生なら、今までの模試を見返して自分の弱点分野を認識し、それを優先して克服することをお薦めします。私の場合、医学部に必須の数学や理科が苦手で、受験時代は重点的に勉強しました。
医学部をめざす後輩をサポートしていきたい
2期生・日本大学医学部
深井 美佑さん
私は、中高6年間硬式テニス部に所属していました。大学でもその経験を生かして軟式テニス部で活動しています。またIFMSA(国際医学生連盟)という医療系学生の団体にも所属し、そこで開かれるイベントに参加しています。宝仙理数インターを卒業した医学生の集まりも、他の大学、学年と関わることのできる貴重な経験となっています。これからは、理数インターの在学生や卒業生をサポートしていきたいと思います。まだ興味のある分野がはっきりしていませんが、自分が女性であることを活かせるような医師を目指しています。
放課後はクラスメイトとともに予習復習
3期生・東京女子医科大学医学部
神丸 香純さん
医師を志したのは高1年の夏。しかし、当時は部活と勉強を両立することで手いっぱいで、医学部合格には到底及ばない学力でした。そこで、勉強する習慣を身につけるため、放課後、教室でクラスメイトと予習・復習をすることに。互いに質問し合いながら納得いくまで考え、日々切磋琢磨しました。先生方にも、2週間に1回の面談や職員室での質問対応など、多くのサポートをしていただきました。良い環境と仲間に恵まれ、医学部に合格──、この高校3年間は大きな財産です。これからは、医師となり、人に何かを与えられる人間になれるよう、日々精進していきたいと思います。
三日坊主の私を伸ばしてくれた学校と友人
4期生・帝京大学医学部
寺川 遼さん
高校時代は三日坊主で、どのような勉強法が自分に合っているのか、模索する日々でした。こんな私が現役で医学部に合格できたのも、宝仙学園に通っていたからだと感じています。先生方は生徒一人ひとりを大事にしてくれます。担任の先生は、良い意味でしつこく、私の立てた学習計画や進行状況を気にかけ、相談に乗ってくださいました。また、少人数制なだけに生徒同士のつながりも深く、友人たちと一緒に勉強をしたいという気持ちから、受験直前はずっと学校の自習室で勉強していました。最後に私を伸ばしてくれたのは友人であり、宝仙学園の持つ良き雰囲気だったと感じています。
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